2-15:地域予選 ソロの部 第一回戦

【side-ラン】


「はぁぁあああ!!!」


「げっ!HENTAIランキング3位のラン!?」


「なんだそのランキングううう!!!!貴様も死ねぇ!!」


「ぐわぁぁぁぁ!!」


 もしもし私ラン。今は地域予選第一回戦の試合に出てるの。私をHENTAIと呼んだ人を片っ端から滅殺してるところ。ほんとに許さないからなぁぁぁああ!?!?

 ってあれっ?今ので周囲のプレイヤーは狩りつくしてたみたい。よしよし、害悪プレイヤー滅殺完了!!サーチアンドデストロイ!!どんどん殺してくぞー!


 というかなんで普通にソロプレイしてただけなのにHENTAIプレイヤーと呼ばれなきゃいかんのか。私はただリアルモードでプレイしてるだけなのに。ほんと意味わかんない。まぁ、私はカケルさんみたく運営公認じゃないからいいんだけどね。YABAくもないし。・・・私にはそういう称号つかないよね?大丈夫だよね?もし付けたら本社爆破しにいくからなまじで。



大会アナウンス『試合開始から9分が経過しました。戦闘エリアの第三収縮を開始します』


 あら、もう10分経過したんだ。戦闘エリアが徐々に収縮していくから移動しないと。エリア外だと回復できないしスリップダメージが秒間100とかなり痛いしでいいことないからね。とにかく周囲を警戒しながらいこう。特に弓や投げナイフなどMPを消費しないタイプの攻撃にはね。


 カケルさんに魔力感知を教えてもらってからは魔法とかのMPを消費して行う不意打ちには大分強くなったし、敵がどこにいるのかもおおよそわかるようになったのはありがたい。まだまだ精度は低いけど、ざっくりどの方角を注意していればいいのかがわかるだけでも全然違う。もはやバトルロワイヤルだと必須スキルといっても過言じゃないと思う。


「HENっヒデブッタ!?」

 

 移動しつつ見つけた敵をサーチアンドデストロイしてたら残りプレイヤー数が10人になってた。あと収縮は2回残ってるんだけど、練習の時より減るペースが速い。ただ、今はみんな漁夫を警戒してか身を隠していて動く気配がない。


 え?警戒しつつ移動はなんだったのかって?敵を倒せばランキングが上がるんだよ?ならどんどん倒していった方がお得でしょ?ランキングにはあまり影響ないけど最多キル賞っていうのもあるみたいだしね。それも狙えるんだし。


 魔力感知で見た感じ、みんなバラけているのか私の近くには1人しかいなかった。じゃぁ、このまま近い敵から倒していきますか。



大会アナウンス『試合終了、結果が確定しました。1位:ラン、2位:ヘアピン。以下はご覧の通りです。』


 結局残った敵も殲滅して勝利!2回戦進出決定!みんなそこまで強くはなかったけど、2位のヘアピンさんは印象に残ってる。どういう手段を使ったのかはわからないけど、魔力感知に引っかからないように対策をしたうえで、私が戦っているところを漁夫してきた。日本ワールドの多くの人が魔力感知を使用しているのを逆手に取った戦法だ。そして何より、私のことを普通にランさんと呼んでくれたのがホントに嬉しかった。最高。試合終わって直ぐフレンド申請送ったからね。新しいフレンドさんに乾杯!!!



【side-一葉】


「ライトランス」


「あぁ!ありがとうございますありがとうございますぅー!」

  


 そういってまた一人のプレイヤーが脱落していった。・・・いやなにこれ。僕のファンってことはわかるんだよ。でもさ、『ファンです!俺をあなたのキルポにしてくださあああいいいいいいいいい!』っていきなり突っ込んできたらめっちゃ怖いじゃん?もうドン引きだよ。しかもさっきので5人目だからね。似たようなのが他に4人もいたのが驚きだよ。


 そしてみんなそれなりの実力者なのか、彼らと会った周辺エリアには敵が殆どいないんだよね。倒してくださいっていう人は皆ボロボロだしさ。最初の方は普通に戦ってたんだけど、途中からこういうのが沸き始めて、それ以降普通のプレイヤーをあまり見かけない。まじで僕の知らない所で何が起こってるんだ。もしかしてこれが最後まで続くとかないよね?




大会アナウンス『試合終了、結果が確定しました。1位:Kazuha、2位:コップン 以下はご覧の通りです。』



・・・えー、最後まであの調子でした。本当に暇だった。途中に出会った普通の人も「やった!普通の方に会えた!!」とかいっててさ。いや、まじで何が起こってたんだ。怖いよ。僕のファンにそんな過激派いたんだって感じ。それも同じリーグに固まってるとかやばい。最終的に10人もそういうのがいたからね。100人中10人だよ?多すぎでしょ。ホラーだよホラー。みんな僕に倒されるまで生き残ってるってのも更に怖さを増してるよね。あとで配信付けて文句いっておこう。勝ったのは嬉しいけど、勝ち取った感がないというか。消化不良が凄くて。はぁ・・・。



【side-翔】


 アナウンスがされてすぐに戦闘エリアへと転移した。どうやらここは廃都エリアらしい。ボロボロになり壁が所々くずれた家の1階が私の初期地点だ。戦闘エリアは東西南北でそれぞれ特徴があり、東は荒野エリア、西は森林エリア、北は草原エリア、南は廃都エリアとなっている。


 私のいる廃都エリアの特徴はなんといっても建物の数と複雑な地形、隠れるところの多さ、そして建物の脆さだろう。建物の下敷きになって死ぬとか普通にある。それを逆手にとって範囲魔法で建物を破壊してキルを狙う人もいる。それこそ試合開始直後は必ずプレイヤーがいるのでそれを狙う人も多い。


ドドドドンンン


 おっと、早速始まったね。このエリアの初動はこんな感じで建物を破壊してく人が多い。特に狭い場所での戦いを苦手としてるプレイヤーなんかは自分が少しでも有利に戦えるように積極的に建物を壊していく。巻き込まれると面倒なのでさっさと移動しますか。このエリアでの戦闘は危険だしね。目標は西の森林エリア。私が一番慣れてる場所だ。


「ギャァァァ!」


 道中で見かけた敵は移動するついでにキルしていく。こういう複雑な場所なら小回りの利く私は有利だからね。あ、戦う相手は選んでるよ?主に魔力量が多い人を積極的に狙ってる。理由は単純で魔力量が多いということは、近接戦は弱い傾向にあるからね。それと広範囲魔法とか使われると近づくのが大変だから倒せるうちに倒してしまいたいというのもある。


ガキンッ!


「ふっはっはっ!騙されたな!おらぁ!」


「おっと」


 なんだけど、こんな感じで魔力感知を逆手に釣りしてる人もいる。魔力量が多いからといって必ずしも近接戦闘が苦手というわけじゃない。この人みたく魔力強化を使った戦闘スタイルの人もいる。所謂、近接魔力型と呼ばれる戦闘スタイルだ。


「おらおらぁ!」


「ほれっ」


 このまま相手をしてると漁夫される可能性もあるため、目くらましに紫炎で放火。建物は石造りだが、中に置かれてる家具とかは木製だからね。よく燃える。


「なっ!?」


それで気を取られてる隙にとっとと退散。


ドオオオンン!


 退散から少しして、私のいた家が別のプレイヤーによる魔法で崩れていった。やっぱり漁夫を狙ってるプレイヤーもいるようだ。まぁ、家から火がたってたら集まるよね。後ろでは激しい戦闘になってるようだけど、最多キル賞とか特に狙ってないので漁夫とか狙わずに西の森へ移動。



大会アナウンス『試合開始から6分が経過しました。戦闘エリアの第二収縮を開始します』


 森についてからも魔力を頼りに敵を倒してると6分が経過した。残念ながらこの収縮で森林エリアは外れるらしい。次の戦闘エリアは中心から少し東に寄ったエリア。この感じだと最終エリアは荒野になりそうだ。森にいたプレイヤーは2人と少なかったからこのまま楽できるかなと思ってたけどそうはいかないみたい。

 私のことを知ってるプレイヤーは森から逃げていったみたいだしね。大会前の練習期間で暴れすぎたせいで、森=私の縄張り。みたいな認識になってる人が多いようだ。ま、おかげでこうして楽出来てるんだけど。残り人数はまだ70人。結構いるようだ。


 このエリアなら南の廃都を経由して東の荒野に進むのがいいだろう。廃都の建物は大体崩れてるだろうからね。ほどよく遮蔽がありながらも足場は悪くなってるはず。私にとっては森に次いで得意なエリアだ。多分プレイヤーも少ないだろう。森林エリアに続き、廃都でも暴れまわったからね。第三収縮までは暇かな。



大会アナウンス『試合開始から12分が経過しました。戦闘エリアの第四収縮を開始します』



 案の定、廃都のプレイヤーも少なかった。それでも6人くらいはこっちに来てたけどね。戦闘エリア収縮の関係とかで。もちろん全部倒したけど。この分だと北の草原エリアと荒野エリアは激戦だったろうね。そんなに私と戦うのは嫌か。まぁ、接敵するのは損と思われるように意図的に暴れまくってたのもあるけど。そのかいあってか、最終収縮を残して残りプレイヤーは私を含めて6人にまで減ってる。


 この収縮で完全に東に寄って荒野エリアだけになる。荒野エリアはとにかく視界が開けていて遮蔽物が少ないというのが特徴だ。一応ちょっとした林があったり廃家も建ってるだけど、数は少ない。

 第四収縮後のエリア内には木が二本しかなく、他には遮蔽物が一切ない。なので、ギリギリまで粘って戦闘が始まったところを漁夫しにいこうと思ってたんだけど、全員がお見合い状態になってて戦闘が起きそうにない。

 なんなら私の方をちらちら見てる。これはちょっと暴れすぎたかな。私の漁夫を警戒して誰も動けない状態になっちゃってる。特に注意するべきプレイヤーもいなさそうだし、ささっと終わらせてしまおう。


 脚に魔力強化を使って一番近くにいた魔法使いみたいなプレイヤーを襲う。


「くぅっ!」


 直ぐに魔法で迎撃してきたが、回避して爪撃で首を刈り取る。これで残る敵は後4人。


「おらぁ!」


 直後、近くの剣士がその隙にと私に攻撃してきたが、紫炎で迎撃。


「ぐあぁ!」


「ポイズンミスト!!」


 すると別のプレイヤーがポイズンミストを発動させ、戦闘エリアのほとんどが毒霧に包まれる。私にとって一番厄介な魔法だ。効果は毒霧内にいる敵に秒間5のダメージを与える。普通のプレイヤーには大したことはないが、私はHPが40しかないため8秒で死ぬのだ。しかも1メートル以上離れてると私が持つ個性の効果で威力が2倍に。結果スリップダメージが基本秒間10となり4秒で死んでしまう。


 私はその対策として狐火・白を体に纏う。白の効果で魔力を吸収されたポイズンミストは毒の効果を失うようだ。これは大会前に検証済みで、狐火を体に纏えることも確認済みだ。それなりの魔力を必要とするがこれで30秒は活動できる。その間に発動者を倒してしまおう。

 

 脚にかけてる魔力強化を更に強め、ポイズンミストの発動者に一直線に向かう。


「逃がすかぁ!」


「おっと」


 先ほど私が紫炎で迎撃した敵が後ろから襲ってくるが、私の方が速いため攻撃が当たることはない。


ヒュンッ!


「危なっ!?」


 魔法使いの元へと走ってると横から矢が飛んできた。どうやら私を先に倒すことで一致団結してるらしい。残ったみんなが私を優先して倒そうと攻撃してくる。毒霧で視界がそこそこ悪いのだが、みな感知系のスキルを持ってるのか中々に正確な攻撃だ。けどまぁ、間に合わないんだけどね。


「ポイっ、キャッ!?」


 何か魔法を放とうとしていたポイズンミストの発動者の首を刈って倒す。これで数秒後にはポイズンミストの効果が切れる。このゲーム、例えPvPだろうと部位欠損ってちゃんと効果を発揮するようで、首を切断すると一撃で死ぬようだ。これで敵は後3人。あと二人倒せば2回戦進出確定だ。


「おらぁ!」


 少し遅れて私に向かってきた剣士の攻撃をかわし、強化した爪で攻撃して倒す。首は攻撃できなかったが、さっきの紫炎で結構なダメージを受けてたようで2撃で死んだ。残る敵は二人。そのままの流れで弓使いを倒しにいくが、プレートアーマーを装備したプレイヤーが弓使いを倒していた。


 これで2回戦進出は確定。最後のプレートアーマーを装備した敵に、紫炎で攻撃して倒す。プレートアーマーの熱がこもりやすいという特徴がしっかりと再現されてるらしく、火属性の攻撃をすると鎧は壊れないが装備しているプレイヤーは火傷による大ダメージを負うという欠点がある。水属性を付与すれば対策できるのだが、それをしてなかったのか戦闘により耐久が減っていたのかは知らないが、難なく倒すことができた。



大会アナウンス『試合終了、結果が確定しました。1位:カケル、2位:ミンミン 以下はご覧の通りです。』


 ふぅ、無事突破することができた。上位プレイヤーと同じリーグにならなかったのはラッキーだったかな。一旦ログアウトして少し休憩しようっと。

 


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