二十七話

 ダニエルが街を出歩いていた頃、友成と双葉、ブレットとカノンの四人も街を出歩いていた。


「ダニエル君。先にこの街に来ているんだって」


「全く、アイツは……。本当に自分勝手だよな」


 街の見学をするために外に出ようとした時、屋敷の人間からダニエルも一人で街に出ていることを聞いた双葉がそう言うと、友成が不機嫌そうに呟く。


「まあまあ……。誰にだって一人になりたい時があるからね」


「そうだね。異世界転移なんて、とんでもないことに巻き込まれたんだから、一人でいたくもなるよ。……それにしても」


 不機嫌そうな友成をなだめるようにブレットが言うと、カノンがブレットの言葉に同意して頷いてから周囲を見回す。すると服装等からカノン達が異世界人だと分かって視線を向けてくる街の住民達の何人かと目が合った。


「やっぱり見られているね」


「それはそうだろうね。ライゴウさんとハヤテさんの話によると前に百機鵺光が起こったのは二十年前だそうだからね」


「それなのに今度は私達にブレット君と、短い間で立て続けに起こったのは不思議ね」


「確かに。こんな調子だったら、もしかしたらまた百機鵺光が起こるかもな……って、え?」


 ピィー。 ピィー。 ピィィー……。


 カノンの言葉にブレットが答え、不思議そうな顔で百機鵺光のことを考えていた双葉に友成が冗談を言ったその時、何処からともなく鳥の鳴き声に似た音が聞こえてきた。


「こ、この音は百機鵺光!?」


「そんな! こんな所で!?」


「な、何で? も、もしかして俺のせいか!?」


 その鳥の鳴き声に似た音は、紛れもない百機鵺光の合図。


 音が聞こえたのは街の住民達も同様で街中がざわめく中、あまりにもタイミングが良すぎて自分のせいで百機鵺光が起こったのではと顔を青くする友成に、ブレットが引きつった笑みを浮かべて話しかける。


「だ、大丈夫だって友成君! 君のせいじゃないって。それに百機鵺光が起こったからって、すぐに騒ぎにはならないって。僕達の場合はウチの馬鹿が暴走したせいで戦闘になったけど、百機鵺光でやって来る異世界人の全員がいきなりドンパチするとは限らな……っ?」


 ブレットが友成に向かってそこまで言った時、街の上空に突然強い光が生じた。


 光が収まると街の上空には、一体の巨大なロボットと機械の鎧を着た複数の男女、そして巨大な鳥と機械が一体化したような不気味な怪物が数匹飛んでいた。


 巨大ロボットと機械の鎧を着た男女は、怪物達と睨み合う形で空に浮かんでおり、どこからどう見てもこれから戦い合おうとした、あるいは戦っている最中に元の世界に転移してきたようにしか見えなかった。


「〜〜〜! 何、フラグ立てているのさ、この馬鹿!」


「ゴメンナサイ!」


 まるでブレットの言葉がこの状況を作ったかのような展開にカノンがブレットを殴り、ブレットも殴られながら謝罪の言葉を口にする。そんな漫才のようなやり取りをしているカノンとブレットの二人に、双葉は焦った声で言う。


「二人共! 遊んでいないで早くなんとかしないと!」


「ええ! 分かっているわ!」


「急いで屋敷に戻ろう!」


 もしあのロボット達と怪物達が戦闘を始めたら、まず間違いなく街に大きな被害が出るだろう。そしてそれを阻止するには自分達もロボットの力が必要である。


 ブレットとカノンは自分達のロボット、タンクマンがあるライゴウの屋敷へと向かって走り出し、友成と双葉もその後に続くのであった。

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