第53話 ドローンはSF

 竜一りゅういち竜也たつやと一緒にリビングにあるTVで空撮された映像を見ていた。

 昔は空撮なんて人や機材が載せられるヘリを使わなくては撮れなかったのに、今では「ドローン」なるものがそれをずいぶんと簡単にしてしまったらしい。

 その辺を竜也に聞く。


「なぁ竜也、確か最近じゃこういう空撮映像って「ドローン」って奴が使われているんだよね? そう言えばドローンってどこかで聞いたことが有るような無いような……どこだったっけ?」


 昔のSF小説にもドローンが出てきている物があったが、竜一は噂で聞いたことが有る程度で実際には読んでおらず、詳しいことは分からなかった。


「ドローンって結構種類があるんだよな? 中にはラジコンみたいなものまであるんだろ?」




 2023年現在の日本では「ドローン」という言葉はかなり「おおざっぱ」なカテゴリーだ。

 今の段階では「ドローン」は「無人航空機」という意味で、いわゆる「ラジコン」も「プログラムされて人間が指示を出さなくても自立制御する航空機」もひとまとめに「ドローン」と呼ばれている。


「ドローンと言っても大半は伯父おじさんの言う「ラジコン飛行機」で、SFに出てきそうな自立制御されたのは民間にはまだまだ少ないよ。

 それに最近のドローンはクアッド4つのコプターが多いから、とりあえず何個かプロペラがついてるのは全部ドローンと呼んじゃえ。っていうのもあるけどね」

「でもそれって要はただの「ラジコン」だよな? だったらセンスオブワンダーは無いな。個人的には」


 最近ではいわゆる「ラジコン飛行機」と呼ばれるものにも、昔よくあったヘリコプター型でないクアッド4つのコプターの物があり、それもドローンと呼ばれている。初心者でも操縦しやすいことや、物によっては特に免許が無くてもカメラで空撮もできる事から普及しているそうだ。


「なんか伯父さん不完全燃焼っぽいね。昔はドローンなんて無かったはずだけど「スゲェ!」って言わないの?」

「うーん。言い方は変わったけど30年昔にもラジコンの飛行機自体はあったから、特別スゲェとは思わないんだよなぁ」

「ふーん、意外だなぁ。伯父さんなら「スゲェ!」とか言って食いついてきそうだったんだけど」


 ドローンっていうSFに出てきそうな物が出ても予想外なほどにあまり盛り上がらない。そこへ竜二りゅうじがスマホ片手にリビングに降りてきた。




「よう竜也、それに兄貴」

「あ、オヤジ。ドローンについて何か知ってる?」


 竜也は父親にドローンに関して聞く。


「どうしたんだ? 急にドローンの話だなんて」

「伯父さんとドローンの話をしてたんだけど盛り上がらなくて……。何かある?」

「そうか。ドローンねぇ……あ、そういえばこんなのがあったな」


 竜二はスマホを操作してとある動画を再生する。それは「ドローンショー」なるものを撮影した動画だった。




「うわ! なんだこれ!?」


 そこには数百機のドローンが一糸乱れぬ編隊を組み、夜空に光によるアートを描いていた。


「スゲェ! どうなってるんだ!? どうすればこんな数操作できるんだ!?」

「これらのドローンは全部あらかじめプログラムされた通りに動いていて、ショーの間は人間は一切操縦や操作はしていないそうだ」

「へぇ! 今ではこんなこともできるのか! スゲェな! こういうのがあるとSFが現実になったって感じがするよなぁ」


 SFの世界でも中々無い、ドローンによるエンターテイメントに竜一の目が輝いていた。


「あと将来的にはドローンがトラックの代わりに荷物を届けるようになるっていうのは聞いたことが有るな。まだまだ実験の段階を超えてはいないけどな」

「へー! ドローンが空輸するのか! 空を飛ぶ自動車はSFではよく見たけどそれみたいなもんか?」

「あー空を飛ぶ自動車か。そういうのあったな」


 昔、具体的には80年代や90年代の未来予想図では車が空を飛んでいたのだ。そんなものもあったな、と竜一と竜二は懐かしい話をしていた。


「オヤジ、やっぱり伯父さんとは話が合うんだな。兄弟だから?」

「まぁほぼ同年代だからな。特に昔話だと話題も結構合うからな」


 この後話題はドローンとは関係が薄いものになってはいたが、昔話をして過ごしたという。




【次回予告】

 8月31日……夏休みの最終日にTVで竜一にとっては「夢&未来」の乗り物について報じられていた。


 最終話 「リニアはSF」

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