1-6:種族クエスト
「おはよー、ご飯出来てるよー」
「うん、おはよー」
昨日は一葉の配信を見終わった後、少しだけ一葉と一緒に狩に行って終わった。配信見てたけど、普通に彼女いること公開してたんだね。ああいうのって結構荒れやすいっていうけど、掲示板もコメント欄も全然荒れてなくてビックリ。元々公開してたってのもあるのかな。
一葉と向かい合って席につき、朝食を食べる。
「一葉今日はどうするの?」
「んー、午前中講義あるからそれいって、午後は事務所で案件配信あるから帰ってくるのは17時くらいになる。翔は?」
「私は今日休みだからずっと家にいるよ。多分SLAWOやってる」
「そっかー。そしたら夜一緒にやろー!」
「うん、いいよ。」
「んじゃ、それで。ご馳走様ー」
朝食を食べ終わり、私は後片付けをする。その間に一葉は出かける準備をする。メイクしたり髪セットしたりとあるから結構時間かかるし面倒くさいと本人は言ってる。正直メイクしなくても十分可愛いからする必要ないんじゃないかなと思うけど、メイクしたほうが気分乗るってのはわかるし、そういうことは言わない。私だって面倒くさいけど出かけるときはちゃんとするし。
「んじゃ、行ってくるねー!」
「はーい、いってらっしゃい。」
一葉が家を出て、私一人になる。食料はまだある。課題も終わってる。よし、早速SLAWOを起動しよう。
専用のリクライニングチェアに座り起動する。真っ白い光と共に意識が遠のき、目を覚ませばSLAWOの世界だ。普段あまりゲームをしないから、この感覚は中々慣れない。昨日は宿屋でログアウトしたからそこからのスタートだ。
「さて今日はどうしようかなー。あ、昨日図書館いってなかったし、今日行こうっと」
部屋を出て鍵を返却し、北広場にあるという図書館に向かう。
「おばちゃん、このお菓子頂戴。」
「あいよ、50zね。毎度あり」
道中で綿あめみたいなのを売ってたので買い、食べながら図書館へと向かう。うん、綿あめみたいというかまんま綿あめだ。美味しい。
丁度図書館についたと同時に食べ終わった。
中に入ると紙の独特な香りが広がり、落ち着いた雰囲気が漂っている。これぞ図書館という感じ。利用者は見たところ全然いないみたいだ。
「すいませんー、図書館を利用したいんですけど。」
「来訪者の方ですね。冒険者カードはお持ちですか?」
「はい、あります。」
冒険者カードを受付の人に渡す。
「ありがとうございます。では利用者登録を致しますね。はい、これで完了です。緑色の絨毯が敷かれてるところに置いてある本は貸し出すことが可能ですので、借りたい本がある場合は受付に声をかけてください。それ以外の所の本は貸出できませんのでご容赦ください。では、ごゆっくりどうぞ。」
「ありがとうございます。」
さてと、まずは魔力操作のコツとかないかなぁっと。
おっ、この辺魔法に関する本でまとまってる。えーっと・・・あっ、これとか?んー・・・違うな。おっ、この本とか求めてるものまんまじゃないか。タイトルは『魔力操作のコツ!』。そのまんまだ。
えーっと、結構字汚いな。んーっと・・・、なるほど。最初に魔力器官から漏れ出てる魔力を感じるところから始まると。これは出来てるから問題ない。
次に魔力操作する際は漏れ出てる魔力を直接操作するのではなく、魔力器官から魔力を直接取り出すイメージ。魔力器官の付近を手でぐるぐるとさすると魔力が出てくるので、最初はそれをしながらやるとやり易いらしい。
ふむ・・・試しにやってみるか。手でぐるぐるさすってみて・・・おっ、なんか一杯魔力が出てきた。なるほど、この感じか。これを手を使わずにやってみて・・・。お?おぉ・・・・!出来た!・・・おっと。気を抜くとすぐ霧散しちゃうな。もう一度・・・ぐるぐるぐるるんぐるぐるる・・・
ピコンッ!『魔力操作を習得しました。詳細はヘルプからご確認ください。』
できたー!よし。あとはこれを鍛えていけばいいのか。ちなみにこの本はどこまでやるのかなっと。ふむふむ、『体内で循環させる』『体の一部に纏わせる』『放出する』『物に魔力を流し込む。』『魔力を吸引する』か。
吸引だけめっちゃ難しそうだけどそうでもないのか?いや、やっぱこれだけ難しいみたい。これが出来たら魔力操作の上級者を名乗れるらしい。それ以外は基本とのこと。うん、字は汚いけど、かなりわかりやすく描かれてるし、出来ないときの解決方法も記載されてるのがすごくいい。これは借りてくか。
さて、他も探してみよう。んー、何かあるかなー。おっ、『世界の伝承・口伝・色々!!!』か。面白そう。あっ、こっちには『スキルとは』っていう本もある。この辺は世界観に関する本がまとめられてるのかな?
この二つも読むか。確か窓側に席あったような・・・。あったあった、人も少ないしここで読むか。
まずは『世界の伝承・口伝・色々!!!』から。
・・・へーっ、まず基本的な情報として、この世界の頂点に創造神がいてその下に四人の神様がいると。大地の神『マーテル』、海の神『ネプチューン』、天空の神『カイルス』、冥界の神『プルート』。創造神が表に出てくることは殆どなくて、基本的にはこの四神で管理してるのね。で、ここから鍛冶とか戦とか愛とか色々なところに派生していくのね。
ふむふむ・・・・、ん?外なる種族?来訪者のことかな?
えーっと、この世界とは別の世界の住人が迷い込んだ者が自身の身を守るために産み出した十の生物のこと。ただ、これを産み出した本人は、十体目の生物を産み出した段階で力尽きたそうな。
死因は不明だが、この世界に適応できなかったのではとされ、世界に適応するために自身の配下となる生物を産み出したのではと言われている。
産みの親が死んだあと、彼らはその悲しみから世界中で暴れまわり、十大悪種と恐れられその力は四神に匹敵するほどであったと言われている。
彼らが持つ力は創造神様が産み出したスキルとは別の全く異なる力を使っていたらしい。だが、いつからか彼らを目にする機会が徐々に減っていき、いつの間にか人前に現れることはなくなった。
創造神様が倒したというのが通説で、地域によっては封印されたとか、今も普通に生きているとか色々言われているらしい。
もしかして外なる種族って私の九尾の妖狐がその一つ・・・かも?私が持ってるスキルは何らかの力で封印した後、この世界に適応できるようにスキルを持たせたとかかな?使えないんじゃ意味ないけど。
んー、情報が足りないや。九尾の妖狐の生態もよくわかってないし、もっと調べないとだめだね。
『スキルとは』も読んでみたけど、こっちは特に真新しい情報はなかった。
創造神が産みだしたとか、スキル名を言えば発動出来るとか、習得にはスキルブックを使うか、習得したいスキルに沿った行動を繰り返すことで習得できるとかしか書いてなかった。
まぁいいや。とりあえずこの二つは元の場所に戻して、魔力操作の本は借りてこうか。
読み終わった二冊を元の棚にしまい、戻ろうとしたとき、さっきまでなかったはずの通路が目に入った。その通路だけ本棚が並んでおらず、奥には庭のような空間が見える。
屋内庭園か何かかな?気になったのでその通路を進んでみる。
奥につくと、そこは周囲を森に囲まれた広場になっており、その中心にポツンと1階建ての日本家屋が立っていた。
ふと後ろを向いて来た道を確認すると、そこに通路はなくあるはずの建物も見えず、ただ森が広がってるだけだった。
ふむ・・・何かのイベントだろうか?建物の中に入ってみよう。
「ごめんくださーい。誰かいますかー?」
「ん?はーい!ちょっと待ってねぇ・・・おっとっと・・・こんにちわ。今日はどういったご用件で?」
「いえ、道に迷ってしまいまして。」
「ん?あぁ、なるほどなるほど。力の使い方を知りたいという訳だね。あぁ、これは・・・えーっとどこにあったかな。」
あれ、人の話聞かないタイプ?なんか家の中に入っていったんだけど。
「ふぅ~、あったあった。はいこれ、この本には君の力の使い方が書かれてるから、それ見て頑張って。魔力操作のスキルレベルを3、Lvを10、DEXを20にしたらまたおいで。次の本を渡すよ。それじゃぁね」
「えっ、あのっ。」
ピコン『種族クエスト「封印を解く(1/100)」を受注しました。「九尾の妖狐・入門編」を取得しました。始まりの街・エンジの図書館に戻ります。』
ちょっ、まって情報量が多いって!あっ、めっちゃ聞きたいことがあるのにぃぃぃ!!!
そのまま目の前が真っ白になり、気づけば本を戻した時の棚の前に戻ってきていた。
はぁぁ・・・色々アナウンスあったけどこれは後で確認するとして、まず何しようとしてたんだっけ?えーっと、本を戻して・・・あっ、魔力操作の本を借りようと思ったんだっけ。とりあえず受付の人にお願いして借りてこようか。
「あの、この本を借りたいのですけど。」
「はい、確認いたします。貸出可能ですね。冒険者カードの提出をお願いします。」
冒険者カードを受付に渡す。
「はい、確認いたしました。それとこちらですね。貸出期間は1週間となります。またこちらの貸出用の本につきましては、貸出期間が終了すると同時に消去されるようになっておりますので、返却の必要はございません。」
この辺は現実にも似たようなのがあるね。インターネットでの動画レンタルとか。それを元に作ったっぽい。
本を受け取り、図書館を出る。
あっ、丁度目の前に喫茶店があるじゃん。ここ入ってゆったりしながらクエストの確認しよ。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」
店内はそこまで広くないが、広場側がテラスになっていて解放感があり広々とした印象を受ける。せっかくなのでテラス席に座ることにする。
「メニューはこちらになります。」
「ありがとう、このカンナーティーというのお願いします。」
「かしこまりました。」
何の紅茶かはわからないけど、一番人気と書かれていたので注文する。700zと少しお高めではあるが、その辺はギルドの依頼を受ければすぐに取り戻せるだろう。
頼んだ者が来るまでの間、クエストの確認をしようか。
えーっと、クエストはメニューを開いて・・・あった。
種族クエスト:封印を解く(1/100)
<概要>
九尾の妖狐にかけられた封印を解き、力をつかいこなそう!
<クリア条件>
□Lvが10
□DEXが20
□魔力操作のスキルレベルが3
□「九尾の妖狐・入門編」を読破する。
えーっと、概要雑だけど、ま・・・まぁ力を使えるようになりたいのはその通りなんだけど。ちょっと違うというか・・・いや、封印を解くという意味では同じだけど、普通にスキルを使いたかったんだよね。
これをクリアしていけばスキルを使えるようになるのかな・・・?九尾の妖狐・入門編を読めばその辺りもわかるのかな?読んでみるか
「おまたせしました。こちら、カンナーティーになります。熱いのでお気をつけて。それではごゆっくりどうぞ」
おっ、丁度いいタイミングで来たね。んー、最初はリンゴの香りなんだけど後味はレモンの香りがする不思議な感じ。それでいて香りが強すぎないから飲みやすい。
さて、貰った本を読みますか。
九尾の妖狐・入門編
<概要>
来訪者により産み出された生物。この世界とは別の理により産み出されている。特徴として、常に世界に一体しか存在せず、死ぬと一定の期間を置いてから前世の力を引き継いだ状態で転生する。
元は別世界の生物のため、産み出されてからしばらくはこの世界に適応できず、産まれてから直ぐ死ぬを繰り返していた。
幾度か転生したのちレベル・ステータス・スキルといった概念を作り出したことでこの世界に適応した。そのためレベル・ステータス・スキルの使用が本来のシステムとは少し仕様が異なっている。
レベルは通常より上がりづらく、ステータスの反映度は実数値よりも気持ち少く、スキルの使用には特定の手順を踏む必要がある。
ピコン『九尾の妖狐・入門編 を読破しました。ヘルプに「九尾の妖狐・入門編」が追加されました。』
ピコン『タスク「九尾の妖狐・入門編」を読破する。をクリアしました。』
おっ、なんか通知きた。ふむふむ、タスククリアしたのと、この内容がヘルプに追加されたのね。まぁ、それはいいとして、『この世界とは別の理で生み出された』っていうのはさっき図書館で読んだ『外なる種族』に近いものがあるな。
外なる種族そのものでなくとも、それに近い存在なのかな?それか伝承が事実と異なってるとかかな?
さて、とりあえず調べものはこれで終わりかな。次は南の草原にいってスライム相手に魔力操作の練習してみようか。
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