第15話 大豆ミートはSF
新宿をひとしきり観光してそろそろ帰りの時間になった。新宿駅まで戻って来たとき、
「何だこれ……大豆ミートフェア?」
駅近くにある百貨店の催し物として「大豆ミート」なるものを扱ったフェアが行われていた。
パッと見た感じ、普通の「肉のフェア」と大して変わりないように見える。ちょっと気になる点があるといえば「A5」みたいな等級がどこにも無い程度である。
「あー、大豆ミートか。せっかくだしお土産に買おうか?」
「なぁ
「説明しなくても行けば分かると思うよ」
そう言いながら2人は百貨店の中に入っていった。
百貨店の中では「大豆ミートフェア」なるものが開催されており、どうやら「肉」を売っているらしい。その中で試食ができるところがあったので竜一は試しに食べてみることにした。
食感は……普通の肉だ。味は……これまた普通の肉だ。良い感じに付いた焦げ目も香ばしくて味のアクセントにもなっていた。
だが、大豆ミートと言うのに「大豆」の「だ」の字もないことに違和感を感じていた。コレの一体どこに大豆の要素があるのか? と。
「なぁ竜也、いい加減教えてくれよ。この肉のどこが大豆なんだ? ただの肉じゃないか、てっきり付け合わせで大豆が出るのかと思ってたんだけどなぁ」
「分かった、教えるって。
「!? な、何ぃ!? こ、これ大豆で出来てるの!? スゲェ! ついに合成肉が出たのか!」
「合成肉っていうよりは「
「へーそうなんだ。でも何でそんなもの作るんだ? 普通に肉食えばいいのに」
竜一は人工肉の登場に驚くがそもそもの謎、この「代替肉」と呼ばれるものを買う客層が誰なのか今一つピンとこない。
「
「菜食主義者は分かるけど、ヴィーガンって?」
「菜食主義者をもっと『凶暴に』したような連中だよ。菜食主義者の中には卵や乳製品を食べる人もいるけど、ヴィーガンはそれすら食べないんだ」
「『凶暴に』した、ってどういう事?」
「海外の話だけど昔、ヴィーガンが肉屋や食肉解体所になだれ込んで大騒ぎして捕まった事があったんだ。あれ以来ヴィーガンに対する目は厳しくなってるね」
竜也の話は続く。それもとんでもない方向に転がるお話だ。
「あ、そうそう。伯父さんの言う本物の培養肉もシンガポールじゃ販売されてるそうだよ」
「な、何ぃ!? 培養肉が既に商品化されてるのか!?
って事はディストピアSF小説でよくある『いつか上級市民になって本物の肉を食いたいぜ! こんな鳥のエサじゃなくてよぉ! クソッ!』ってのが実際に出来るってわけか!?」
「ま、まぁそうだね」
竜也は詳細は分からなかったが、まぁ大体はあってるだろうと
「でも何で文明が崩壊したわけでもないのに培養肉なんて作るんだ? 普通に家畜飼えばいいのに」
「培養肉だと
「ふーん。『地球にやさしいエコマーク』みたいなもんか?」
「ま、まぁそうだね」
竜也はまたもや詳細は分からなかったが、まぁ大体はあってるだろうと、再び
「まぁいいや。お土産に買っていこうぜ。すいません、これ1つもらえますか?」
高校生のお財布事情としては「なかなかの値段」だが奮発して買った。
「へぇ、大豆ミートのフェアか」
「そうそう、ついに合成肉が市販される時代なんだぜ?
ディストピアSF小説でよくある『いつか上級市民になって本物の肉を食いたいぜ! こんな鳥のエサじゃなくてよぉ! クソッ!』ってのが実際に出来るんだぜ! スゲェよなぁ」
新宿で体験したことを弟の
ついに合成肉が出た事、3D技術の進歩で裸眼でも3D映像が見れるようになった事、それらを一気に吐き出していた。
「竜一君、明日の夜はこれでいいかな?」
「良いですよ。大豆ミートって試しに食った程度でどんな味になるのか楽しみに待ってますよ」
味に関してだが「普通の細切れ肉と大して変わらない」ものだったという。
【次回予告】
量子超越性。それは量子コンピューターの持つ莫大な計算能力の事。それがついに実証されたことに竜一は驚愕していた。
最も量子コンピューターが実在すること自体、センスオブワンダーを感じさせるものだったのだが。
第16話 「ついに量子超越性が証明された」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます