第51話 自動食器洗い機はSF

「♪~♪♪~」


 今日の咲夜さくやは鼻歌交じりでやけに上機嫌だ。朝早くから車でどこかへと出かけた後「何か」を持ち帰ってそれをキッチンに取り付けている最中だった。

 夏休みの宿題を全て終えてあとは数日後に始まる2学期の始業式まで何をしていてもいい状態になった竜一りゅういちが気になって声をかけた。


「咲夜さん、妙に上機嫌っぽいけど何か良いことでもあったんですか?」

「ああ、竜一君ね。わかる? ついに自動食器洗い機が買えたのよ。

 半導体不足で納入が遅れてたんだけど昨日になってようやく店に届いたっていう連絡がきたから、朝一で取りに行って今取り付けている最中なのよ」


 2020年に発生し現在も継続中であるコロナウイルスの流行で主に中国にある工場のロックダウンによる操業停止が原因で世界的に半導体が不足していた。

 2023年になってそれはある程度は改善されているものの完全には解消されず、いまだ家電製品の納入延期もしくは納入時期が分からないとして納期未定となるのはまだまだ続いていた。

 そんな中、8月の頭に予約した全自動食器洗い機が昨日になってようやく店に届いたと咲夜のもとに連絡が行き、朝一で取りに行った後取付作業中だったのだ。


「咲夜さん、全自動食器洗い機って結構高いけど貯金でもして買ったんですか?」


 竜一はスマホで相場を調べると安くても3万~5万、高いものだと10万円くらいはすると出ており、なかなかの金額がする買い物だ。


竜二りゅうじさんのボーナスで買ったのよ」

「なるほどボーナスか……」


 竜二の勤める会社は今でも夏と冬にボーナスを1ヶ月分払っているという。最近の会社はボーナス無し、なんてこともざらにあるのに律儀な会社だなと竜一は思った。




「よしっ、出来た! じゃあ早速ためしてみましょうか!」


 咲夜によるセッティングは終わり、さっそく食器洗い機を使う事にした。

 デビュー戦で挑む相手は家族が今朝食べた先日の夕食の残り物であるカレーが付いた皿とスプーン……しかもご飯粒がくっついたなかなかの難敵だ。

 彼女は使った皿やスプーンをセットし終えて食器洗いをスタートさせた。


「へぇ、水で洗浄するんだ。本当にキレイになるのかな?」


 タンクの中にある水と専用の洗剤を使って食器を洗っていく。外からではその様子はあまり見えないのが竜一はちょっとだけ不安だった。

 洗浄完了するまでTVを見るなりスマホをいじるなりして1時間後。取り出してみると……皿もスプーンも見事なまでにピカピカだった。


「スゲェ。手洗いした時みたいにピカピカになってる。しかもカレーやご飯粒もしっかりと落ちてるぜ! スプーンもだ!」


 専用の洗剤を買うという手間に応えるかのように皿とスプーンはピカピカになっていた。


「はぁ~どんどん家事が楽になるな。電子レンジで焼き物や揚げ物も作れるし、掃除もお掃除ロボットがやってくれるし、今度は食器洗いまで機械がやってくれるのか! スゲェな!

 まさか食器洗いが自動でできるとは思っても無かったぜ! SF作家の盲点を突いたって感じで良いなぁ」


 2023年の令和の時代はVRバーチャ・リアリティ太陽帆ソーラーセイル、それにイオンエンジンや核融合反応炉という「SF作家が思い描いたもの」はもちろんのこと、

「携帯電話のさらに次世代機であるスマホ」や「AR拡張現実ゲーム」といった「SF作家でも構想すらしていなかったもの」までも次々と現実のものとなっていく世の中だった。

 どちらもSFマニアの竜一にとっては素晴らしい出来事で、科学が見せてくれるセンスオブワンダーに夢中になれたそうだ。




【次回予告】

 2023年の令和の時代にはパワードスーツが既に実用化されて販売までしている!?

 そんなセンスオブワンダーの塊みたいな出来事に竜一は遭遇する。


 第52話 「パワードスーツが実用化!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る