第21話 ゲーセンはSF
その日、
「ゲーセンって言ったら灰皿が飛んで来たり
竜一は得意げに「当時の」ゲーセンの様子をそう語る。そうこうしているうちに2人が乗った自転車2台が目的地にたどり着いた。中に入ると、妙に明るい。
「
「……何かずいぶん明るくなってないか?」
ゲームセンターだと聞いて入った建物の中は想像してたのとずいぶん違う。
竜一にとってのゲーセンのイメージは暗い不良の溜まり場であり、どちらかと言えばアンダーグラウンドな場所であった。
それが今では照明がふんだんに使われて店内は明るく、クレーンゲームやメダルゲーム、キッズカードゲームで親子が遊んでいるような場所に様変わりしていたのだ。
「ファミリー層を狙いだしたのと健全化が進んで伯父さんが想像してる暗くて汚いゲーセンはもう姿を消したよ」
「へーそうなんだ。30年も経つとゲーセンって変わるもんなんだなぁ。で、どんなゲームがあるの?」
「例えばこれかな。
竜也はそう言って何枚かのカードを竜一に渡す。
「へー、歴史上の偉人が集まって戦うゲームねぇ。って、何だこのカード? それに……どうなってんだ? レバーが無いぞ? どうやって操作するんだ?」
「ああ、それはカードを操作して遊ぶゲームなんだ」
「カードを操作……?」
「そう。カードを動かすとその位置までゲームの中の部隊が動くんだ。それで相手の城を攻め落とした側の勝ちってわけ」
竜也に言われるがまま竜一はカードの位置をずらす。するとゲーム画面内の兵士もそれに合わせて動いてくのが見えた。
「ど、どうなってんだ!? カードの場所目がけて部隊が動いてる!? ス、スゲェ! こんなゲームSFにも出てこないぞ!?」
「カードに特殊な印刷がされててそれを読み取ってるんだよ」
「へぇー、そうなんだスゲェや。ところで対戦ゲームのようだけど対戦相手はどこにいるんだ?」
「
新潟県……? なぜここで急に何の前振りもなしに新潟県が出てくるんだ? 竜一は疑問に思う。
「は? 新潟? ここ
「このゲームはオンラインで繋がっていて全国から選ばれた対戦相手と戦えるようになってるんだよ。伯父さんからすれば『パソコン通信』って言えばわかるかな?」
「何ぃ!? これってパソコン通信の発展形なの!? スゲェ! 人を呼ばなくてもいつでも対戦プレイが出来るのか!? いやぁ進んでるなぁ、さすが未来なだけあるわ」
昔は対戦ゲームと言ったら実際に人と人とが顔を突き合わせないと出来なかった時とは比べ物にならないくらい進歩していた。
著名なSF作家でも想像すら出来なかったゲームに大興奮だった。結局その時の対戦ではボロ負けしたが満足のいくプレイだった。
竜一は今度は別のゲームをしようと席を立つ。すると、とある
「これは……麻雀のゲームか? 昔は脱衣麻雀ゲームとかあったんだよなぁ。脱がすためにルールや役を覚えてたよ。って、対戦相手はどこにいるの?」
「今他のどこかの筐体に接続している誰か。オンラインでいつでも麻雀が出来るよ」
「こ、これもオンラインか!? って事はいつでも対人の麻雀が出来るって事か!?」
「そうだよ」
「ス、スゲェ! もう卓を囲むのに人を集める必要が無いのか! 昔は
高校生が雀荘に通っていたとなると生活指導の対象になるだろうから、そこだけは秘密にしてくれと竜一は
ひとしきり遊んだ後、竜一は満足げな顔をして甥と一緒にゲーセンを後にした。
「いやー30年後のゲーセンはスゲェなー。こうまでSF作家でも想像さえ出来ないゲームがズラリと並ぶとは思わなかったなー」
「
「まぁな。テストはいつも赤点ギリギリで追試を受けるか受けないかの
「……そこ、誇らしげに言うことじゃないから。ちゃんと勉強しようよ」
竜也は言動からしたら30年前の学校生活においてはおそらく遊んでばかりでろくに勉強もしなかったであろう伯父に対して、冷静にそうツッコミを入れた……自分も似たようなものだ、とは思っていたが。
【次回予告】
SFの世界にしかなかった「ソーラーセイル(太陽帆)」と「イオンエンジン」
この2つが何と現実のものとなっていることに竜一は衝撃を受けていた。まさに「SFにしかなかったもの」が現実のものとなっていたのだ。
第22話 「ついにソーラーセイル(太陽帆)とイオンエンジンが実現!!」
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