クリケットのプロになるっ!?⑧
ピッチ付近に居る選手、審判、そして北ノ内 べいかが何にもアクションを起こすことなく、スタジアムの歓声と間を繋げないといけない英語実況ばかりが流れている。
これは私がクリケットのルールをスマホで検索中のせいだ。アウトカウントに関する基本は抑えていたつもりなんだけど、念願の初アウトの原理がなかなか判明しない。普通に考えたらウィケットにボールが当たっていたとみるべき……でも倒れたようには見えなかったし、そこに審判が介入したのがなんで? って感じなんだよねー。
『えっと……これみんなの中で、どうしてアウトになったのか分かる人いますか? 調べても出てこないんですよね』
————————————————————
縦辺 〈せっかくの初アウトなのにー〉
フラ太郎 〈ウィケットにボールは当たって無さそうだよね。どうしてだろ?〉
スポゲーの鈴ノ木 〈ストライカーにボールが当たってたから、ですかね?〉
スポゲーの鈴ノ木 〈おそらくレッグ・ビフォア・ウィケットといって、ストライカーの身体に当たっていなければウィケットが倒れていたと審判が裁決を下したアウトですね。無意識かと思いますが、ボウラーがアピールしてましたし〉
スポゲーの鈴ノ木 〈なかなかゲームでは発生しにくいシチュエーションのアウトだから、分からなくても無理ないですよ〉
————————————————————
『うんうん……あっ、分かってる人がいますね。調べてくれたのかな? えっと、ボールがストライカーの身体に当たらければウィケットが倒れていたから? なるほど想定の話でアウトになるのか、これは分からないよ。でもなんであれ初アウトっ! やっとですよみんなっ! 嬉しいねー』
かなり遅くなっちゃったけど、ちゃんとアウトを取れた理由が判明したし、嬉しさが
北ノ内 べいかも一層和やかになっている。
自然と私の口角も上がっているんだね。
『よしっ! この調子で相手を抑えて行きますよっ! ただもう30点も取られているから説得力全く無いんですが……精一杯やらせていただきます』
この初アウトの時点で半分くらいの投球数なのかな? となると、私はせめてでも残りの半分の投球で追加失点を30点以内にはしたいなと思う。
しかしバッツマンが変われば攻撃の手が緩くなるはずもなく、そのあとはバウンダリーを越されることは一度もなかったけど、堅実にゴロアンドランで点数を稼がれ、最終的には合計で55点を相手チームに奪われてしまう。結局もう一回アウトを取れなかったしね。
一応は後半を30点以内に抑える目標は達成したけど、やっぱり0対55っていうスコアは堪えるね。これ本当に逆転なんて出来るのって思っちゃうよね。まだ途中とはいえこんな点差になるスポーツって他にほとんどないだろうし、正直不安しかないよ。
『はい……さきほどの投球でラストですね。いやー55点も取られちゃいましたか……厳しいよね、点差もそうだけど精神的にもね。いや寧ろ、55点以上獲得すればいいって明確な指標があって良いのかな? んーどうなんだろ、バッティングがどういうものかによるんだよね〜』
前向きに捉えるなら56点取っちゃえば良いじゃんってなるのかもだけど、なかなかそうはならないね。ピッチングやフィールダーのときと同じくバッティングも未知数。とにかくやってみないと分からないなー。
————————————————————
狐っ子 〈おつかれさまー、後半の攻撃も頑張って!〉
amaama 〈この点差を逆転したらめちゃくちゃ熱い!〉
フラ太郎 〈フォクシーの逆襲だね〉
————————————————————
『はいっ。オフェンスも操作方法からですが、一所懸命にやらせていただきます。そうですね、逆転出来たら熱いんだけどねー。フォクシーの逆襲劇をみんなに視せられたらいいな。後半よろしくお願いしますっ』
攻守交代。自チームであるフォクシーの選手たちはあんまり落ち込んだ様子は無く、まだ勝利を諦めていないのが伝わって来る。
私が点差に怯んでいる場合じゃないなって、言葉なんてなくても思う。
そうだね、まだ完全に勝ちが消えてはいない。まずは操作方法からにはなるんだけど、一点ずつしっかり取り返していこう。
『そろそろ始まりそうですね。いやー打てるかな? どうだろう? もうそこからドキドキだよ』
さっきみたいに投げられないということも考えられるからね。どうしても懸念は少し残るかな。
うん、とにかく水分補給でもしながら一旦落ち着こう。今日は長丁場バージョンのクリケットでお馴染みらしいティータイムを意識して持って来た紅茶を飲む。砂糖もミルクもない、茶葉本来の味と香ばしさがお口いっぱいに広がって存分に堪能する。
スポーツの最中であまり紅茶を飲むイメージって私にはないけど、こうしてまったりと試合風景を観戦するのは悪くないし、どうせならみんなに推奨してみたいくらい合う。なんというか、熱量のある試合を冷静に俯瞰させてくれるような安定感に包まれる。
それはオフェンス側にはどうしても欠落しやすくなる感情。もしかすると本場のクリケットプレイヤーの方々も似たような心境になるのかもしれないね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます