10-12 魔法談義②
「みんな、できるようになったね。」
「はい(((((はい)))))。」
「それじゃ、次のステップだ。今度は今の石ころを石ころとして認識して飛ばした訳だ。
んじゃ、例えばこの土はどうかな?この土を認識して土を動かすことができるかな?
あ、動かすと言っても前後左右に動かすことではなく、その場所で“”混ぜる“というイメージが持てるかな。」
ベリルとアイナは既にノーオの街で実証済みだ。残る4人はどうか?
お、はやくもミリーが出来始めている。ナズナも出来た。残るのはディートリヒとニコルだ。
「ディートリヒ、ニコル、今どんな事を考えて動かそうとしている?」
「はい、カズ様、土の中にある微量な鉱石を見つけ、それを全体に動くようにしています。」
「私は、一つの石を見つけその石が動くようにしています。」
「うん。それだと鑑定という概念が邪魔しちゃって、マナがたくさん必要になってしまうね。」
「え?(へ?)」
「端的に言えば、ナズナ?土って何だ?」
「お館様、土は土です。ここにあるものすべて土だと認識しています。」
「うん。それが正解なんだ。
ごめんな。なまじ最初に鑑定を教えてしまったから、小さな部分しか見えなくなってしまったね。
土は所詮、土。その中に鉱石とかあるって感じだ。だから、土は土として認識して動かしてごらん。
えと、ベリルはその土を動かす中に火を混ぜるとどうなるかやってみて。」
ディートリヒ、ニコルは素直に俺の事を信じて念じると土がゴニョゴニョと動くようになった。
「できました!」
「うん。良くできたね。偉いよ。さて、ベリル?土に火を混ぜて動かしたら土はどうなった?」
「主殿、土が堅くなったような気がします。」
「うん、正解。土の中にある水分が無くなったり、微量な金属などが熱で反応し、堅くなるんだ。
他方、土の中に風を入れると土が柔らかくなるんだ。これは農地に最適だよね。」
皆がうんうんと頷いている。
「さて、それじゃ、土魔法の極意を教えましょう。」
皆の目が輝いた。
「今、土を動かすことを、俺は“ディグ”と言っている。そして、混ぜおこした土を埋め戻すことを“リフィル”と言っている。
この“ディグ”と“リフィル”の間に、大きな石や鉱石などを見つけて鑑定し、それを取り出して脇に置くという一連の作業ができるようになれば、鑑定も出来るようになるし、その鉱石のみを取り出すことができるようになるんだよ。
これが、俺がダンジョンで採石した方法なんだ。
ここにミスリルのインゴットがあります。
これを俺が今からディグし、土の中に埋めるから、リフィルの際にこのミスリルだけ取り出すことができるようになれば、土魔法の極意を会得したって事になるよ。」
「お館様、土魔法の極意は壁を作ることではないんですか?」
「壁?壁なんて皆もうできるはずだよ。
土を動かせることができるんだから、その土を上に盛るだけだよ。やってみなよ。」
皆が半信半疑でやってみる。
まぁ、どうでしょう…!全員が壁を作ることが出来ているではありませんか。
「へ?出来てます…。」
「そうだね。そして、この壁を堅くすることができれば、王宮などで教えている土魔法の上位になるんじゃないかな?」
「お館様、この壁を強く堅くするにはどうすればいいですか?」
「土をギュッと固める。そうイメージすればできるよ。」
はい。全員出来るようになってますね。
優秀な生徒さんばかりです。それに調子にのってベリルは火を付加してより強固な壁を作った。
「みんな優秀だね。全員が王宮でいうところの上位魔法ができたわけだ。」
「お館様、すみませんでした。
では、極意をしっかりと学びます。」
全員が集中して、練習している。
ナズナとベリルが一歩リードしたかな。続いてアイナ、ミリー、ディートリヒと続いている。
ニコルが少し出遅れているようだが、それでも出来ているね。
「それじゃ、ディグとリフィルをやってみて。そして、リフィルの時には、より土が堅くなるよう、そして凸凹がないようにイメージしてね。」
「ディグ!」「リフィル!」
みんな一生懸命だ。
一生懸命になっている姿が綺麗だ。
「それじゃ、みんな見てごらん。ここが何も土魔法がかかっていない場所。
ここからがみんなが魔法をかけた場所。どう?」
「カズ様、これが私たちが使った魔法ということでしょうか。」
「それ以外には考えられないね。」
「土魔法の極意を会得したということになるのでしょうか。」
「そうとしか言えないんじゃないかな?おめでとう。みんな!」
「やったーーー((((やったー)))))!!!」
皆が喜んでいる。ふふ、良い事だよ。
「カズ様、ありがとうございました。これで私達も土魔法を使えるようになったんですね。」
「そうだね。それに、鑑定もできるようになっているはずだよ。
土を動かせる、石を飛ばせる、そして石だけを抽出して取り出せる。
そして抽出したものを集めることができるようになれば、抽出、集合もできるようになるよ。」
「カズ様、こんな高位な魔法を私達に教えてくださる事は良い事なんですが、極意とも言える魔法を教えてもらって本当によろしいんでしょうか?」
「ん?ダメかな?それにみんな俺の傍にいてくれるんでしょ?
であれば、何度も言うけど、みんなが使えた方が良いんじゃない?」
「お館様は私達を疑うということはしないのですか?」
「何で?」
「お館様の極意を盗んで、そのまま逃げる輩がいるやもしれませんよ。」
「そのためにディートリヒ、ナズナ、ベリル、スピネルが居るんじゃないかな。」
「それ程までに私達を信頼していただけているのですね。」
「そうだけど…。」
「主殿、私は主殿の傍におります…。それくらいしか、この御恩に報いることができません…。」
「そんな難しい事を言わないでね。もっと気楽にみんなで生きていこう。それに、まだまだ魔法はあるからね。」
「カズ様…、あの恋人たちの聖地のような魔法も放つことも出来るんですか?」
「あ、あれは難しいかもしれないね…。ま、次は氷だから、それが分かるようになれば、出来るヒトとできないヒトが分かれるんだろうと思う。」
皆、真剣に聞いている。
「ま、先ずはこの土魔法をみんなで完璧なものにしよう。
全員でシェルフールからクローヌまでの道を整備しよう。」
「はい(((((はい)))))。」
「んじゃ、見ててね。みんなの魔法は、ここまでのレベルまで来てもらうからね!」
俺はマナを10%残すくらいのイメージでここから先の道に一気にやるイメージを持つ。
「よし!ディグ!」
土がウネウネとし始めている。その中から大きな岩が出てきて道端に外されていく。
頃合いを見て、しっかりとイメージする。そう、道の中心部分を少し上げて端の部分を少し下げる。それもわずか1,2㎝の勾配だ。
「よし!リフィル!」
どんどん固まっていき、500mくらい進んだ。
「へ(((((へ)))))。」
(マナが10%を切りました。)
やはりアナウンスが流れた…。流石にこれだけの長さを一気にやるとマナの量がすごいね…。
「これだけやると、流石の俺もマナが切れるギリギリのラインだから。」
「カズ様、ではもう少しマナを使っていただき、マナ中毒となって全員で…、」
「それは、初めてのアイナ、ミリー、ニコルには可哀そうだよ…。」
「そうですね。ではカズ様には馬車の中で休んでいただきましょう。
私共は、ここから先の道をカズ様と同じように魔法で作っていきましょう。」
「あ、それでも良いけど、必ずマナ不足には注意してね。
頭がフラッとしたら、マナがなくなってることだから。」
馬車をゆっくりと走らせながら、皆が土魔法の練習をしていく。
ここで少しでも整備できるようになればクローヌの再興も早くなるんじゃないかな。
そんな事を思いながら、マナが少し再生できたので、御者席に行き、馬車を進めていく。
ん?みんなどんどん早く、そしててきぱきと魔法を放っている。
やはり、ディートリヒが指揮していたか。
彼女は指揮役として完璧な立ち回りだ。
「よーし!みんな、今日はこれくらいにして、クローヌに向かおう!」
「はい(((((はい)))))!」
少し青い顔をしているのがナズナ、アイナ、ミリーだ。
ニコルに御者を任せてこの3人を馬車の中で休ませる。
程なくして、ニコルが通信管で伝えてくれた。
「ニノ様、クローヌに着きますよ。」
前方を見ると、寂れた街が見えてきた。
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