傭兵と少年

 ギンとエイムは村の中で出会った少年アルとその母であるミオと共に村長の家に向かっており、なにやら会話をしている。


「なあにいちゃん、結構良さそうな剣を持っているけどさ、本当にただの傭兵か?」

「当たり前だ、俺はミッツ教団より依頼を受けてこの仕事に来ただけの傭兵だ」

「ふーん、まっ、いいけどさ」


 アルがギンの持つ剣に興味を持ってただの傭兵かどうかに疑問を持ったが、ギンに否定されたことであっさりと引き下がり再び歩き出す。


 そうしている内に村長の家へと辿りつく。


「ごめん下さい」


 エイムがそう言って村長の家のドアをノックすると村長がドアを開ける。


「おお、あなた方はミッツ教団の方々と一緒にいた……ん?アル、それにミオさんもか?」

「お邪魔します、村長。すみませんどうしてもこの子が探知魔法を見たいと言って、この方々に魔物の毛を渡したんです」

「何じゃと⁉アル、まさかお前さんが持っていたとは」


 村長の言葉を聞いてアルが自分の考えを話す。


「父ちゃんが手に握っていたんだ。きっと父ちゃんは最後まで魔物に抵抗してこの村を……俺達を守ろうとしてくれたんだ。これは父ちゃんの悔しさを忘れない為に俺が持っていたんだ」

「アル……あんたって子は……」


 アルの言葉を聞いてギンがアルに言葉をかける。


「アル、お前がお父さんの無念さを感じていること、そして自らの力の無さを嘆いているのが俺にも伝わってきた」

「何だよ?いきなり」

「きっと彼女が魔法で魔物を操っていたかもしてない奴を見つけてくれる。そして場所が分かれば俺達がそいつを倒し、この村の脅威を取り払う」

「にいちゃん……」


 次の瞬間、ギンはアルに最も伝えたかったことを話す。


「だからお前の役割はお母さんや、村の小さい子供たちを守ってやれ」

「にいちゃん……はん、そんなの当たり前じゃん。俺は村で1番強かった父ちゃんの息子だぜ。それぐらいして当たり前だろ。さっきも言ったけど子供扱いしてんじゃねえよ」

「ふっ、それなら俺達も安心して魔物退治ができるな」


 アルの強い言葉を聞いたギンはエイムに呼びかける。


「エイム、俺はルルー達を呼んでくる。村長の家で待っていてくれ」

「はい、お願いします」


 そう言ってギンはルルー達を呼びに向かい、アルは村長に声をかけた。


「なあ、村長そろそろ中に入れてくれよ」

「分かっとるわい、さ、入れ」


 村長とアルが家の中に入っていくとミオがエイムに声をかける。


「あの魔術師さん、ちょっといいですか?」

「私にですか?」

「はい、あの子……アルは主人、あの子の父親が命を落としてからずっと悔しい思いをしてたんです。でもあの傭兵さんの言葉を聞いてあの子に活力のようなものが戻って来たような気がします。一体あの方は?」

「ギンさ……あの人はきっとアル君の気持ちが分かるんだと思います」


 エイムの返答に驚きを隠せないミオは尋ね返す。


「あの子の気持ちが、ですか?」

「はい、アル君の悔しい思いを少しでも小さくするにはどうすればいいかを考えてああ言ったんだと思います」

「そうですか、何にせよあの子まで沈んだままだったらもう私はどうしていいか分からなかったので助かりました」


 ミオの言葉を聞き、エイムはギンがいたからこそ救われる人がいると思った。そしてそれは自分もそうだったと。

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