5-21 神様からの啓示
「ニノマエさん…、お久しぶりですね。」
あ、白い世界だ。
「ラウェン様。お久しぶりです。」
「今度は、マナ中毒ですか?」
「いやぁ、良く分からないんですよ。気が付いたらここに居ました。ははは。」
正直、何でここに居るのかが分かっていない。
確か、スーパーヒールをかけながら、マナポーションを飲んでスーパーヒールをかける事を繰り返していたはずだったが、何でここに?
だんだんと思い出してきた。
「そう言えば、“マナ中毒”って何ですか?」
「そうですね。外部からのマナを自分の中にいれると毒に侵されるって事です。」
うん、まんまですね…。
「詳しいことは戻ったら聞くとして…、その中毒のせいでここに居るんですね。」
「そうです。その、何というか、やり過ぎは身体に毒だってことです。」
「はい。すみません…。以後気を付けます。」
「しかし、今回は危なかったんですからね。」
「そうなんですか?」
「身体に取り込んだマナを抜くために、ディートリヒさんと、ナズナさんでしたか?彼女たちが献身的にマナを抜いていたんですよ。」
「マナを抜く?」
「そう。外部にマナを出すために、あなたの中のものを出してたのですから。」
「うえ…、ゲロもおしっこもですか?」
「それもありますが、一番溜まるのは、その…、あの…、あれですから…。」
「あれ…ですか?」
あれと言われてもねぇ…。
「それに、ニノマエさんは齢以上にお盛んなので…。」
「あぁ、あれって、“あれ”ですか…。その…、すみません。彼女たちが愛おしいもので、つい…。
がんばっちゃいました。」
「ふふふ。そこで頑張ると言う言葉を使われるんですね。」
「あ、ほんとだ。」
「でも、あなたはまだ頑張るような齢ではありませんよ。
まだまだ子供も作れるくらいに元気ですからね。」
「まぁ、彼女たちが望めば…、ですけどね。」
「彼女たちも欲しいと思ってはいるようですが、それよりもあなたと一緒に居る時間を大切にしていますからね。」
「そうですか…。それであれば嬉しいですね。しかし50過ぎたおっさんが子供を…。なんかこっ恥ずかしいですけど。」
「それは、あなたの言う“これまでの世界”の概念ですね。この世界ではそんな事はありません。
ただ、彼女たちが子供を産みたいと思った時にお手伝いできるようにはしておきますね。」
「それはありがとうございます。自分ももう一度子育てに真正面からぶつかっていきたいですから。」
「そうですね。それも良いかもしれません。
さて、今回はひとつお願いがあるんです。」
「何ですか?」
「この旅行が終わり街に戻った後、あなたは複数の女性に出会います。
このヒトたちは、あなたのこれからの運命を変えていくヒトです。
そのヒトたちを救い、愛していただきたいのです。」
「ん?おっしゃる意味が良く分かりませんが…。
おそらく助けることであれば、魔法やお金で解決はできると思います。
しかし、愛することは義務感で行うものでは無く、自分とディートリヒやナズナのように、お互いを信じた結果、愛が生まれるものだと思っています。」
「はい。なので、ゆっくりと信頼関係を築いていき、愛していただきたいと願います。」
「それについては、ディートリヒとナズナにしっかりと“ヒトとなり”を見てもらうようにしますね。」
「ふふふ。本当に仲が良いんですね。」
「はい。例え彼女たちに殺されたとしても笑顔で死ねると思います。」
「それは怖い話ですが、そこまで信じておられるんですね。」
「自分はこれまでの世界で何度か信じてみようとしましたが、どうしても裏切りが怖くてできませんでした。なので、この世界では自分が全力で信じていこうって決めています。
彼女たちを信じた結果、自分が笑っていられればそれで良いんです。」
「ニノマエさんは、この世界が好きですか?」
「はい。大好きです。そして皆の笑顔が大好きですよ。」
「ふふふ。本当に面白い方ですね。
そうそう、お会いできた記念に創造魔法についてヒントを差し上げますね。
ニノマエさんも理解されているように、創造魔法はイメージです。
イメージは無限に広がります。そのイメージを共有することで、今そばにいるあのお二人をもっと幸せにすることができますよ。」
「ん?それはテレパシーとかで共有することができると言うことでしょうか。」
「ふふふ。それはニノマエさんご自身で確かめてくださいね。
そろそろ、ディートリヒさんのこの郷にいるエルフに対する怒りが爆発寸前ですから、取りなしてあげてくださいね。」
「はい。あ、それとラウェン様、いつもいつもありがとうございます。
今度、こちらに持ってこれるものがあれば持ってきますが何が良いですか?」
「そうですね。では、お好み焼きが良いです。あれは美味しそうですから。」
「ははは。ではこの世界で作ったものをお持ちしますね。勿論ソースもつけて。」
「お願いしますね。」
「はい。では帰りますね。」
「いってらっしゃい。」
・
・
・
白い世界から抜け、見知らぬ天井を眺めている。
まだ、五感がはっきりとしない。もう少し感覚が戻らないと身体を起こすことも無理かな…。
ようやく耳が慣れてきた。
近くで誰かがすごい剣幕でまくしたてている。これはディートリヒか…。
相手は誰だろう…、このしゃべり方はレルヌさんかな…、あと二人いるけど…。
「・・・で、これ以上カズ様を何かに利用されること無きよう、お願いしたいという趣旨がお分かりになりませんか。」
「石化を治療していただいたことはありがたいのですが、そもそもコカトリスが居ること自体問題であり、その根本を何とかしないといけないんです。」
「それをお館様にやっていただくというのは、いささか勝手が良すぎるのではないですか?」
「それは分かっているのじゃが、この地で生きている以上、何らかの手を打つべきであろう。」
「ですから、それを何故カズ様がやらなければいけないかという事です。」
うん。何となく話が理解できた。
近くに住み始めたコカトリスが居るから、この郷のヒトは安心して暮らしていけない。だから、俺に討伐をお願いしたい。ってな事だろうね。
そりゃ、討伐することは簡単だよ。でも、討伐だけじゃ同じ問題が起きるんだよね。
その事を分かっていれば、何か策があると思うんだけどなぁ…。
あ、そう言えばラウェン様は、イメージは無限、共有できるって言ってたなぁ。
相手が受け入れてくれれば共有ができるというものか…。ナズナが近くにいる感覚があったので試しに送ってみるかな。
『ナズナ…、聞こえるか?』
「え、は、はい?」
あ、ナズナがびっくり通り越して“狐につままれている”。ってナズナ、妖狐じゃん。
狐が狐に化かされててどうするんだ…。
まぁ、親父ギャグ的なセンスは置いておいて…。
『今、俺はきみの頭の中に話しかけている。聞こえたなら俺が寝ている傍に来てほしい。』
あ、ナズナさん…、全力疾走でベッドに近づきながら、聞こえてる感をアピールするためにヘッドバンギングし始めたよ。
お、今のは送れないな。
そうすると、声を送ることと俺が今思っていることを区分して送ることもできるんだ。凄い機能だ。
『すまないが、まだナズナからの声が聞こえないので、俺から少しだけ話しておく。
あの熱くなったディートリヒと、レルネ様、そして長にも伝えてほしい。
今の俺の状態では話すこともままならないからな…。
あと、俺が倒れてからどれくらい経過したのかも教えて欲しい。』
俺は、その後要点を絞りながらナズナに今後の話をしていく。
勿論、ナズナの考えとしてだ。
さて、ナズナが説明している間に、ディートリヒの頭の中にも会話を送ろう。
「ひとつ、よろしいでしょうか。
お館様が倒れられて既に半日、お館様の治癒魔法により、全員の回復が見込まれています。」
「それは分かっておる。」
「回復ができたとしても、今後の事を憂いておられますが、今回コカトリスを討伐できたとしても、次なる魔獣の住処となれば同じ問題は再発すると考えられます。その部分をどうお考えかをお聞きします。」
俺がぶっ倒れてから半日ってことは今は次の日の午前って事か。
ナズナ、ちゃんと説明できているね。よしよし。
んじゃ、ディートリヒに念話してみるとしようか。
『ディートリヒ、聞こえるか?』
「ひゃ、ひゃい!!」
大きな音を立て何かが地面に落ちる音が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます