向日葵の蕾の頃⑫
まだ小学生の頃のある夏の日。
実家にある、自分より背の高い向日葵が太陽を見上げる中で私はうずくまって隠れんぼをしてた。
一人で。
「ねぇ、何してるの?」
そんな私を見つけてくれたのが、葵ちゃん。
「隠れんぼ」
「隠れんぼ?他に誰もいなさそうだけど」
「だって、私だけだもん」
「どういうこと?」
「誰も、私と遊んでくれる子なんていない」
「ふーん、変な子。あなたよね、蓮乃って。私は葵、
「はとこ?」
「まぁ、親戚ってこと」
「しんせき?」
「……うーん」
葵ちゃんはおでこにシワを寄せて難しい顔をする。
「血の繋がりはあるけど、遠い家族、みたいなもの……かしら?」
「ふーん。分かった、ひなぎくさん」
その時の私は全然よく分かんなかったけど、とりあえず分かったフリをした。
めんどくさかったから。
「分かってないでしょ!」
すぐにバレたけど。
それから、と私の鼻に指を突きつけて、
「それに、私のことは葵ちゃんって呼んで!」
「ん、分かった。よろしく、あおいちゃん」
「うん、よろしく。水上(みなかみ)……えーっと、そういえば、あなたの名前は?」
「蓮乃」
「そ、よろしくね、蓮乃」
太陽のように笑う葵ちゃんを私は周りに咲く向日葵のように見上げ返して、眩しくて目を細めた。
クスクスと蓮乃はペンを走らせながら思い出し笑いをしていた。
当時を懐かしむように、楽しそうに、幸せそうに。
見てるこちらもほっこりする。
「それから、葵ちゃんは私の家によく来てくれるようになった」
「幼馴染って感じ?」
「そう」
「いいね。でも――」
一つだけすごく気になってることがあった。
「なんで……一人で隠れんぼ?」
「うーん……誰かに見つけて欲しかったのかも……?」
「そ、そう……」
うーん、蓮乃の感性にまともに付き合ってもしょうがないか。
「うん、だけど、そのころの私は何も分かって――……」
「ん?」
急に表情はいつも通りの真顔になって、声は小さくなった。
「今、なんて言ったの?」
「なんでもない。はい、終わったからもういいよ」
「えー……」
じっとしててちょっと固まった体を解す。
蓮乃はすでに集中モードになったみたいで、さっきまでとは違ってすごい勢いでペンと手を動かしていた。
もうなんて言ってたかは答えてくれそうにない。
「さ~てと」
しょうがない。
ボクも手持ち無沙汰になったし、朗読劇の話でも読んでおこうかな。
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