第十一章 開店

11-1 4度目の出張準備

「ニノマエさん、最近お話しができなくて寂しいのですが…。」


うぉ!のっけからその話題でしょうか…。


「すみません。何故か妻が2人と伴侶が7人もできまして…。」

「ふふ。やはり思った通りの方です。」

「思った通りとは?」

「情に脆く、義に厚いって事ですかね。」

「なんだか、『清水の〇郎長』みたいで、恰好いいんだか古臭いんだか分かりませんね。

 あ、そう言えば、妻たちには神様の事を話しても良いんですか?」

「今はコンタクトはできませんが、私たちの存在を教えても構いませんよ。」

「やはり、会話は難しいんですね。」

「神様という存在は、時には感謝はされますが、ほとんどは残念な存在ですからね。」

「あ、そういう事ですか…。」

「悲しいけど、すべてがうまくいく事なんてありませんから…。

 畏敬の念として捉えられている方が良いのではないかと思いますよ。」

「それと、いろいろとありがとうございました。

 彼女たちに魔法を教えることができました。」

「それは、ニノマエさんが望んだことですので。

 良い方向に進めば良いですね。」

「そうですね。あ、次回に来る時にラウェン様とセネカ様に下着を渡さないとはいけませんね。

 確かラウェン様が白でセネカ様が黒でしたね。」

「覚えていてくれて嬉しいです。忘れ去られたものだと思って寂しかったんですよ。」


 流石にサイズは忘れてしまっているが…。聞くと怒るかなぁ…。


「怒りませんよ。ラウェンは…いくつでしたか?(こりゃ、C85です。)

私はC80です。」

「分かりました。では、5セットくらい持って来ますね。」

「よろしくお願いします。では、次も出張に行っていただけるという事でよいでしょうか。」

「はい。喜んで。」


気づけば、オフィスのドアの前に立っていた。

スーパー下僕さんと同調し、仕事の内容を確認し、自宅に戻った。


今回は金貨ではなく金の塊を売る事にした。

リサイクル屋さんからは、やはり変な目で見られるが、売れるものだから安くても仕方がない。

おそらく正規の取引ではない値段ではあるが、それでも〇百万にもなった。


 買えるモノは買っていく。

もう恥ずかしいとも言ってられないから、問屋街に行ってバイヤーだと言って下着と水着をたくさん買った。

問屋のおばちゃんからは、「どこぞで売るんかいな?」なんて、呑気な事を言われたので、「海外で売るんですよ。」と言ったら、最近では中〇のバイヤーが同じように買っていくんだと言ってた。

でも、メイドinチャ〇ナは今では価格が高く、その代わりにミャ〇マーやパキ〇タンで作られているようだ。タグにもそう表示されている。


なんだか、今まで恥ずかしくて二の足を踏んでいた自分がイヤになったよ…。

やはり、『考えるな、感じろ』だな、と実感した。


コスメ商品は、何が何だか分からないので、ペンギンがトレードマークのドン・〇ホーテでコスメコーナーにあったものを一本ずつ買っていく。

しかし、何故にこんなに口紅の色に種類があるんだ?

それにファンデーションも、何が良いのかも分からないから、美しい女優が宣伝しているポスターで選んだよ。

 それに加え乳液、洗顔等々…、いろんなものがある。


 この世界も、あちらの世界も、俺は何も知らないんだ…。

もっといろいろと視野を広げて学ばなければと痛感した。


 トイレも今は家電量販店で買える。ただ、数が無いから知り合いに頼んだら、マンションでも作るのかと言われたが、公務員の俺がそんな事出来るはずがない…。ゴニョゴニョとごまかしておく。


 あとは、いろいろと考えている事を準備し始める。

やはり二つの世界を行き来するのは精神的にキツい…。

こちらの世界では3週間しか経っていないが、向こうでは3か月…。

時間の調整、というかスピードについていけない。寄る年波には勝てないという事なのだろう。

ただ、心残りもあるので、その部分が上手くいけば…、と思うが、俺の力ではそんな事はできないので、時が来たらラウェン様に頼まなければいけないんだろうと思うが、先ずは準備をしておくことにする。



 とんでもないくらい購入した。

何を買ったのかのかも分からないくらいにだ。

金銭感覚がマヒしているんだろうね。


 仕事はスーパー下僕さんのおかげで何事もなく定時退庁できる。

空いた時間を使って買い物、買い物、買い物…。買い物三昧だった。


・・・


一週間ってホントに短いと感じた。

そして次の土曜日、同じように休日出勤し扉を開け、白い空間に入っていった。


「はい。ニノマエさん。一週間ぶりですね。」

「えぇ。

はい、これはラウェン様用、こちらはセネカ様用です。それと口紅とファンデーションも入っていますので、お使いください。」

「まぁ、ありがとうございます。これでラウェンも喜ぶことでしょう。

 さて、ニノマエさん、今回の出張では何をしてびっくりさせてくれるのでしょうか。」

「そんなに期待しないでくださいね。

 今回は今までに種をまいたモノを育てること、そして刈り取ることでしょうね。

 下着も試作を作りますし、石鹸としゃんぷりんを売り出します。

 そして、クローヌの街を再興し始めるという所でしょうか。

 あ、それと素材集めもしなくてはいけませんし、コカトリスの降りる場所も整備しなくてはいけませんね。」

「いろいろとやる事がたくさんありますが、大丈夫ですか。

 ニノマエさんが居なくなっては困りますよ。」

「そうですね。本当は一人でやれる範疇はとうに超えているんですが…。

でもみんなと一緒に居るとやってしまうんですよね。そのおかげで忘れっぽくなってますが…。」

「うーん…。何とか良い方法があれば良いんですが…。

 そうだ!クローヌの家が出来ましたら、奴隷商を訪ねてください。そこで有能なヒトを発掘できるようにいたしましょう。」

「あ、執事さんですか。そんなヒトがいると助かりますね。

 可能であれば、妻帯者ではなく独り者で、そして最終的には、メイド長さんと結婚という筋書きができるようになると嬉しいですね。」

「ふふ。ニノマエさんはホントにお優しいのですね。

 それと、クローヌのダンジョンで仲間を見つけるようにしましょう。そうすると素材集めも楽になると思いますよ。」

「何から何まですみません。

 それと、まだ先になりますが、俺の相談にも乗ってくださいね。」

「ええ。勿論です。」

「では、行ってきますね。」

「はい。行ってらっしゃい。」



ドアが消え見慣れた寝室に戻って来た。

時計を見ると午前1時。前回と一緒の時間だ。


ラウェン様の像に祈り、2階にいるであろうメリアさん達に会いに行く。


「ただいま。」

「カズさん!(カズ様!)(イチ)(お館様)(主殿)(主様)お帰りなさい!」


皆、笑顔で迎えてくれる。

ここが俺の居場所なんだろう…、何故か涙が溢れてくる。


「どうしましたか?カズ様。」

「いや、嬉しくてね。皆に会えること、何よりも『お帰り』と言ってもらえる事がこんなにも嬉しいと思うなんて…。

俺はこの世界が大好きなんだろう。

 そして君たちの事を愛しているんだと感じるよ。」


皆にキスをする。


「さて、夜も遅いから休もうか?それともみんなにお土産を渡そうか?」

「カズさん、先ずは身体を休めた方が良いと思いますよ。

 お土産は明日、皆が居る時に渡せば、皆喜ぶと思います。」

「しかし、俺が向こうの世界に帰っていることは言わない方が…。」

「カズ様が“渡り人”であることは先刻承知しております。

 渡り人とは、時空を渡るヒトという意味…。皆、納得しますよ。

 それに、皆、紋章が入っていますので、カズ様の秘密を口外することはありませんね。」


ディートリヒが腿に入れたファミリーの紋章を見せる。

あれ?前のTatooは消しちゃったのか…。


「あ、一つだけ皆に見せておくね。これがピアスって言うんだ。」


取り敢えず、左耳だけ向こうで開けて一つ付けておいたものを見せる。


「先ほどから気になってはいましたが、それがピアスというものなのですね。」

「うん、イアリングは動くと取れちゃうでしょ。それが無い分、冒険者でもおしゃれができるんじゃないかと思ってね。」

「カズさん、これは良いです!絶対売れます!

 早速アデリンに頼んで、作らせて売りましょう!」

「そうだね。石鹸としゃんぷりんを先行販売し、ピアス、そして下着と販売していこうか。」

「はい!((((はい))))」


「カズさん、では皆一緒に寝ましょう。」


へ?みんなで?


「大丈夫です。今晩は添い寝ですよ。」


良かった…。流石に6人は…。

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