9-2 ダンジョン捜索
各階層を猛然と走り抜けていく。
最初の転移石で6階層まで移動し、捜索を開始した。
この階層からの魔物から素材を取りたいのは山々だが、少数のみ会敵しどんどん前に進んでいく。
7階層、8階層異常なし、9階層のモンスターボックスの後の部屋で休息する。
これまで約3時間か…。そろそろ夕刻だ。
明日から本格的な捜索となる。
安全な部屋ではあるが、念のためバリアーを張り、他の者が入らないようにしてテントを出し、宿泊の準備をする。
「何も手がかりなしか…。」
「そうですね。他のパーティーも全く知りませんでしたね。」
「もっと深くに居るのか…。」
「そうですね。特にモンスターボックスなどの部屋には注意が必要ですね。」
「第14階層はオークか昆虫、19階層はコカかアラクネってところか…。」
「主殿そうですが、モンスターボックスは範囲魔法がなければ辛いですよ。」
「だよな。下手したら数百匹が襲ってくるんだもんな…。」
「まぁ、そんな事考え始めたら何もできなけどね。
あ、そう言えばレルネさんが帰ってきててね、この間のエンペラー・サーペントの牙で作った武器を作ってくれたよ。」
俺は、2対のショーテルとダガーを出す。
「このショーテルは、ナズナが持つのが一番かな。」
「お館様、そんな…、こんな凄いものを私に…ですか?」
「だって、使えるヒトはナズナくらいしか居ないからね。」
「そうです。私はもう少し長い剣ですし、ベリルは長刀ですからね。」
「なので、ダガーが8本あるから、他のヒトはこのダガーで。
このダガーを持っているヒトが“繚乱”のメンバーだって事だ。」
「カズ様、それは良い考えですが、残る3本のうち1本はメリアドール様として、残る2本は?」
「あ、考えてなかった…。」
夕食はナズナのリクエストでトンカツ…。
この間食ったような気がするが、まぁ食べたいものがあるってのは良いことだ。
そして就寝…、するはずもなく、4人で大運動会でした。
「カズ様、この簡易トイレというものも良いですね。
これを普及させることはできませんか。」
「うーん。先ず難しいね。
材質がこの世界に無いモノだから、一から作る事になる。
第一、アイテムボックス持ちでなければ運べないよ。
それに、水洗とは言え、汲み取り式になるからね。」
「そうですか…。残念です。」
「そう言えば、街の下水ってどんな仕組みになっているんだろうね。」
「下水管を通って街の外れに貯められています。」
「処理はしないの?」
「一応、スライムのコアなどで中和した上で川に流していると聞いたことがありますね。」
そうなんだ…。
そう言えばスライムってダンジョンでは見ないよな…。
「なぁ、スライムってダンジョンの中で見ないけど何で?」
「え、いますよ。でも外よりも強いので、誰も近寄らないですね。」
「あ、そうなの?俺見た事ないわ。」
「いえ…、私たちが瞬殺していますので…。」
「お、おぅ…、そうなんだ…。」
無双もほどほどにしておかないと、各階層で何が出現するのかは分からない事になるな…。
ただ、スライムの魔石は掃除には欠かせないものだと聞いているけど、どんな効果があるのか、今度聞いてみよう。
翌朝、と言うかダンジョンの中では時計だけが頼りになる。
8時になり、行動を再開する。
10階層のボスを瞬殺。アラクネの糸を大量ゲット。
11階層でオーク肉のストックを増やしつつ、12階層で楮や魔糸を確保しつつ下に降りていく。
14階層に行き、モンスターボックスも見るが居ない。
15階層のボスも瞬殺し、また普通のキャンタマが出る…。ここまで4時間…。
良い調子だ。
昼食をサンドウィッチにし、16階層から始める。
16階層はコカトリス、肉をストックしつつ17階層のアラクネを攻める。
この辺りから冒険者は格段に少なくなっている。
18階層の山岳にもそれらしい者はいない。
そろそろ、望み薄の気持ちの方が強くなってきた。
それでも、奥へと進んでいく。
「さて、第19階層だ。ここのモンスターボックスはコカかアラクネだったよな。」
「その通りです。コカですと概ね50体、アラクネですとその他を入れて200体くらいでしょうか。」
「コカは分かるが、アラクネの場合、捕まったらどうなるんだ?」
「巣に持ち帰られ、麻痺させられた上で卵を産み付けられますね。」
「げ、キモい…。」
どこぞのエイリ〇ンムービーと一緒じゃないか。
「可能性はあるかもしれないって所か?それとも言霊となるか…、だな。」
「アラクネの巣は、なかなか見つかりませんよ。」
「モンスターボックスの近くの部屋から探していく必要があるかもな。」
「アラクネですか…、生理的に受け付けませんね。」
「でも、魔物はダンジョンコアから生まれるんだろ?それなのに何故卵を産むんだ?」
「さぁ、そのあたりの生態系は分かりませんが、本能的なものかもしれませんね。」
流石のディートリヒも嫌悪感満載の顔をしている。
って事は、オークの野郎も冒険者を捕まえたら孕ませるんだろうか…。
「まぁ、念には念をという事だ。」
19階層に行き、モンスターボックスの前に来る。
「ここへの道は3本だが、今来た道には巣は無かった。
という事は残り2本の道に巣があるって事か?」
「そうなると思います。が2手に分かれるのは危険なので、一本ずつ調べるしかありませんね。」
「だよね…。んじゃ、仕方ないから一本ずつ調べますか…。」
ここに来て、時間をロスする。
最後の1本で巣を見つけるが、中には何も無く、ただ大きなアラクネが居るだけだった。
「心配してたことが無くなった反面、もっと心配になってきた…。」
「そうですね…。次は第20階層のボス部屋ですものね…。」
「ボス部屋を越えていることを期待するよ…。」
「今日はここで休憩にしますか?」
「夕刻まであと何時間ある?」
「現在5時ですので1,2時間は動けますね。ボス部屋の向こうまで行きますか?」
「そうだな。ボスはバジリスクだよな…。瞬殺とはいかないが行ってみるか。」
この決断が運命の分かれ道だったことは、後から分かる事である…。
20階層に移動し、ボス部屋までの道を進む。小さなバジリスクは散発的に出没するが、3人の力で瞬殺していく。
ボス部屋に近づくと、不意に嫌な感覚がしてきた。
「ナズナ、ボス部屋とは違うところに、イヤな感じがするんだが。」
「そうですね。ボスではありませんが、何か危険なものを感じますね。」
「そこへ行く必要がある…って事か…。」
「だな…。
しかし、ボス部屋の階層はボス部屋だけあるんじゃないのか?」
「これまではそうでしたが、この階層はどうも違うようですね。」
「前回入った時は一本道だったような記憶があるのだが…」
「お館様、ダンジョンも一つの生き物として動いています。
通路が変わったり、部屋の配置も変わったりすることもあります。」
「へぇ、そうなんだ。でもダンジョンコアが生き物ってのもおかしなもんだな。」
「昔話では、ダンジョンを操る者がいたようです。」
「へぇ~、まさしくラノベの世界だな。」
ダンジョンを初制覇するとダンジョンマスターとなり、ダンジョンを運営する側になるとか、ダンジョンを扱える女性が出てくるとか、いろんな話があったことを思い出した。
「まぁ、ラウェン様が日本びいきだから、有り得るかもしれんが…。」
小声で独り言ちした。
「お館様、この先です。」
俺たちは一つの中部屋の前に居た。
ボス部屋のような重厚な造りではなく、単に木製の両開きの扉がついている。
「バジリスクなら石化に注意してな。」
「はい。石化のブレスが来る前に口を封じます。」
「あまり大きなボムはダメだぞ。俺たちにも影響が出るからな。
もし、ヤバいと俺が判断したら下がってくれ。フリーズで動きを止めるから。」
「はい((はい))。」
「よし、それじゃ行こうか!」
俺たちはバフに包まれ、木製の扉を開けた。
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