第3話 スライムが現れた!!
森を目指して歩き始めてから、どれくらい経ったろう。
たった1人サクサクと、草を踏みならしながら草原を進んでいると不意に、プチっという音が足元から聞こえた。何事かと足元を見れば、何やら半透明なブヨブヨした物体に足を突っ込んでいた。
「キショっ!!」
その見た目のグロテスクさに思わず飛び退き、恐る恐る覗き込むと、足の型が残るブヨブヨの中に砕けた石のような物が見えた。
「何だこれ……?」
正体不明なブヨブヨは、小刻みに痙攣しているようにも見える。
こういう時こそ鑑定だな。
頭でそう思考するとすぐさま反応があった。
名称 グラススライム
Lv .2
状態 死亡
なんと、ブヨブヨの正体はRPGでは雑魚として最もポピュラーなスライムだった。可愛い滴状のスライムではなく、ネバネバ系のスライムだった事は微妙に残念だが、意図せず殺してしまったらしい。これが俺が異界へ来て初めて、生物の命を奪った瞬間だった。
――えぇ……、最初の戦闘ってもっとこう緊張感とか、達成感とかさぁ……。
そう思いながらも、革靴に付いたブヨブヨの欠片を、草に擦りつけて落とす。気分的には犬の糞を踏みつけたような物だ。
――ん? 待てよ。スライムを倒したって事はもしかして。
そう思い立ち、すぐさまステータスを確認する。
経験値 2
――おぉ! 経験値がわずかに増えている! これだよ! このチマチマ感!
たったの2しか経験値の無い雑魚中の雑魚だったスライムだが、俺の偏ったRPG魂に火をつけた。
そこからは森を目指しつつ、草むらを用心深く探り、グラススライムを見つけては踏み潰すを繰り返した。最初のスライムの石が砕けていたのを参考に、石めがけて踏みつければあっさりと倒せてしまったからだ。靴にブヨブヨが付くのが玉に瑕だが、武器も何も無いのだからしょうがない。大人しい種類なのか、襲いかかってこない事も幸いした。
ゲームではお馴染みのドロップアイテムも、数回倒したどれからもそれらしい物は現れなかった。確率でたまたま出なかっただけなのか、それとも元々ドロップしないのか。その辺りはまだまだ謎だったが、今は知る手段もないのでレベリングに集中する。
そんな地味な作業を十数回繰り返した所で、ポップアップ画面がレベルアップを知らせた。
――へぇ、わざわざステータス画面を開かなくても教えてくれるのか。親切設計だな。
ゲームでは派手なファンファーレがレベルアップを祝ってくれるが流石にそれはなく、少し寂しくも思いつつ確認のためステータスを開いて変化を見る。
Lv.2
HP 6/37
MP 9/65
筋力 4
攻撃力 4
体力 5
防御力 7
知力 40
抵抗力 59
器用さ 27
素早さ 8
運 15
経験値 26
スキル 大陸公用語 鑑定 次元収納
HPはほんのわずか、筋力や体力には変化が無く、MPと知力他が少し上がっている。増加量も非常に小さい。これで成長チートがない事もわかった。ますます俺好みのゲームバランスと言えよう。自然と顔がニヤける。側から見たらさぞ気味悪い事だろう。1人でよかった。
成長具合から言って、どうやら俺は魔法タイプのようだ。
魔法の存在もまだわからないが、MPがあるのだから似たような物はあるのだろう。問題はレベルアップと共に覚えるのか。スクロールのような物で覚えるのか。
アイテムで覚えるタイプの場合、しばらくは魔法が使えないという事になる。これから先、例えば森に着いてからスライムよりも強い好戦的な魔物に出会った場合、苦戦を強いられる事になる。最悪には死が待っているだろう。マップが進めば敵も強くなると相場は決まっている。暗くなる前に安全も確保しなければならないな。
早いところ人の住む場所に行って、生活の基盤を整えなければ冒険する事も難しいだろう。冒険者ギルドが存在して支援してくれるのが1番良いが、そのためにもまずは生き延びなければならない。
前屈みで草むらを睨んでいたので、固まった腰を伸ばしながら背伸びをする。そろそろ日も傾きかけて、空が赤く染まり始めていた。額に手をかざし森の位置を確認すれば、もうすぐそこだった。たぶん1時間とかからないだろう。
――よし、もう少し踏ん張ろう。
そう意気込んでまた地味な作業に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます