騎士としての意地

スップの街中で魔導騎士団のプラナが防衛兵団の隊長である二フラを追い詰めている中、突如ギンが現れ状況は一変する。


「貴様はあの時の⁉やはりエンビデス宰相のおっしゃった通りだったか」

「エンビデス?まさかお前達は俺達が戻っていることを知ってあえて侵攻してきたのか?」

「そのようなことを貴様に説明する必要はない!」


 ギンとプラナが互いに言葉をぶつけている中、またしても少女の泣き声が聞こえてくる。


「えーーん!えーーーん!」


 泣き止まない少女にエイムが駆け寄り慰めの言葉をかける。


「もう大丈夫ですよ。あの人達は私達が止めますから早くここから逃げましょう」

「で、でもお母さんが……」

「お母さんとはぐれたんですか?後で私も探すから逃げましょう」

「でも、でも……」


 エイムと少女がやり取りをしていると母親らしき女性が現れ少女に駆け寄る。


「ああ、良かった!大丈夫⁉ケガはない⁉」

「うん、このお姉ちゃんがお話してくれたから」


 母親はエイムの方を向き礼の言葉を述べる。


「あの、ありがとうございました!この子を守っていただいて」

「いえ、私は早く逃げるように言っただけですから」

「でもあなたが来てくれなければこの子はどうなっていたか分かりません。本当にありがとうございました」


 エイムは母の礼の言葉を聞いてから少女に声をかける。


「良かったですね。お母さんと会えて、後は私達があの人達を追い払いますから。お母さんと一緒に逃げましょう」

「うん、ありがとうお姉ちゃん。がんばってね」


 少女がそう言うと母親と共にこの場を後にする。


 少女と母親が離れていくのを確認したギンがプラナに言葉を放つ。


「まさかお前達、あんな小さな子供まで手にかけようとしたんじゃないだろうな?」

「愚問だな、我ら誇り高き魔導騎士団が無抵抗な幼子の命を奪うなど騎士としての恥だ」

「お前が手にかけるかどうかの問題ではない。お前達は無慈悲な戦争を仕掛け、恐怖をあおったんだ。それが誇り高き騎士のすることなのか」

「な、なにを……」


 言葉が出ないプラナに対し、更にギンが言葉で畳みかける。


「どうやら言葉がないようだな。結局お前達は無自覚で自らの誇りを汚していたようだな!」

「おのれ言わせておけば!貴様は許しはせん!」


 プラナが剣をギンに向けるしぐさを見せると、ギンは二フラに対し声をかける。


「申し訳ない。ここは俺達に任せて、あなた方は住民の避難をしていただけますか」


 ギンの言葉を聞いて、二フラは言葉を返そうとするがマイクが口を挟む。


「しかし、我らには……」

「行きましょう隊長」

「マイク、何を言うんだ!我らの任務はこの街を守ることだぞ」

「だからですよ、さっきのあの人の魔法に僕達は気付かなかった。でもあの士官は気付いてそれを防いだ。僕達がこの戦いに介入する余地はないかと」


 マイクは自分達とギン達の力量には差があると感じ、戦いへの介入は不可能であることを二フラに告げるが二フラは反論をする。


「だから尻尾を巻いて逃げろというのか⁉」

「そうじゃありません。あの人達が戦って帝国軍を抑えている間に僕達は1人でも多く避難させるんです。それも街を守ることじゃないんですか?」

「マイク……すまん、どうやら私は悔しさのあまり頭に血が上っていたようだ。お前の言う通りだ」

「それじゃあ、行きましょう」


 マイクの言葉を受け、二フラはギンに声をかける。


「ギン殿、ここは任せましたぞ」


 二フラの言葉を聞き、ギンは軽く頷き、臨戦態勢へと入っていく。

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