神官戦士

 プレツの国境の兵士よりブロッス帝国の侵攻がプレツに迫っているとの情報を得たギン達はすぐさまスップにあるミッツ教の教会へと向かった。


 教会に辿り着くと教徒の1人がルルーに話しかける。


「ルルー様お帰りなさいませ」

「ただいま。それで今どうなっているの?」


 教徒とルルーが話をしているとその場に司祭が現れルルーに話す。


「ルルー、お帰りなさい。ん?何故ギン殿達がこちらへ一緒に戻ってきたのですか?」

「その説明をする前に私からお伺いしたいことがございます。ブロッス帝国の侵攻が迫っているというのは」

「その情報はもう古いですね。すでにこちらより東の砦に対して攻撃が仕掛けられています」


 その情報を聞いてルルーは落胆しかける。


「そんな……その砦が落ちればこの町まで帝国軍がなだれこんでしまうんじゃ……」

「ムルカと神官戦士を派遣し、すでに砦の兵と合流し帝国軍と交戦中ですからそう簡単には落ちないと思いますが」

「ムルカ様が⁉」


 ムルカという聞きなれない人物の名前を聞いてギンが尋ねる。


「そのムルカとは?」

「ムルカ様は神官戦士を束ねるお方で、武力はミッツ教随一なの。あの方がいらっしゃれば司祭様のおしゃっられるように簡単にはやられないだろうけど心配だわ」

「それならばすぐに向かおう」

「いいの?それはもう帝国に戦いを挑むってことよ」


 ルルーの問いにギンは自らの思いと決意を話す。


「本当にお前の言うように帝国が俺を狙っているのなら、もう戦うことを避けることが出来ないかもしれない。ならばもう逃げも隠れもせずに戦い抜く。それしか俺が生きる道はない」

「ギン……。分かったわ」


 ギンはエイムとブライアンにも戦う意思を確認する。


「エイムとブライアンはどうする?」

「先にケンカを売ってきたのは帝国の方だ。俺も戦うぜ」

「私もできることをします」


 全員の意思が一致し、砦に向かおうとする中、司祭がギンに聞く。


「ギン殿、帝国があなたを狙っているというのは?」


 司祭の前にルルーが立ち、言葉を告げる。


「後でご説明なさいますので、先に砦に向かわせてください」


 そう言ってルルー、そしてギン達は砦へと向かっていく。


 スップより東にある砦では兵の死傷者は出たが、部隊は持ちこたえており、帝国軍も現在は本陣に引き上げており、警戒しつつもしばらく攻撃はないということで兵を休ませている。


 そんな折、神官戦士らしき男と防衛部隊の将軍が話をしている。


「ムルカ殿、かたじけない。本来ならあなた方は魔物の討伐が専門で人間同士の戦争に介入していただくのは如何なことかと思ったのだが」

「何を言われる将軍殿、無慈悲な侵攻を繰り返す帝国軍を我らとて許せぬ気持ちは貴殿らと同じだ」


 この神官戦士の男がルルーの話に出たムルカという。彼は神官戦士を指揮して砦の兵と合流して防衛戦に参戦しているのだ。


「あなたがたの治癒魔法のおかげで我らはなんとか持ちこたえているようなもの。しかしいつまで持つか」

「援軍はどうなっているのですかな?」

「すでに王宮の方に要請をだしてはいるのだが、それが間に合うかどうか」


 ムルカ達が守る砦にギン達は果たして間に合うのか。

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