第22話 なんでぇ~!
家に戻って学園からの呼び出しの件を両親に説明した。
お父様もお母様も大層な剣幕で怒っていた。二人は王宮やゴドウィン侯爵にも報告して上で、正式に抗議すると息巻いている。
それ以上に祖母様がお怒りで、
それを聞いた両親は一気に冷静になり、祖母様の説得を始めたのである。
「母上、お願いですから
「あら、ロンダ家に喧嘩を売ったらどうなるか、王都の住人に教えてあげれば良いではないかしら」
「お義母様、
「いや、学園だけならまだいい。今の
あまりにも両親が
そういえば王都に移動している時に、
あれを王都でやれば王都の半分は消滅するだろうなぁ。
結局、お父様が宰相様に相談して政治的にどう対処するか検討することになり、お母様の交友関係で今回の噂を広めることになった。
そして当面は
私はその対応に大賛成であった。私のことで
まずは自分の実力を付けて、
◇ ◇ ◇ ◇
学園の呼び出しのあった日から数日が過ぎた。
翌日には学園長から謝罪したいと何度も使いが来ていたけど、両親は全て拒否した。
学園の件は国王陛下や宰相様もお怒りになったと聞いたけど、その後どうなったのかは聞いていない。
私は学園の入学式にも参加せず、ひたすら地下の訓練場で
派手な魔法を覚えたい誘惑にかられながらも、テンマ先生の教えに従って火魔術の初級魔法であるファイアボールのレベルをコツコツと上げる努力をしていた。
「やったわ!」
ついにファイアボールのレベルがlv5になり、並列起動が可能となった。同時に二つのファイアボールを使えるようになったのである。
高速思考スキルを取得している私なら、ファイアボールを一秒二発もの高速連射をすることも可能だ。
これほど短期間でlv5にできたのは、過剰にまで増えた魔力量のお陰だろう。昨日は魔力操作のレベルが上がり、ついに詠唱破棄のスキルまで取得できた。
毎日のように成果が出ているので、学園長に対する怒りも薄れてしまいそうだ。
それに学園に通わないほうが、実力が上がる気もしてきた。
それでも同年代の友達が一人もできないのかと思うと少し寂しくなる。
「悪いけど誰か戦闘の訓練に付き合ってもらえるかしら?」
友達を作れない寂しさを紛らわすため、訓練場で研修するロンダの兵士に声をかける。
王都に滞在していた兵士はテンマ式研修の経験がなく、私達と一緒に王都に来た護衛達と実力差が開いていた。でも今はお父様が持ってきた許可証を使ってテンマ式研修を始めることとなり、同じ訓練場で研修していた。
「私がお相手します」
「いや、お前ではお嬢様の相手はまだできない!」
テンマ式研修を始めたばかりの兵士は、日々実力が上がることで、怪我することも恐れずに積極的に訓練に参加している。
でも……、私のほうが強いのよねぇ~。
私との訓練で彼らは成長することができるのでいいけど、私はたいして成長できる気がしない。
それに男性を叩きのめすのが気持ちよくなるのも、問題よねぇ~。
男性兵士を叩きのめせる訓練は気持ちいい。でも女の子としてそこで嬉しそうな表情をしてはダメだと思う。
やはり対等か自分より強い相手と研修はしたい。結局、いつものように王都に一緒に来た護衛の一人と向かい合うのであった。
「お嬢様、お客様が見えたので挨拶に同席するようにと奥様が仰っています。すぐに迎賓館の応接室にお越しください」
えぇ、またぁ~!
これからという時に使用人が声をかけてきた。
最近は訪問客が頻繁に訪問してくる。学園関係者は無視しているけど、お客様によっては私も同席させられることも多い。
特に特別騎士団の団長や副団長が毎日のように交代で騎士団への勧誘に来ている。その場合は私に事だから同席することになるのだ。
今日もそれではないかと思ったのだ。
「もう騎士団関係なら断ってくださいとお母様に伝えて」
「いえ、お客様は王妃陛下でございます!」
な、なんでぇ~! なんで王妃様まで……。
下級貴族の屋敷に王族が訪問するなど聞いたこともない。警備の問題もあるから大貴族でも無ければ王族が訪問するのは難しいのだ。
あっ、エステ!
そういえばゴドウィン侯爵家のご夫人達が毎日のように交代で迎賓館に訪問してくる。ゴドウィン侯爵家は当主も嫡男も多くの側室がいる。夫人と令嬢だけで三桁に近い女性がいるからだ。
エステ用の専用ポーションやテンマ式リンスも数に限りがあり、ロンダでも製造が開始されたけど、まだまだ大量に用意できないし、テンマ先生ほどの品質はまだ作れないのである。
だから限られた相手にしかエステは受けさせていない。
それでも王妃様にまで話が伝わったようね……。
エステの効果は驚くほど女性をきれいにする。テンマ式リンスと一緒に使えば別人のように美しくなる。
すでに王都でも噂になるほどで、貴族家から問い合わせも殺到していた。
王妃様の訪問となれば、挨拶を断るわけにいかない。私は研修をやめて、急いで挨拶に向かうのであった。
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