奇妙な魔物

 ミッツ教団の教会内で突如ルルーが放った国内で起きた問題という言葉にジエイは驚きを隠せないでいた。


「プレツ国内での問題ですか?一体どのような?」

「順を追って話すわ、私達がプレツに帰国した直後にブロッス帝国のバンス将軍の部隊が侵攻してきたの」

「バンス将軍⁉まさかそれで大きな被害が」

「いいえ、何とか戦いには勝利して被害は最小限に抑えたわ」


 ルルーが帝国軍の侵攻を抑えたことを話すと司祭がその間に起きていた出来事について話す。


「私が詳しい話をしましょう。ムルカやルルー、ギン殿達も奮闘してくれたおかげで帝国軍の撃退に成功したのですが、その間にその戦いと無関係な場所で被害がでていたのです」

「それは一体?」

「スップの街から少し北にいった所に村があってそこが魔物によって襲われたのです」

「魔物⁉」


 その話にムルカも加わり補足説明をする。


「うむ、その村にプレツ軍が駆け付け魔物の群れを追い払うことに成功したが、村にはかなりの被害がでたそうだ」

「そうなのですか、私が皆さんと離れている間にそんなことが」

「討伐軍に加わっていた兵が魔物の群れにしては軍隊並みに統制がとれていたという話を我らにしてくれた」

「魔物が統制された動きを?妙ですな」


 本来魔物とは群れを成しても本能で動き、おおよそ統制のとれた動きは難しいものだが、今回の魔物は軍隊並みの統制のとれた動きをしていたというのだからジエイの口から妙だという言葉がでたのだ。


「そこでミッツ教団としては、村の復興支援をすると共に、ムルカ、ルルー、ギン殿達に魔物の群れの調査をお願いしようと思ったのです」

「それに私も加わってほしいと?」

「お願いできますかな?」

「私は構いませんが、皆さんはどう考えていますか?」


 ジエイの疑問にムルカとルルーが答える。


「無論、ミッツ教団の一員として見過ごすわけにはいかん」

「ムルカ様と私がミッツ教団を代表して村に赴いて話を聞くのが良いと司祭様がご判断なされたし、私もそれが良いと思ったわ」


 続けてギン達が自分達の考えを話す。


「後顧の憂いは絶たないと俺達も安心して帝国と戦えないからな」

「魔物におびえる人がいるなら私達が助けないといけません」

「俺も魔物はぶっとばさねえとだめだと思っている」

「それが依頼ってんなら、あたしらはこなすだけだよ」


 一同の意見を聞き、ジエイが言葉を発する。


「やはり皆さんはそう考えますか、我らは一蓮托生というわけですな」


 共に死線をくぐり抜けたものだからこそ分かることがある。それを一同は改めて理解したのであった。

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