特訓・読書・魔導書

 スール国に入国後ジエイと別れたギン達はスール国内の草原に出た。草原の風景を目にしたムルカが馬車の手綱を握っているギンに声をかけている。


「ギン殿、ひとまずここで休憩してはどうか?」

「そうですね、じゃあ馬車を止めます」


 ムルカの声を聞いたギンは馬車を停車させ、後続の馬車を御しているヨナに話す。


「ヨナ、ひとまずここで休憩するぞ」

「あいよ」


 そう言ってヨナも馬車を停車させ、ヨナの部下たちも馬車から続々と降りていく。


 ループが引く馬車、ゲンジが引く馬車それぞれから全員が降りるとブライアンが全員に声をかける。


「じゃあ、俺は昼寝をしてるから出発するときに起こしてくれ」


 そのブライアンの言葉を聞いて、ルルー、そしてヨナが反応を示す。


「また⁉前もあなたのんきに昼寝してたわよね」

「ルルーの言う通りだよ。どういう人生を歩めばそんな無防備になれるんだい」


 2人からツッコミを受け、不服そうな顔をしてブライアンが言葉を返す。


「何だよ2人がかりで、この際だルルーには前も言ったけど、ヨナにも言っておくぜ……」

「良く寝る奴が最後に生き残るってやつ?一見正しく聞こえるけどあなたの場合それにかこつけて昼寝がしたいだけにしか思えないんだけど」


 ブライアンの言葉を聞いて、思うことがあったのかヨナが言葉を発する。


「いやいや、ブライアンの言う事も間違っちゃいないよ。でも今寝ると夜に寝れないよ」

「安心しろ。俺の辞書に不眠っていう言葉はねえ」


 ブライアンの言葉を聞いてルルーが再度ツッコミを入れる。


「いや、それもう1日の半分以上寝てしまうことになるから!」


 ルルー、ヨナ、ブライアンがこういったやり取りを続ける中、ムルカがギンにどうするかを聞く。


「元気がいいな。ギン殿はどうするのだ?」

「俺は少し新しい魔法を試してみます」


 ギンの声を聞いたエイムがギンに声をかける。


「それじゃあ火の魔法ですし、燃えすぎないよう見てますね」

「ああ頼む」


 ギンは魔導書を購入してから文字を読むのに奮闘し、読めない文字をエイムから教えてもらい、自身の魔力の強さに合い、精霊との契約がなしでも使用できる魔法を習得し、今試しで放とうとしていた。


「じゃあいくぞ」

「いつでもどうぞ」


 ギンはエイムの声を聞いて魔法を放つ準備をする。


 ギンは集中を高め、自身の中の魔力の出力を徐々に上げていき、新しい魔法を放つ出力に達し放たれる。


「フレイム・ボム!」


 ギンの放った魔法は火球を少し大きくしたものであった。燃え移りを避けるためエイムが水の魔法を放ちすぐに消火はされたがこれまでのギンの使用した魔法より威力は高いことをギンもエイムも実感していた。


 その様子を見てムルカが感心している。


「ギン殿!これほどの魔法を習得していたとは」

「いえ、これを魔法剣に転用するにはもう少し魔力コントロールが必要です……」


 そう言って少しふらつくギンをムルカが支える。


「大丈夫かギン殿?」

「すいません、この魔法は多用はできないのでここぞというときに使用しなければ」


 ふらつくギンを見てブライアンが声をかける。


「ギン、疲れてんなら昼寝でもするか?」

「遠慮しておく。俺の辞書には不眠という言葉があるからな」

「ぐっ!」


 ギンとブライアンのやり取りを見て思わずルルーが笑い出す。


「フフフ、ハハハ、あなたの負けねブライアン。やっぱり夜寝る方が健康的よ」

「うう、知るかもう寝る!」


 ルルーの言葉に反論できず、ふて寝に近い形で昼寝をするブライアンであった。

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