第11話 音声合成ソフトはSF
土曜日の
スマホによる動画閲覧にも慣れ、順調に動画サイトに入り浸る令和の普通の高校生へとなっていく
そんな中「奇妙な」動画をいくつかピックアップし、
「なぁ竜也、この「
そのジャンルもポップスから失恋ソングをはじめとして中には演歌まであり、ジャンルの幅がとてつもなく広い。
「あー、それは歌手じゃないよ。音声合成ソフトだよ。歌声を合成するソフトで出した声だよ」
「へ? 歌声を合成するソフト……? ってことはこの新音 ヒビキって人じゃないの!?」
とんでもない情報が飛び込んできた。彼女は音声合成ソフト……? ってことは人じゃないって事か!?
「そうだよ。人じゃないよ。ソフトで再生される人工の声なんだ。だから彼女は「電子の歌姫」なんて呼ばれてるよ」
「何だそれ! ス、スゲェ! ヴァーチャル歌手がもう実在するなんて! なんだよそれSFの世界でもなかなか無いぞ! とんでもねえ話じゃないか!」
ヴァーチャル歌手というSFの世界でもなかなかお目にかかれない人物の登場に竜一は大興奮だ。
「そんなに驚くことかなぁ。新音 ヒビキなんて10年以上も昔からあるソフトだよ?」
「いやいやスゲェだろ!? 音声合成ソフトやヴァーチャル歌手なんてSFの世界でもそうそう見れたもんじゃないぜ!? それが現実にあるとは思わなかったよ。
いやぁSFだなぁ。さすが平成の先の元号なだけあるよ。2023年って未来なんだなぁ、バックトゥザフューチャー2よりも進んでるだけあるぜ。
しかもこれが民間にごく当たり前のように普及してるってのもすげえよな。こんなの下手なディストピアSFじゃごく一部の特権階級だけが独占しててもおかしくないのに」
竜一と竜也の間にはかなりの温度差があったが、それでも
何せ竜也にとっての1993年というのは自分が産まれる前の話。
スマホもなければインターネットも無い時代で、どんなものなのかは到底想像できないある意味「歴史の教科書に出てくるものと同じ」ものであった。
竜也にとっては既に「枯れた技術」である音声合成ソフトに対しひとしきり大興奮した竜一に対し、竜也はあるライブ映像を見せることにした。
「あ、そうそう。新音 ヒビキってライブやったこともあるんだよね」
「へ? いやお前言ったじゃないか。架空のキャラでしょ? 実在していないんでしょ? ライブって……どういう事?」
「うん。実際にライブやったことあるんだよ。ライブのブルーレイあるから見せてあげようか」
竜也はそう言ってブルーレイディスクをプレーヤーにセットする。動画の再生が始まると……。
「な、何じゃこりゃあ!? ホ、ホログラフか!?」
ライブ会場のステージにはホログラフのようにも見える立体映像で「新音 ヒビキ」の全身像が映し出され、その姿を見てライブの観客は最初からフルスロットルだ。そして1曲目が演奏されると彼女も音楽に合わせて体を揺らし、歌を歌い始めた。
ブルーレイディスクに納められたその映像を見て、竜一はただあんぐりと口を開けて
「ス、スゲェ……バーチャルなキャラがライブしてる……ホログラフ技術もここまで来たのか……SFそのものだぜこれは。
いやぁすげえわこれは。赤ん坊からやり直さなくて本当に良かった。こんなスゲェものSFの世界でも見たことがねえよ」
あまりにも想像の範囲をはるかに超えすぎてしまった出来事に竜一の思考回路はショートしてまともに機能していなかった。
「どうした兄貴? そんな大声上げて」
騒ぎを聞いて
「おお! 竜二! スゲェよ! もうバーチャルな歌手がいてライブまでやったんだぜ!? とんでもねえ世界だよ2023年ってのは! 完全にSFを越えてるぜ!」
この後竜一は弟に対して3分ほどノンストップで今目の前で起きたこと、それがいかに凄まじいことかを早口になりながらも語りだしたという。
【次回予告】
SFの世界にしかなかった建造物、軌道エレベーター。それが2年後には着工開始で2050年には完成するというとんでもない知らせを竜一は聞いた。
大抵の人間は真に受けなかったが、彼は真に受けていた。
第12話 「軌道エレベーターがもうすぐ着工!? 生きてる間に完成!?」
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