自分という存在

第1話 産まれたということ

「1800」

この数字を見ると、未だにドキっとする。

現在ほど医療も進歩していない頃で、綺麗に洗い流されることもなく、毛布に巻かれタクシーで、産院から紹介された対応できる病院へ父親の手で搬送された。

母親は酷いつわりに苦しんだようで、食事もろくに摂れなかった。

衰弱しながらも7か月くらいのところで、羊水が先に破水し、緊急出産となった。

母親は自分の体に残る力を振り絞って、耐えに耐え、出産した後は疲れてぐったりと、眠りに就いてしまった。

月足らずで1800グラム弱の赤子は産声を力強く上げることもなく、記念病院の保育器の中、細い管で頼りなく生きている状態だった。

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