第九節 悪意の辺境へ
夜は、漆黒の力が増す。それは漆黒を知るもの達にとって、常識だった。
このため、わざわざ守護の陽の光が届かない時刻に、辺境に出向く者は居なかった。
ただ一人、左手が漆黒に染まった、あの青年を除いて。
カイルは、ある時を境に、幼少の時からこの辺境で生きてきた。今の彼にとってこの場所で生きていくことは、それほど難しいことでは無かったのだ。
(・・何をしているーーー?)
先ほどから気付かれないように高い木々の間を飛び、カイルは、その者達の行動を注意深く見ていた。
その2人は、重い甲冑を身につけており、彼は、その甲冑に見覚えがあった。
リオナを送った後にすれ違った、琥珀色の瞳の騎士が身につけていたものと一緒だったのだ。
甲冑を身につけた騎士達は、周囲を見回して誰もいないことを確認すると何かを唱えた。そして、守護の密林から辺境へ、その深い暗闇へと身体を滑り込ませた。
(・・ーーー!?無謀なっ、、!)
カイルはすぐさま木から地面に降り立ち、剣を右手に構えると、騎士達がすり抜けた「すきま」から辺境へと足を踏み入れた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「これこれお前たち、どうした?」
にわかに周囲がざわめき出して、グランマは部屋の中を見回した。
魔獣達が、いつもはウトウトとまどろむ時間帯のはずなのに、それぞれがざわざわと動き出し、中には毛を逆立てて何かを威嚇しているものもいる。
と、密林の奥で何かが光った。
グランマは北の窓から目を凝らして、それを見た。
眩いそれはさらに輝きを増し、天に向かって真っ直ぐその光を放った。まるで、陽の加護を受けるように辺りを照らし出す。
その時、グランマの顔色が変わった。
瞬時のうちに、北の棟が何かで覆われ、外の景色が歪んだ。
「しまった・・!リオナ、、!」
魔獣達の威嚇がますます激しさを増し、牙や爪を剥き出し、その何かを破らんと窓から次々に飛びかかる。
しかし、棟を覆うものはびくともしなかった。
グランマは何かを叫んでいたが、どんな言葉を発しているのかは、外から全く聞こえなくなっていた。
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