第15話 クエストってなんですか!?
「これがステータス……もしかして俺のって高い方なんですか?」
期待したまなざしをレインさんに向ける。
基準がわからないから高いかもしれない!
「いや別に全然。まさに平均値って感じだよ~。逆に珍しいよね。普通ならどこかに偏ったりするはずなんだけど……まあ凄いよ!」
「なにが凄いんですかね。結局言いたいのは個性がないってことだよね!?」
「そ、そ、そんなことは……あるかもだけど。でも……だいじょーぶ! なるようになるさ」
「なにその投げやりな感じ。さっきから全くフォローになってないんですけど!?」
あれ……なんでだろう。グサッと胸が刺された感じがする。開けちゃいけない穴があいちゃったような気がする。
どうしてだろう……悲しい……
「ちなみにレベルが上がれば、もっとステータスが上がって行くからなんとかなるよ。頑張りなね」
「……そうなんですか。なら……大丈夫か」
まだ希望はあるらしい。
レベルが上がれば、どんどんとステータスが更新されていくようだ。
「別に問題ないわ、複雑そうな顔しないでよ。見ていると気分が悪くなるでしょ」
「はいはい、ミクはいつも通りだな……」
ミクが話に入ってくる。
相変わらずだな、おい。
「ほら、ミクちゃんなんかは手伝うときに作ったからレベルは確か……2だったかな」
「そうよ。ちょっとだけ手伝いをしていたらいつの間にかレベルが1上がっていたのよ。ステータスはこうなったわ」
俺たちに自分のサーティーを見せて来る。
名前:ミク
ステータス
HP:110
攻撃力:250
防御力:30
回復力:114
魔力:10
魔法力:100
素早さ:230
異様なステータスをしていた。
これが、レインさんの言ってた普通の人の感じなのだろう。
「ふん……どう私、凄いでしょ。褒めてくれてもいいのよ」
「なんかしゃくに触る言い方だな。凄いんだけどね!?」
それにしても素早さ230。そして、攻撃力250! 凄い。圧倒的な差がある。
俺はいつも攻撃力250のパンチを受けていたのか。確かにアイツのパンチ痛いもんな。
まあその分、防御力と魔力が異様に低いのは素早さと攻撃力のためだろう。バランスは一応取れているみたいだ。
「まあまあステータスの見せあいっこはここまでにして。これで冒険者ギルドの登録は完了だよ。今度からクエストを受けられるようになるし、どこかのギルドに入っても名前を言えば、このギルドの人だってわかるから安心だね」
「クエスト……?」
ミクが聞く。
俺はあの本で少しばかり聞いたことがあったが、ほとんどなにも知らないも同然なので、レインさんの説明を聞くことにする。間違いとかがあったりしたら嫌だしな。
「ああ、聞いたことなかったのかな。クエストってのはね、簡単に言えば、冒険者が受けることで報酬とかが貰える依頼のことだよ。この前にミクちゃんに私が依頼してたでしょ。それが町の人とかになっただけの話よ。まあ、君たち2人は新人さんだから白の紋章がついたクエストしか受けれないけどね」
「紋章ってのは位のことかしら」
「そうそう。たくさんのクエストをこなしたり、ギルドに貢献したりすると上がって行くもので位は全部で8個。白、黄色、赤、青、緑、紫、茶、黒の順であるから頑張って黒まで上げてみてね」
「8個も……それ本当に上がるものなんですかね」
「まあ、うちのギルドのラグナロクは紫まで行ってるから頑張れば行けるはずだよ」
「あの人でも紫なんですか!?」
「そうよ。うちのギルドで最高は紫のあの子ともう一人の子だけ。茶以上の位は圧倒的な差があるからね。ちょっとのことじゃ無理なんだよ。実際、茶は世界に30人程度、黒はたったの2人しかいないし」
それしかいないのか。
どんだけ難しいんだよその位は! 今の俺じゃあ絶対にいけない……
「ってことで、入れたことだし、なにかクエストでも選んできなよ。面白そうだとかなんでもいいからさ。何事も行動が大事だからね! レベルも上がるし、報酬も入るし、がっぽがっぽでしょ!」
「はぁ、じゃあ選んできます」
俺たちは少し移動し、『クエストはこちら!』と書かれてある看板の前に行き、掲示板を見る。
掲示板は6種類あり、紋章のマークがどれにもついてある。6種類しかないのはさっきも言っていた通り、茶以上がいないからだろう。
「えっと……白はどれだ……これか」
白の掲示板を見つけ、貼ってある紙を見てみる。
「まず一つ目が……なにこれ猫を探しています。見つけたらビーン硬貨1枚。うーんなし、次だ。これは……荷物を運んで欲しい。報酬はビーン硬貨1枚。……はぁ、なにこれ次。お勉強をうちの子に教えて欲しい。1時間、ビーン硬貨3枚。……うん本当に……」
「……酷いわね」
「それな……」
とりあえず見つけた最初の3つのクエストの中身を見てみた。
どれも中途半端で酷いものばかり。報酬も全然よくなく、最後のなんか難しいはずなのにたったこれだけだ。
ビーン硬貨1枚あれば、パンを一枚買えるくらいなのにこれは……
「あ……でも見て。これちょっと面白そうだわ」
「どれどれ」
ミクが指さしたクエストを見てみる。
「洞窟内にいるゴブリンを3体討伐ごとに……コーン硬貨1枚!? さらに30体以上行けばボーナスでコーン硬貨10枚!? なにこれ凄い!」
えっと……コーン硬貨はビーン硬貨10枚だから30体まで倒せば最低ビーン硬貨200枚!? マジかよ。頑張れば、大金持ちになれるぞこれ!
「なお、早い者勝ちです。らしいわよ。レインの依頼のお金もほとんどなくなっているからちょうどお金が欲しかったところなのよね。さっさとこのクエスト依頼しましょう!」
「ああ、そうだな。依頼しよう!」
うまく行けば、当初の目的である金が大量に入ることになる。
焦りも少なくなるし、このクエストは是非、やってみたい。ていうかやらざるおえないでしょこれ。
すぐさま、俺たちはクエストを申し込もうと、この紙をさっきのレインさんのところに持っていく。
「このクエストをやるのね。へぇ……いきなり討伐系のクエストを受けるんだ。ちょっと危険だよ? 大丈夫?」
「ええ、大丈夫だわ。最悪私が本気出せば、なんとかなるわよ」
「頼もしいね、ミクちゃんは!」
「ふん、当たり前でしょ!」
自信満々な笑みを浮かべる。
攻撃力が俺の倍近くあるからなにも言えない。2倍もあるって結構な差だよな……
「おい、ミクちゃん討伐系のクエスト受けるらしいぜ」
「マジかよ。頑張れよミク」
「安心してここで待ってなさい。私がいっぱいこのナイフで倒してくるわ」
鞄から俺も持っているナイフをとりだしながら言う。
どうやら、周りの冒険者たちも応援してくれているらしい。
「じゃあ、行くわよ、ファクト」
「お、おう」
そして、ギルドを後にした。
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