少女たちはニヤリと笑い合った

少女たちはニヤリと笑い合った


 学園長エルフィンは両手で顔を覆って悲鳴を上げた。


「嘘でしょ。いや本当にやーめーてー! 校庭が壊れちゃうわああああ!」


 そして決着のとき。

 オデットの魔法剣ならぬ魔法メイスはグリンダの目の前へ。

 グリンダの持つ魔法の杖代わりの扇子の先はオデットの首筋の急所へ。


「ふ。やるわね、あなた」

「あなたもね、リースト伯爵令嬢」


 互いにニヤリと笑い合って、攻撃の手を収めた。

 戦闘終了。そして校舎からは割れんばかりの拍手と歓声が湧き起こった。




「いや待って、ほんとに待って。私たちは何を見せられてるの、こういうのって男の子同士が汗臭くやらかすやつじゃないの?」

「美しき友情……ということではないですかね? エルフィン先生」


 見届け役ふたりの前では、互いに武器を収めてハンカチで汗を拭いながら、和やかに令嬢ふたりが互いの健闘を讃え合っている。


「ねえ、リースト伯爵令嬢。わたくしの家には、あなたの大事な王女殿下の遺物が伝わっているの。小さな宝石箱よ。良かったら見にいらして。あなたが持っていたほうが王女殿下も喜ぶと思うの」

「いいの!? ……オデットでよくてよ、私もあなたをグリンダと呼ぶわ」


 グリンダの家、ウェイザー公爵家は王家の親戚だ。

 ということはもちろん、オデットが慕っていた当時の王女についてもよく知っていた。

 むしろ、機を見て学園内で話しかけようと思っていたところに、オデットに対する虐め行為が発覚して対立することになってしまった。

 グリンダは元からオデットと対立したかったわけではない。




「ああしてキャーキャー騒いでるところは、年頃の女子っぽいんだけどねえ……」


 とりあえず学園長のエルフィンはこの後、始末書を書いて、ことの顛末を国に報告せねばならない。


 教師たちに事態の詳細を説明して、生徒たちにも伝える必要があるし、


 ……とりあえず絶対この令嬢ふたりの家から、荒れに荒れた校庭や、魔力を使った戦闘の余波でヒビの入った校舎の修繕費用をもぎ取ってやると心に決めた。


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