2-18:パーティの部 第一回戦

【side-大会実況ステージ】


「さぁ始まりました!来訪者最強決定戦パーティーの部 第一回戦!Dパート!実況は引き続き、わたくしレイアが。そして解説にはGoldenMeity所属のミイさんにお越しいただいております。よろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。」


 ここは闘技場内に設置されたイベント用の実況ステージ。そこでは大会実況で有名なレイアとVRMMOの元プロが実況解説を行っている。


「さて早速ですが、Dパートの注目パーティはどこになりますでしょうか?」


「そうですね、まずはAegisOneとGirlsAnthem+αは外せないでしょう。どちらも本大会優勝候補として名が挙がってますからね。その次に暁でしょうか。あのメメントカクシさんを中心としたパーティです。」


「やはりそこが上がりますか。強いパーティーと言われれば必ず名が上がるところですからね。GirlsAnthemは助っ人二人を加えての参加となりますが、3パーティの特徴はどうご覧になってますか?」


「まず、AegisOneは全員がある程度オールラウンドに活躍できるスキル構成になってるところですね。それを生かして広くエリアを確保していくのが特徴でしょう。」


「その、広くエリアを確保するというのは自分たちにとっての安全地帯を広げるという意味でいいんですよね?」


「えぇ、そうです。どのチームも似たようなことをやってますが、このチームは特に広げてますね。ここまで広げると普通はカバーが間に合わないですから、それを狙われると対処するのは難しいはずなんですけどね」


「それを成立させてしまうのがAegisOneの強いところということですか」


「えぇそうです。」


「ではGirlsAnthem+αはどうでしょうか?」


「基本的に3・1・1で活動してるところですかね。1を担当する人が広く索敵して事前に敵を察知。その状況に応じてパーティを誘導したり漁夫したりします。特に漁夫は恐ろしいですね。相手によっては本隊が来る前に仕留めきってしまうほどの個の強さをもってますから。かといって、その索敵を無視して本隊に手を出せないのが歯がゆいところです。」


「1で活動してるのはカケル選手、ラン選手ですね。どちらもソロプレイヤーとして非常に強いと有名です。索敵を無視して本隊に手を出せないというのはどういうことでしょうか?」


「単純に本隊に手を出すよりも先に索敵に見つかってしまうということです。彼女らの索敵範囲はどういうわけか異常に広いんですよね。なので無視しようとすると背後から襲われて連携が崩れ、その間に本隊がやってきて殲滅されます。連携不足のパーティだと一人で殲滅されたという報告もありますね。あ、丁度いま映像に映ってますね。」


 そこには本隊に向かっていたパーティの背後からカケルが攻撃を加え、足並みが崩れたところに本隊が合流。そして敵を殲滅するという映像が映っている


「なんとぉ!?あっという間、あっという間でしたよ!?敵に何もさせずに倒しきってしまいました!」


「あのパーティーは本隊も強いですからね。個の強さもそうですが連携力が素晴らしい。恐らくあの陣形にしたのは連携力を気にしてのことでしょうね」


「なるほどー、カケル選手とラン選手は普段はソロ活動が多いですからね。元々持ってる強みを活かした形ということですか」


「えぇ、そういうことだと思います。おっと、今度はAegisOneの方が面白いことになってきてますね」


「なんと!?3パーティーに囲まれてしまってます!どうするんでしょうか!?」




【side-AegisOne:スース視点】


「リュウセイさん!援護します!はぁぁああ!!」


「スース!出すぎるなよ!」


「もちろんです!」


 まさか3パーティーに囲まれることになるとは運がないですね。チーミングではないでしょうが、AegisOneという強豪パーティを潰せるチャンスですからね。一時的にこちらだけ狙うといった感じでしょう。まぁ、皆さん強いので特に苦戦することはないでしょうが。囲まれてもいいようにエリアを広くとってますしね。


「そこだ!スラッシュ!」

 

 ガキン!


「おっと、やらせないよ。スース!」


「わかってますよ。ツインストライク!」


 相手の剣士が出てきたところをリュウセイさんが抑え、僕がスキルで剣士の首を狙って攻撃します。さすがに一撃では倒せないようですが、かなりのダメージを負わせました。


「ウィンドランス!」


 相手が回復する前にリュウセイさんがすかさず追撃。これで一人脱落です。私たちが担当してる敵パーティは残り3人。


「リュウ!そっちどうだ!」


「こっちは残り3人!俺一人でも耐えれる!」


「了解だ!スース、お前こっちこい!こっちは残り二人、弓使いを頼む。さっさと終わらせるぞ!」


「了解です!」


 リーダーの海斗さんに指示を受けたので、そちらに向かいます。残ってるのはアタッカーの剣士と弓使い。指示された通り弓使いに攻撃します。


「アクアランス!」


「くぅっ!?」


 まずは魔法でけん制。そして回避したところタイミングで距離を詰める。


「くそがぁ!連射。」


 やけくそで弓を連射してきますが、私も結構鍛えてますから。双剣で全て弾きながら進んでいきます。


「バーストストライク!ツインストライク!」


 そして近づいたところでスキルを発動させてダメージを与え、そのまま仕留めきります。双剣のいい所は手数と火力ですよね。例えタンクだろうとスキルがハマれば大体溶けますから。


「よっと。こっちも終わりだスース!お前はリュウの所へ。俺はケイの方にいく!」


「了解です!」


 海斗さんが向かったケイさんとシンジさんの組は、普段は遠距離メインですからね。まだ4人残ってるようです。それでもピンチという訳ではないですが慣れてないという感じがでてます。一方リュウセイさんの方はというと、あれから更に一人倒してたようで、残り二人。それも結構ダメージを与えているようです。・・・あの人盾使いなのになんで3人相手にして一人落として、しかも状況有利なのでしょうか。相変わらずよくわからないですけど、このまま仕留めきりましょう。


「アクアランス!」


 さっきと同じように魔法でけん制。それから距離を詰めて攻撃。これを繰り返して敵を殲滅。反対側も終わったようです。


「終わったな。各自回復したらすぐに移動するぞ。これだけ暴れたんだ。すぐに別のパーティーが来るぞ」


「「「「了解!!」」」」


 僕らはポーションで回復し、その場から移動。その後は特にピンチというピンチもなく、そのまま1位で一回戦を突破した。




【side-大会実況ステージ】


「なんと・・・、どうするのかと思ってたんですが、普通にゴリ押しでしたね」


「まぁ、確かに個の力はありますが、それを活かせるだけのエリアを確保してたのが大きいですね。エリアが狭いと攻撃を避けるのも難しくなってきますから。特に普段は遠距離メインで活動してるケイさんとシンジさんが上手く立ち回れたのはそこにあるでしょうね。」


「なるほど。エリアを広くするというのはそういう利点もあるのですね。」


「1vs多でも十分に対応できる実力があるという前提になりますけど」


「そうですか。注目パーティの紹介途中になってましたが、GirlsAnthem+αと同じブロックの暁はどうですか?」


「あそこは乱戦が特に強いという特殊なパーティですね。メメントカクシ選手を筆頭に、1vs多を得意とする人が集まってます。回復役がいないのも一つの特徴ですね。やられる前にやればいい。そんなパーティです。」


「なるほど、乱戦が強いですか。ですがそうなるとパーティとしての戦闘は苦手ということなんでしょうか?」


「連携といえるようなことはしないですね。彼らは戦いにおいては誰が一番多く敵を倒せるのかを競ってますし。手が空いたら他の人の助けるのではなく、獲物を横取りするような感じです。ただ、味方に攻撃を当てることはないですね。」


「なんと、結構ギスギスしてそうですね。っと、丁度戦闘が始まりましたね。2パーティに囲まれていますが、確かにあれは狩りですね。」


「ですね。おや、カケル選手が離れたところから様子を伺ってますね。漁夫でもするんでしょうか?」


「漁夫してくれると面白いことになりそうなので、配信的には是非漁夫してもらいたいところです!」




【side-GirlsAnthem+α:カケル視点】


カケル『要注意パーティーの暁と他2パーティがやりあってるけど、どうする?』


Rin『可能なら漁夫、特に暁のメンバーを狙ってくれますか?できればメメントカクシさんを倒してくれると助かりますが』


カケル『了解。ただ、あまり期待しないでね。1vs1なら勝てるけど、乱戦であの人を落とすのは難しい。取り巻きの2人くらいは落とせると思うけど。』


Rin『もちろんです。無理せずにお願いします。』


カケル『OK、じゃぁ行ってくる。』


 Rinさんから指示受けたことだし、漁夫いきますか。

 いつものように紫炎を5つ展開、魔力強化を脚にかけて暁の背後から攻撃を仕掛ける。


「ぎゃっ!?ごふっ!おわっ!」


 一番近かった敵に紫炎をぶつけ、そのまま爪撃で追撃。相手の背を足場にして即座に離脱。


「ぎゃぁぁぁ!!」


 私の攻撃では倒しきれなかったが、周囲のプレイヤーにも攻撃されてHPが0になったようだ。


「はぁぁあああ!」


 ドオオオンン!


 離脱直後、爆音と共に3人が宙を舞う。そして空中で身動きが取れないところを暁のメンバーが攻撃している。


「はっはっはぁ!こんなものかぁ!?」


「ぎゃあああ!!!」


 暁のリーダー、メメントカクシさんは中央で暴れているから手を出せない。無理に手を出したら逆にこっちがやられそうだ。無理せず周囲の敵を倒していこう。


「せいや!」


「よっと」


 別のプレイヤーの背後を取って攻撃しようとしたら横から槍で攻撃される。それを急停止して回避し、紫炎で迎撃。


「ふっ(ドヤッ」


 私に攻撃してきたのは暁のメンバーの一人だ。彼は私の迎撃を回避し知っていたと言わんばかりにどや顔している。んー、腕は悪くないと思うんだけど、気を抜くのはだめだよね。


「ぎゃぁぁぁ!!!」


 私にしか気が向いてなかったみたいで、後ろから来てた敵に気づかずにもろに攻撃を喰らっていた。私は容赦なく爪撃を叩き込み、更にその後ろの敵にも紫炎を放っておく。後ろの敵もHPが僅かだったようで、私の一撃で死んでいた。


 よし、これで三人倒した。この場は私含めてあと7人だから、もう離脱しようか。これ以上いると私が優先して狙われそうだしね。


「逃がすかぁ!」


 おっと、ここでメメントカクシが私の方に来るんだ。ただ、無理に私の方に来たせいで、後ろから攻撃されてるね。背中に目でも付いてるのかって具合に迎撃してるけど。まぁいいや。さっさと逃げよう。


Rin『いま2パーティに追われてるんですけど、ランさんこっちこれます?』


ラン『大丈夫です。いまいきます。』


 あら、私が漁夫してる間に警戒網を突破されてたみたい。こっちも仕事終わったからそっち行きますか。追手は来てないね。


カケル『暁のメンバーを2人と無名を1人倒したから離脱した。そっち向かう。』


Rin『了解です。私たちを追ってるパーティーは特に警戒すべき相手ではないので、ランさんもカケルさんも着いたらすぐに攻撃してください。それを合図に私たちも攻勢にでますので』


ラン『了解です』


カケル『了解』


 そしてRinさん達の元へ向かう。


「ぎゃぁぁぁ!!!」


 私がついたころには既に4人倒してて、あと6人しかいなかった。これ私くる必要なかった気がするんだけど。まぁいいや。適当に倒していこう。

 

 

大会アナウンス『試合終了、結果が確定しました。1位:GirlsAnthem+α、2位:暁 以下はご覧の通りです。』


 そして無事に倒す1位で一回戦を突破した。最後は暁と一騎打ちになったが、私が途中で漁夫したことにより3人しかいなかったため、数の有利を押し付けて倒すことができた。取り巻きは直ぐに倒せたけど、その後が大変で、私とKazuhaの二人だけになるまで粘られた。1vs1で戦ったことあるけど、その時はこんな強くなかったんだよね。なんでこんな1対多の時だけやたらと強くなるのか不思議だ。まぁ、勝ったからいいのだけど。


ピコン『聖妖国君主「アベノセイメイ」により、英雄召喚の儀が実施されました』

ピコン『儀式の内容を確認中・・・問題なし』

ピコン『適合率確認・・・80%。セーフティーモードにて召喚されます。』

ピコン『アステラは申請を受理。これより、聖妖国への転移を開始いたします。』



・・・は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る