傭兵の共闘

バンス将軍が自ら先陣を切ってプレツ軍が守る砦に攻撃をしかけている頃、ギンもスップの街を飛び出し、砦に走りながら向かっていた。


 そんな中ギンは様々な思いを巡らせていた。ブライアン達やムルカは砦に辿り着いているのか、それ以前に砦は持ちこたえているのかとこれらの不安が頭の中から消えないが。それでもとにかく走るしかないと考え、さらに早く着く方法を考える。


「こうなったら速度強化の魔法を使うか。魔力が持つかどうか分からないが砦が奪われたら負けだ」


 そう言ってギンは速度強化の魔法を使用しようとするが後方より声がした。


「おーーい、ギン!何やってんだい?」


 声の主の正体はヨナであり、ギンはヨナに対し返答をする。


「ヨナか、今俺は砦に向かっているんだ、ん?お前馬車に乗っているのか」


 ギンはヨナの声に返事をしながら後方を向くとヨナが馬車に乗って移動をしているのが目に入る。もちろん、馬車を引いているのはヨナ達の馬であるゲンジだ。


「だって、こっちの方が早いじゃん。それにあたしらは人数が多いから」

「確かにそうだな」

「あんたも乗っていくかい?」

「じゃあお言葉に甘えさせてもらう」


 そう言ってギンはヨナ達の馬車に乗り込んでいく。馬車の中にはヨナの手下の傭兵が多数乗っていた。


「じゃあギンも合流したことだし、飛ばすよ!」

「ヘイ!姉御」


 手下が返事をするとヨナは再び馬車を砦の方向に走らせた。


 馬車が進行していくと、帝国軍が砦を包囲しているのがギン達の目に入り、ギンがヨナに対し馬車を止めるように声をかける。


「ヨナ、馬車を止めてくれ」

「あいよ」


 ギンの言うようにヨナは馬車を止め、ギンは帝国軍の動きを確認してヨナに声をかける。


「帝国軍はまだ俺達の接近に気付いていないようだ」

「でもあいつら援軍をかなり警戒しているよ」

「ならば、その警戒を緩めさせればいい」

「どうやって?」


 ヨナの疑問にギンが返答し、作戦を伝える。


「俺が1人で奴らの前に出て俺の存在を奴らに引き付けさせ、その隙にお前達が奇襲をかけてくれ」

「そんな作戦無謀じゃないか!やめておきなよ、あんたも含めみんなで正面から行こうよ」

「ジエイから聞いたがお前達はゲリラ戦が得意ようだな。エイムやジエイみたいに強力な遠距離攻撃ができる者がいない今、お前達が敵をかき乱すのが勝利の鍵だ」

「勝利の鍵……あたし達がか?」


 思わぬギンの言葉にヨナは疑問を投げかけ、ギンは力強い言葉で返答する。


「お前達以外誰がいるんだ」

「はっきり言うね、今までの依頼人はあたしらの事を使い捨て程度にしか考えていなかったのに……」

「確かに傭兵をそういう風に扱う者は多い、俺も傭兵を仕事にしているからそれは分かる。だが俺やお前達を信じ仲間と思ってくれる者もいる。それともお前はまだ俺達を信じられないか?」

「いいや、勝利の鍵なんて言われてちょっと戸惑っただけだよ。もうあたし達はあんたらに身を任せることにしたからね、そこまで言ってくれるならあんたの作戦に乗るよ」


 傭兵同士の共闘が今始まる。

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