7-7 Just the Way You Are.
姉妹丼になるのかは分からないが、俺も初体験だったよ…。
二人とも満足したかのように眠っている。
これからもいろいろとよろしくね。と心でお願いし、デスクに戻る。
書き物をし、そろそろ終わり眠ろうかと思っていた時、ドアがノックされる。
「カズ様、よろしいでしょうか。」
「あ、うん。大丈夫だよ。でも静かにね。ベリルとスピネルが寝てるから。」
「はい。では失礼します。」
ディートリヒは黒のナイトガウンを着ていた。
「一昨日はナズナでしたので、今宵は私が来ました。
カズ様のことですから、まだですよね。」
「そうだけど、彼女たちの事はいいのか?」
「カズ様は、最初に痛いという思いをさせないためにも、今晩はそれ以上されない事を存じ上げております。」
「まったく、ディートリヒには敵わないね。」
「ベッドは使えませんので、ここで愛し合いますか。」
「そうだな。じゃ、お風呂か地下の研究室か。」
「そうですね。お風呂はこれからたくさんできると思いますので、研究室に参りましょう。」
俺たちは地下の研究室に入る。
まだ、調合機材とかもなく、ただ長い設置台やデスクが置いてあるだけだ。
「このようになっているんですね。」
「あぁ、明日からここで石鹸の原料を作ろうと思っている。」
「ふふ。嬉しいです。私たちのような身分が低い者もお風呂に入ることができ、そして石鹸を使える日が来るのですからね。」
「世界を変えていくのは女性だよ。女性が強くなくては、世界は回っていかないんだ。」
「そうですね。では、強い女性の一人として、カズ様が満足していただけるようにいたします。」
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二人一緒に果てました。
「カズ様は、何故そんなにお優しいのですか。」
「何でだろうね…。でも、そうしなくてはいけないと感じるんだ。」
「そうですか。でも、もっと前にカズ様にお会いしたかったです…。」
ディートリヒは泣いている。
確かにそうかもしれない…。俺がもっと前に神様に会い、彼女を戦争に行かせなくしていたら…、
彼女が奴隷となった時、俺が買っていれば…。
すべてたらればだ…。
過去は変えられない。だから、前を向いて生きていく。
「ディートリヒ、前にも言ったけど、過去は変えられない…。
だから、俺と一緒に歩いて行って欲しい、これが今出せる答えだと思う。
この先に何があるのかは分からない…。でも、俺はディートリヒやナズナ、ベリルもスピネルも愛していくよ。」
「はい。分かっております…。
ですが、本当の事を言いますと、私も時より『私だけを愛してほしい』と思う事もあります。
でも、カズ様も同じ悩みをお持ちです。
これはどうしても拭いきれません…。」
「そうだな…。同じ悩みを持つ者同士…。
ディートリヒ、俺はこの世界で初めて愛したヒトが君だ。
どんな過去があっても、それを拭うだけの生活をしていきたいと思っている。
それが結婚という形でなくても、伴侶という形で一緒になれていることを嬉しく思っている。」
「はい…、その優しさが嬉しくもあり、憎くもあります。
ヒトってホントに勝手な生き物ですね。
あの時はもう死にたいと思っていました。そして先月までは私だけを愛してほしいと思っていました。そして今、多くの女性がカズ様を取り巻いております。それでも私だけを見て欲しいと思っている自分がいます。だから、こういった事でしかカズ様を独占できないのです…。
破廉恥だとお思いになられるかもしれませんが、私はカズ様をお慕い申しております。
いつかはカズ様のお子も…。
でも、皆の長として頼られると、どうしても我慢してしまうのです…。」
「ごめんな、ディートリヒ。」
「いえ、こちらこそすみません。
カズ様、一つお願いがあるのですが…。」
「何だい。」
「カズ様が歌われていたあの詩を歌っていただけませんか…。」
「分かったよ。
でもな、あの歌よりも俺はこの歌を君に贈りたいんだ。」
俺は中学生の時、初めて外国語の歌を聴き、鳥肌が立ったくらいに感動した歌、Billy Joelの「Just the Way You Are」を口ずさむ。
「カズ様、その歌はどういった意味でしょうか。」
「大体こんな感じかな。」
俺は意訳しながら歌詞の意味を伝える。
僕を喜ばせようとして、変わろうとしなくていい
これまで君にがっかりした事なんてない
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これ以上、愛することができないくらい、ありのままの君を愛している…
「カズ様は素晴らしいヒトですね…。」
「いや、俺の世界の先人が凄いだけだよ。でも、これが今の俺の気持ちだ。
変わらなくていいんだ。ありのままの君を愛しているんだ。」
「カズ様…、私もです。
こんなに幸せで良いのですか…。
これ以上幸せになっても良いのですか…。
そして、カズ様と“言の葉”を重ねていっても良いのですか…。」
「あぁ、変わらず、ありのままで行こう。
躓いて転ぶ時もある、悩む時もあると思う。
でも、ディートリヒと一緒なら、何も怖くない。
一緒に“言の葉”を重ねていこう。だからそんなに無理しなくてもいいんだ。」
「ありがとうございます。」
俺たちはディートリヒの部屋に戻り、もう一度愛を確かめ合った。
そして“ありのまま”でいることを確かめ合う…。
あるヒトは甘美なものに感じるのかもしれない…、
また、あるヒトには安心できることかもしれない…、
しかし、それは一方的なものではいけない…。
“言の葉”を重ね紡ぐように、愛も重ね紡いでいく…。
ありのままの自分を出し、ありのままの相手を受け入れる。
そして、その先に笑顔がある。
そんな世界にしていきたい。
俺にはまだまだしなくてはいけない事がたくさんある。
ディートリヒやナズナ、ベリルやスピネルと一緒に一つ一つ重ねていこう。
「ディートリヒ。」
「はい、カズ様。」
「愛してる。」
「私もです、カズ様。」
うん。すごく幸せだ。
「では、もう一度愛してくださいますか?」
「はい…。善処します…。」
うん…、感動的なんだけど、やはりディートリヒはディートリヒだ。
俺、おっさんだけど踏ん張るよ!
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