水面下の舌戦

 ブロッス帝国軍のバンス将軍と魔導騎士団の連携により窮地に陥っていたブライアンだったが、戦場にムルカが現れ窮地を脱出することができ、そのムルカからブライアンに声がかけられる。


「大丈夫か?ブライアン殿、貴殿1人で彼らに立ち向かうなど無謀もいいとこだぞ」

「旦那も前に1人であいつらに向かっていったじゃねえか、俺達が来なけりゃどうなっていたか」

「私は私自身を囮にすることで砦への攻撃を緩める目的があったのだ」

「じゃあ、今回の俺と一緒だな」


 ブライアンとムルカが会話をしていると、バンスが途中で口を挟む。


「ずいぶん余裕だな戦場で談笑することができるとは」


 バンスの声が聞こえたムルカはバンスの方を向き言葉を返す。


「我らが油断していると思っているなら何故攻撃をしなかった?」

「ふっ、よく言うわ。貴様らが臨戦態勢を解いてはいなかったことを見抜けぬわしではないぞ。わしが攻撃をしたらカウンターでしとめるつもりであったのだろう。全く抜かりないわ」


 バンスはブライアンとムルカの臨戦態勢を見抜き直接の攻撃をひかえたことを話すと、更に戦場に別の者が現れる。


「ムルカ様、ブライアン」


 現れたのはルルーであり、ブライアンがルルーに声をかける。


「ルルー、どうしてお前まで砦から出てくるんだ?」

「敵に魔法を使う者がいるなら私が魔力障壁を使った方が戦いが楽になるでしょう」


 ルルーがムルカの名を呼んだことで、思わずバンスはムルカに尋ねる。


「今、ムルカと呼ばれていたな?まさか貴様『騎士ムルカ』と呼ばれていたのではないか?」

「かつての私のことを知っているのか?」

「わしのように戦場暮らしが長い者でお主のことを知らぬ者などおらぬわ」


 ムルカが黙って聞いていると更にバンスはムルカに聞く。


「聞かせよ、何故お主は騎士団を抜け、ミッツ教団の神官戦士をやっているのかを?」

「それを聞いてどうするつもりだ?」

「ただの興味だ、これからお主の命を奪えば2度と知ることがないからな。まっ、話さぬというなら命を奪うだけだ」


 バンスの少し挑発じみた言葉であったが、それでもムルカはあえて挑発に乗り話すこととした。


「良かろう、そこまで貴殿が知りたいというなら話そう」


 ムルカの心情を心配し思わずルルーが話を止めるよう懇願する。


「お止めくださいムルカ様、敵に個人的な話などする必要はありません」

「ルルーよ、これは既に私とバンス将軍の戦いなのだ。私がここでしり込みしてしまえばバンス将軍に精神的な優位を与えてしまう。だから私はあえて挑発に乗ることにしたのだ」

「ムルカ様……」


 この水面下での舌戦の行方は?

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