9-18 レルネさんも…ですか?

 ようやく一日が終わった。

結構疲れたね。

風呂に入って考える…。

勿論、アイナ、ミリー、ニコルは倉庫でのお風呂だ。

何故かこっちのお風呂にレルネさんもいるけど、まぁいいか。


「カズ様、明日の朝10時に伯爵の奥方様に馬車の引き渡しを行います。」

「はい。」

「イチよ、もう少し下じゃ。」

「はいはい。」

「その後、昼食をご一緒にと申されておりますが、いかがいたしますか?」

「うん。何か作る?」

「そうですね、何がよいでしょうか?」

「それじゃ、明日は朝から少しリキ入れて作っちゃおうっかな。」

「イチ、何を作るのじゃ?」

「そうだな…、ハンバーガーでも作ろうかな。」

「半バカ?」

「そうハンバーガー。」

「それはどんな料理なんじゃ。」

「パンにハンバーグを挟んで食べるんだよ。」

「カズ様、それは美味しそうですね。」


 俺はレルネさんの髪を洗いながら話をしている。

レルネさんもとろんとしている。


「そう言えば、レルネさんは家に帰っているんですか?」

「ん?あんな“ちまい”家に帰れるわけないじゃろ。」

「え、どこで寝てるんですか?」

「そりゃ、イチの部屋じゃぞ。」

「それ、今晩もですか?」

「そりゃそうじゃぞ。晴れて儂もイチのおなごになれるんじゃ。」

「いえ、そんな事はありませんよ…。」

「イチはほんとに一途じゃの。」

「あの、一途という意味が違うと思います。

 そもそも一途というのは…うんぬんかんぬん…」

「では、ここにいる女性全員が一途なんじゃの。儂も含んでおるの。」


 だから、ロリババァはストライクではないんですよ。


「カズ様、今晩くらいは良いのではないですか?」

「こういうヒトは後から引きずるんです。それに俺は愛したヒトとしかそんな事はしません!」

「仕方ないの。今晩は添い寝で我慢するか…。」

「そうじゃなく、ルカさんのお世話をしてあげてください。」

「ん、ルカか?ルカはあれでしたたかでの。儂がおらん部屋で男でも連れ込んでおるよ。」


うーん…、どうしたらいいんだろうね…。

まぁ、レルネさんも身体はロリだけど、妙齢だし。年齢から言えば”どストライク”だし…。

しかし、エルフってどうよ…。って、ハーフエルフもエルフだよな…。

昔、ラノベで読んだ記憶では、長命たる所以か、そんなに性欲が無いから子供もそんなに作らないって書いてあったような気がする…。


 風呂から上がり、寝室に入る。

後ろからレルネさんがついてくる…。

既定路線なのかね?


「で。イチよ。本当に何もせぬのか?」

「あの…、今、俺4人も居るんですよ。」

「そうじゃな。それにあと3,4人は増えるの。」

「そうなんですよ…、って何で知ってるんですか?」

「そりゃ、見れば分かるぞ。アイナ、ミリー、ニコル、皆イチの事を好いとるの。」

「でも、信じ合えるヒトでないと、俺は無理です。」

「それは“渡り人”ゆえか?」

「それもあります…。

 俺はどうして良いのか分からないんですよ。」

「昔のあやつもそう言っておったの。」

「“渡り人”たる悩みです。これまでの世界とこの世界…、どちらが本当の世界なのか…。」

「どちらも正解なのじゃよ。」

「そうですか?」

「そうじゃ。儂らが生きている世界も現実。イチが住んでいた世界も現実じゃ。

 その現実に裏も表もない。故にイチが思うように世界を満喫するのが良いと思うぞ。」

「そうですね…。」


「で、抱かぬのか?」

「あの…、ホントこの世界は女性が強いんですね。

 そのうち、ほろっといってしまうかもしれませんよ。」

「それでいいのじゃよ。自分の本能のまま生きよ。

 それに、女性がこの世界を回しておる。それが理解できない一部の男が足掻いている。

 それは、イチが生まれ育った世界でも同じ事じゃ。」

「なかなか理解できない世界ですね。」

「そうじゃの。男が強いなんて思わないことじゃ。

 最後には女性の方が強いということを忘れてはいかんぞ。」

「はい。肝に銘じておきます。」

 

「で、抱かぬのか?」

「ですから…。」

「イチよ、良いか。男が誘っておなごがなびかないのは世の常じゃ。

 じゃが、おなごから誘って男が靡かないのは、おなごとして失格したという事なのじゃよ。」

「レルネさんは魅力的ですよ。失格したという事ではないんです。」

「それにな…、ハイエルフという種族は寿命が長いせいか、子を作るという欲望が少なくての。

 でも、今がその欲望の時期なのじゃ。その事を理解してほしいのじゃ。」

「はぁ…。分かりました。

 俺はレルネさんを愛しているというよりも尊敬しています。

そんな尊敬している女性を抱いても許されるんでしょうか。」

「愛にはそれぞれいろいろな意味があるのじゃないのかの。」

「やはり、レルネさんですね。

 尊敬しています。

 そして、愛しています。」

「ようやく言ってくれたの。では、儂を抱いておくれ。」

「はい。」


 レルネさん、ディートリヒ、ナズナ、ベリル、そしてスピネル…。

いろんな愛があり、愛し方がある。

多分、アイナもミリーもニコルも、そしてメリアさんも愛することになると思う。


 愛にはいろんな形があるってレルネさんが言ってくれた。

俺にはその言葉がストンと落ちた。

まさに俺の心の本音を言い当ててる…。



「イチよ、良かったぞ。これが愛するということなのだな。」

「すみません。俺にはこういった愛し方しか知らないいので…。」

「ふふ。だからおなごが集まってくるのじゃな。

 この世では男は強くなければ子孫を残せない、皆そう思っておる。

 じゃが、イチは違うぞ。

 強い中に優しさがある。その優しさの中に弱さも脆さもある。

 その思いがすべて出ておる。それが心地よいのじゃ。

 儂ももっと早うから、イチと出会うべきであったの。」

「レルネさん、まだまだ先は長いですよ。

 俺ももっと長生きして、みんなを笑顔にしたいと思いますからね。」

「ふふ、ハイエルフもイチには形無しじゃの。

 儂もハイエルフだのと言って、高く留まっておるのも疲れたから、これからはイチと同じように、自身の想いをぶつけるとしようかの。」

「それで良いと思います。レルネさん。」

「それじゃ、もう一度抱いてくれるかの?」

「あの…、体力大丈夫ですか?」

「ん?何ともないぞ。

 それにこんなに気持ちが良いモノはない。もっと気持ちよくさせて欲しいのじゃ。」

 

パワフルロリババ…、でもいつの間にか”まごうこと無きボールゾーン”から”大〇ーグボール2号”という魔球でストライクゾーンに入って来た…。



 いつもどおりの朝チュン。

レルネさんが可愛い寝息を立てている。


 なんだか、俺いつの間にか性欲の塊のようになっている?

これが俺の本当の自分なのか?

でも、まぁいい。心にしまい込んだ事と己の欲望に正直に生きてみよう。

その中で皆を笑顔にする。そんなご都合主義でもいいじゃないか…。


 リビングに行くと、ディートリヒが居た。


「おはよ。chu」

「カズ様、おはようございます。」

「ディートリヒ、最近俺の傍にどんどん女性が集まってくるような気がするんだが、何故だろう。」

「それはカズ様のマナが呼び寄せているんではないかと思います。」

「ディートリヒはそれで良いのか?」

「はい。私は今のままで十分満足ですよ。」

「普通、ヒトって独占欲があるよな。」

「そうですね…、独占したくてもカズ様は規格外です。

 どちらかと言えば、私はカズ様を自慢したくてたまりません。そして皆にもカズ様の良さを知ってもらいたいと思っています。」

「なんか、超越しているね。」

「そうですか?

 でも、それくらいカズ様は素晴らしいと思います。」

「良く分からないな…。」

「今はそれで良いと思いますよ。でも、回数が減るのはいけませんね。

 一度、皆を集めて検討しなくては…。」

「死なないように、お願いします…。」


 ディートリヒとそんな会話をしながら、ミンチを作っている。

今度、ラットさんとヤットさんにミンチの機械とパスタマシーンを作ってもらおう。

そうすれば料理の幅も広がるよな。


 ハンバーグよりも薄い肉厚で焼いていく。

その匂いに釣られて、ベリル、スピネル、そしてレルネさんも起きてきた。

アイナ達も起きている頃だろう。


「それじゃ、これを事務所に持って行って、みんなで食べよう。」

「はい((はい))(うぬ)。」


 どんな感想だろうね。

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