疑惑の国

 ギン達とスール国内で別れたジエイはスールの王宮へと戻り、スール国王にグラッスで起きた出来事を報告していた。


 ジエイからの報告を玉座の間で大臣と共に受けていた国王は報告に対する感想を述べる。


「ふむ、噂では聞いていたがグラッス国内は思った以上に複雑のようだな」

「はっ!特使殿もこのまま同盟を結んでよいものかどうか迷っておりましたが、国の命を受けている以上止むなしと判断されたようにございます」

「此度の同盟は味方を増やす以上にできうる限り敵対勢力を減らしておくことが主目的と見られるな」

「プレツは唯一と言っていいほど帝国に対抗しうる国ですからな、周辺国家を敵に回すことは避けたいのでしょう」


 国王並びにジエイはプレツはできうる限り自国の戦力を対帝国に回したいという考えがあると踏んでおり、それがコッポ、スール、グラッスと手を結んでおく理由だと考えているのだ。


「無論プレツと盟を結んでおくのは我らにも利がある。いざ帝国と本格的な開戦になった時にプレツの後ろ盾があるのは大きいからな」

「左様にございますな」

「だがお前の報告を聞いて解せん部分もある、まずグラッスのトッポックス領主は何故反帝国同盟に反対していたのかという点だな」

「トッポックス領主に雇われていた傭兵によりますとプレツ主導で帝国と戦わせられることを危惧していたようですが……」


 ジエイの言わんとしたことが分かったのか国王はすぐさま言葉を返す。


「それはトッポックス領主が傭兵にそう言っただけで本意ではない、そう申したいのだな?」

「はっ!傭兵を言いくるめる為にそう言って真意は別にあったかも知れませぬ」

「そうするとトッポックス領主が既に帝国側に通じていたか、いやトッポックス領が攻められている以上それはないか、もっと良い土地を約束されていたら話は別であったかもしれんが」

「トッポックス領主が拘束されたのも同盟予定の特使相手に不当な通行料をせしめしようとしただけではなく事前に帝国と通じていた可能性を疑われたからとやも知れませぬ、もっとも今となっては分かりませんが」


 ジエイの言葉を聞いた後に国王がもう1つの疑問について述べる。


「もう1つは側近が国王の意見を他国の使者の前で意見を覆させたことだ、そのようなことをしてしまえば自国の王は頼りにならないとわざわざ他国に喧伝するようなものだ」

「それはル……特使殿も戸惑っていたようでございます」

「同盟の反対者を粛清しておきながら同盟相手に国王の頼りなさを喧伝するとは理解しがたいな」

「護衛の剣士殿の推測ではその傭兵達を国内に残しておくことが側近達にとって不都合なのではないかということですが……」


 ジエイの言葉を聞き、国王はある決断を下す。


「直接同盟の申し入れをしたプレツはやりづらそうであるから我らがグラッスに間者を送り探りを入れる必要があるな」

「やはりそれは私が……」

「いや、お前はこのままプレツに向かい彼らと合流せよ。グラッスには他の者を送る」

「承知いたしました」


 そう言ってジエイはプレツへと向かう準備をする。スールがグラッスへと間者を送る。このことでどのような事実が明らかになるのか?

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