第14話:臣従移民
帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年3月20日・ロディー視点
ロディー15歳
ガブリエルたちエルフ族が詫びの為の工芸品を持ってきたのは10日後だった。
人間やドワーフに詫びたくない者たちが抵抗したのだろう。
ルイーズを追放する事では意見が一致しても、他の事では考えが割れる。
どの社会でもある事だから気にしない。
俺としては、別に詫びに来なくてもいいと思っていた。
そんな風に一方的に約束を破れば、エルフ族の評判が地に落ちるだけだ。
少なくともドワーフ族と係わりのある種族の間では、先のルイーズの言動と共に悪評が広まるだけだ。
いや、このように詫びが遅くなっている事も含めて、すでに広範囲にエルフ族の悪評が広まっているだろう。
エンシェントドワーフのジェイミーが、日にちが経つほど機嫌がよくなっているから、率先して悪評を広めているに違いない。
「このように時間がかかった事、先の恥知らずな言動と共に詫びさせて頂く。
本当に申し訳ない」
エンシェントエルフのガブリエルが頭を下げるが、後ろに立っているエルフ族の半数は頭も下げずに俺を睨んでくる。
「別に謝ってもらわなくていいですよ、ガブリエル殿。
自らが行った事は、そのまま自らに返ってくるだけです。
先のエルフ族の言動も今回のエルフ族の態度も、正確にこの世界に広まり、エルフ族の正しい評価として定着する事でしょう」
「なに?!
お前がある事ない事広めたのか?」
「黙れ!
恥知らずの出来損ないが!
エルフ族の評判を地に落としたのは、他の誰でもないお前たちだ!
これ以上エルフ族の誇りに泥を塗るのなら、この手で殺すぞ!」
この10日の間に、よほど腹に据えかねる事があったのだろう。
前回は最後まで表面上だけは笑みを絶やさなかったガブリエルが激怒している。
ガブリエルの本気の殺気を受けて、俺に悪態をついたエルフが蒼白になっている。
「エルフ族内の争いを我が領地に持ち込むのは止めていただきたい。
本気で詫びる気がないのなら、さっさと帰ってもう2度と来ないでくれ。
それでなくても前回の件でエルフ族に対する評価は最低になっているのだよ。
詫びに来たように見せかけて、更なる悪態をつかれては、何の罪のない、他の地のエルフ族が不当に扱われかねないからね」
「前回の訪問だけでなく、今回の訪問でまでエルフ族の恥をさらしてしまった事、心から詫びさせて頂きます」
「ガブリエル殿、人間ごときに頭を下げて、それでも誇り高きエンシェントエルフなのですか?!」
厳しく指摘する俺に深々と頭を下げたガブリエルを、背後に立つエルフ族が糾弾したが、それがこの世で発する最後の言葉になった。
ガブリエルはエルフ族の誇りを本当に大切にしているのだろう。
抜き手も見せずに剣を振るって愚か者の首を刎ねた。
「詫びを言いに来て会談の場を血に染めるとは、エルフ族の下劣さは人間並みだな」
「ご領主殿の申される通りで、言い訳のしようがない。
後日改めて今回の件は詫びさせてもらうが、前回の件の詫びを受け取ってもらえないだろうか?」
「どうやらエルフ族が恥知らずなのは、個人の事ではなく、種族の特性のようだ。
このような状況を生み出す者を同行させておきながら、ぬけぬけと詫びの品を受け取って全てなかった事にしろと強制してくるのだからな」
「……ご領主殿の申される通りだ。
どうやら傲慢で恥知らずなのが、エルフの拭い難い性分のようだ。
頭を冷やして、どうすればご領主殿に詫びを受け取ってもらえるか考えてくる」
「このままもう2度と表れないでくれるのが1番だぞ」
「……その方法も考慮に入れて考えさせてもらう。
今日は本当に申し訳ない事をしてしまった。
心から詫びさせてもらう、この通りだ」
「どれほど頭を下げられても、前回脅迫された事も、今回罵られた事も、会談の場を血で汚された事も、なかった事にはならないし、一生忘れる事はない。
この記憶が俺のエルフ族に対する今後の言動を決める事になるだろう」
「……確かに、自分たちが行った事をなかった事にはできない。
自分たちの言動が他のエルフ族の生活を脅かす事になるのか……」
「そうだな、お前たちの言動が、人間の国でくらしているエルフ族が虐殺されたり奴隷として虐げられたりする切っ掛けになるだろうな」
「なに?!
人間、エルフ族を虐殺すると言うのか?!」
ガブリエルの背後に立っているエルフ族の1人が俺に詰問しよとする。
「ガブリエル、俺たちに全面戦争をしかけたいのなら、こんな恥知らずな難癖をつけずに、正々堂々と宣戦布告したらどうだ。
前回と言い今回と言い、恥知らずにも程があるぞ」
「これ以上エルフ族の評判を落とすな!」
ガブリエルは俺に詰問しようとしたエルフ族を殴り倒した。
殴られたエルフ族の顔が熟したトマトのように血膨れしている。
下顎の骨が粉々に砕けているのだろう。
自業自得としか言いようがないな。
「ジェイミー、お客様がお帰りだ。
大森林までキッチリと送り届けてやってくれ」
俺は言外に、領内から叩き出せ、グズグズするようなら戦争になってもかまわないからぶちのめせ、という意味を込めて命じた。
「了解した、任せろ。
ガブリエル、これ以上その傲慢で恥知らずなエルフ顔を騎士殿に見せるな。
さっさと誰にも相手にされない嫌われ者の住処に戻れ」
ジェイミーたちドワーフ族は多少がさつだが、嘘は言わない。
どうやらエルフ族は大森林に住む全ての種族から嫌われているようだ。
「……分かった、もうこれ以上エルフ族の恥をさらすわけにはいかないからな」
そう言ってガブリエルは帰って行った。
一緒に来ていたエルフ族が、ガブリエルに殺されたエルフと顎を砕かれたエルフを背負って帰って行った。
不服そうな顔をしていたエルフもいたが、攻撃を仕掛けてはこなかった。
「騎士殿、臣従希望者を連れてきたぞ。
戦力的には当てに成らない普通種のドワーフだが、農作業や建築の手助けくらいはできるから、好きなように使ってくれ。
その代わりと言っては何だが、酒の割り当てを増やしてもらえないだろうか?」
更に10日経って、ジェイミーが新たにやってきたドワーフ族を連れてきた。
俺が最初にジェイミーに突き付けた条件、酒造りに使う魔力と時間の対価として、手当たり次第にドワーフ族をかき集めたようだ。
「渡す酒の種類と量は働きしだいだ。
何度も言っているが、俺が使う魔力と時間以上の働きが無ければ、酒は与えない」
「分かっている、大丈夫だ。
騎士殿が作物を植えてくれれば、畑の世話や収穫などと言った雑用は全てやる。
魔力を必要としない酒造りの雑事も全部やる。
それで魔力がずいぶん節約できるはずだ、違うか?」
確かに、雑用をドワーフ族が引き受けてくれるのならだいぶ楽になる。
前世に読んだラノベのように、村を発展させるのも面白いだろう。
弱い領民だと命を背負う事になって重荷になるが、酒好きで強いドワーフ族なら、全く責任を感じずに一緒に暮らせるかもしれない。
「分かった、雑用を引き受けてくれのなら、俺はワインなどの果樹を育てよう。
今は畑で作れる穀物や野菜からしか酒を造っていないが、1番身近な果実酒はリンゴで作ったシードルだし、高級酒と言えばブドウから作ったワインだからな」
「なに?!
ブドウを育ててワインを造ってくれるのか?!」
「ああ、ドワーフ族は全ての雑事を引き受けてくれるのなら、その分の魔力を木の成長に使えるから、本来なら収穫までに3年4年かかるブドウの木を1年で育てられるかもしれないからな」
「なんでもやる、なんでもやるから、騎士殿が育てたブドウで造ったワインを飲ませてくれ、この通りだ、頼む、お願いだ!」
『ロディー騎士領』
領主:ロディー
家臣:エンシェントドワーフ・24人(ジェイミー、ナイル)
:ハイドワーフ ・38人
:エルダードワーフ ・58人
:ドワーフ ・97人
領民:人間 ・1人(アルフィン)
『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民 ・レベル887
:自作農民・レベル512
:開拓農民・レベル369
付属スキル:耕種農業レベル626
耕作 レベル887
種蒔き レベル693
品種改良レベル693
農薬生産レベル693
農薬散布レベル693
選定 レベル693
収穫 レベル693
剣鉈術 レベル599
戦斧術 レベル599
:工芸農業レベル212
木工 レベル212
紡績 レベル212
織物 レベル212
:開拓 レベル369
伐採 レベル369
建築 レベル369
石工 レベル 21
魔力生産レベル237
魔力増幅レベル237
:自作 レベル512
燻製 レベル 68
酒造 レベル512
発酵 レベル512
陶芸 レベル225
料理 レベル264
一般スキル:戦闘術レベル9
剣術 レベル9
槍術 レベル9
戦斧術レベル9
弓術 レベル9
石弓術レベル9
拳術 レベル9
脚術 レベル9
柔術 レベル9
戦術 レベル9
馬術 レベル9
調教術レベル9
:魔術
:生産術レベル9
木工 レベル369
絵画 レベル9
習字 レベル9
算術 レベル9
料理 レベル264
刺繍 レベル9
裁縫 レベル9
大工 レベル369
石工 レベル 21
「基本能力」
HP: 51557
魔力:1942986
命力:1537444
筋力: 35565
体力: 32749
知性: 23741
精神: 20093
速力: 17680
器用: 17680
運 : 17812
魅力: 17680
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