19歳でデビューした1巻打ち切りラノベ作家が、20代で新人賞を受賞して再デビューするまでの話

及川シノン

はじめに

東京に遅れて桜が咲いた、4月上旬の東北。

机の上に置いていたスマホに、一通のメールが送られてきた。


『集英社ダッシュエックス文庫の○○と申します。このたびはご応募頂きまして、誠にありがとうございます。及川さんに投稿を頂いた……』


それは、約8年ぶりに新人賞を受賞し、書籍を出版することができるという報せだった。


その時の私は、もちろん嬉しかった。今日までの苦しい努力が、ひとつの結果に繋がったのだという気持ちもあった。

10代の頃だったら、小踊りするほど歓喜して、たくさん入ってくる印税の使い道を夢想したり、挿絵を担当するイラストレーターは誰になるかなと予想したり、漫画化コミカライズした時のカッコイイ見開きを想像したり、アニメ化した時の声優を勝手に妄想していたことだろう。


ただその時の私は、握りめたスマホの画面を見つめつつ、微かに震えながら呟いた。



「あぁ……怖ぇなぁ……」



またあの恐ろしく過酷な世界に、飛び込んで行かなければならない。

そう思うと、浮かれてなどいられなかった。




***




皆様はじめまして。知っている方は大変長らくご無沙汰しています、及川シノンと申します。


タイトルにある通りに、『10代でデビューしたものの即1巻打ち切りとなったラノベ作家が、20代になって再び新人賞を受賞するまでの実体験』を、エッセイとして掲載していこうと思います。


若くしてデビューした方の経験談や、あるいは書籍化後の立ち振る舞い、新人賞に投稿する際のアドバイス等は、既に多くの方が公開していることでしょう。


ですが『打ち切り後に再デビューした人間』は、そう多くはないかと思います。


なのでそういった視点から、初デビューするまでの軌跡や、打ち切り後にどうやって生きてきたのか、どんな気持ちや工夫で応募してきたのかを、書き綴っていく予定です。

業界の裏話などはほとんどなく、自分語りや持論がメインになってしまいますが、それでも興味のある方はお付き合いくださると嬉しいです。


まずは、再デビューが決定した今現在の話をする前に、どうしてラノベを書き始めたのか、私自身の簡単な経歴を語っていこうと思います。

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