4-26 依頼は順調…
今回デビュー戦となるナズナに1階層から5階層までのマップを渡し、索敵兼ガイド役についてもらうことにした。
1階層は前回と変わっていない。若干魔物が増えたかな程度。ディートリヒ一人で対応は可能だった。
2階層、3階層もほぼ同じだった。
これじゃ、まったく意味がないと思いながらも、俺も索敵をしてみる。
すると、結構魔物は徘徊している。
ナズナは最短ルートを通りつつ、会敵しないよう魔物を避けて通るようにしているようだ。
「ナズナ、君は優秀だな。」
「え、ご主人様、何を仰っているんですか?」
「ナズナの索敵能力が凄いって事だよ。
第3階層も結構魔物が沸いているだろ。でもナズナは魔物に極力会わず、しかも最短ルートで次の階層まで行こうとしてるね。」
「あ、はい…。それが一番効率的だと思いましたので。」
「ありがとね。それともう一つ、そういったナズナの考えをこれからは口に出して言ってほしい。」
「それは何故ですか。」
「これだけ魔物が居るのに、索敵が使えないディートリヒから見れば、『魔物は居ない』と勘違いしてしまうだろ。そうすると心に隙が生まれるんだ。
隙が生まれると、それだけ準備にかける時間がかかってしまうんだ。」
「はい。分かりました。では、次の階層から状況と進む道をお伝えすることにいたします。」
「うん。お願いするね。」
第4階層に行き、ナズナは索敵にかかった魔物と行くべきルートについて話してくれた。
勿論、その方向性で構わない。彼女はガイドとして助けてくれる。それでいいんだ。
「ご主人様、次の第5階層ですがボス部屋直行でよろしいですか。それとも何処かの部屋に寄っていきますか?」
「うん。直行しよう。魔物はゴブリンロードだよね。なら、魔銃で一掃しようか。」
ナズナは首をかしげている。
あ、俺ダンジョンに入ってから魔法ばかり撃ってて、魔銃使ってなかったな…と反省した。
こっちのほうが効率的じゃん…、やっぱおっさんになるといかんな。より簡易な方法で対処しようとする。まぁ、あれくらいのスペースであれば25%で大丈夫か…。
ボス部屋までの道すがら、魔銃を見せ説明する。
「魔銃ってのはこれだ。」
俺は腰につけていた銃を見せる。
ナズナさん、目を丸くしている。
まぁ、そうだような。こんな武具見たことないから…。
「次のボス部屋ではこれを撃つ。撃った後は衝撃波…、あ、強い風が来るから物陰に隠れているといいよ。衝撃波がなくなって残った魔物を倒す。ってな作戦でいくね。」
「は、はい。『しょうげきは』が何者なのかは分かりませんが、とにかく風をよけた後に敵を倒すということで。」
「はい。んじゃ、入ろうか。ディートリヒもいけるか!」
「いけます!」
俺たちはボス部屋に入った。
前回と同じく、緑の奴だ。
戦闘が始まる。
「撃つ!」
一声かけた後、前方に向け魔銃を放った。
パシュッ
軽い音を立てマナ弾が前方で弾けた。
直後、衝撃波を受ける。
何とか踏ん張り、第二波の戦闘と思いきや、またまたディートリヒが半分行ったところで立ち止まっている。
「カズ様…やり過ぎです。」
前方を見ると、魔物はおらずドロップ品だけが落ちていた…。
「ごめん、なかなか丁度よい割合が分かんないんだよ。次は20%にするから。」
「まぁ、ボス部屋もこれだけ簡単に行ければ問題はありませんね。」
ディートリヒは納得するも、納得できないのがナズナだ。
「ご、ご主人さま…、今のは…。」
目を見開き唖然としている。
「あ、これが魔銃ね。マナの力を貯めておいてマナを撃ち出すって感じかな。」
「そのような得物、見たのは初めてです…。」
「うん。これは前の“渡り人”が使っていた武具を真似て作ったって代物だからね。
それよりも、ナズナ出番だよ。ボス部屋には宝箱が出るよ。宝箱を開けてくれないか。」
呆けていたナズナは気を戻し、宝箱へと進む。
勿論、俺が鑑定しても罠は無いから問題はない。
「罠はありません。」
「んじゃ、開けてみて。」
お!魔石(火)だ。嬉しい。これと魔石(水)があればお湯が出せるのではないか。
そんな事を思いながら、次の階層へと進む前に遅い昼食を取ることにする。
今回は琥珀亭から“お好み焼き”を10枚作ってもらったので、それを食べることにした。
“お好み焼き”を半分に折り、それをホットドックのように端から食べる。
うん。人気店第3位のソースは間違いない!
ディートリヒとナズナが置いてあるお好み焼きを見ている。
「見てなくて、食べればいいよ。と言っても腹八分目でね。」
「はい!(はい)」
元気でよろしい!
俺は6階層からの攻略をまとめていく。
ナズナは索敵と罠、ルート解除となるガイドで問題ない。ディートリヒもこれまで通り、あとは効率良く素材を取り、13階層までに到達か…。
途中で一回野営が必要だけど、どこかに休む場所はあるのか?
「ディートリヒ、ダンジョン内の各階層で安全な場所はどれくらいある?」
「モグモグ…ゴクン。はい、階層ごとに言えば各階層の入り口となるスペースです。
あとは特別にボス部屋とモンスターボックスの前後の部屋となりますね。」
「そうすると、俺たちが安心して休憩できる場所はどこになる?」
「ボス部屋は皆が通るので避けたいところです。故にモンスターボックスの後の部屋でしたら一方通行ですので、比較的安全に休憩できると思います。」
「そうか、んじゃ、夕食兼野営は第9階層という事になるけど、皆大丈夫か?」
「では、第6階層にて牛肉を50㎏分…そうですね、約40匹くらい倒せば依頼のいくつかは完了できます。
その後、7階層は山岳地帯で採れるのは岩塩と石灰でしたか?なのでスルーと。」
「ごめん。第7階層の石灰は少しだけ採取させて欲しい。」
「分かりました。では500㎏くらい採取して9階層の昆虫部屋の後で野営といたしましょう。
でも、カズ様、9階層のモンスターボックスでは、この間の“プチ・インドラ”と魔銃の力は極力抑えてください。そうでないと我々の修練にもなりませんので。」
「はい…。善処します。」
それから、俺たちは6階層のブルを俺35、ディーさん13、ナズナ2の計50匹を倒し、肉をゲットした。中には霜降り肉もあったので、今晩の夕食としてそれをステーキで食べることにする。
7階層の昆虫ワールドは、向かってくる魔物だけを倒し安全ルートで移動。
8階層では石灰石は比較的容易な場所にあったので、そこで500㎏採取し、今晩野営する9階層のモンスターボックス部屋の前に到達した。
「ディートリヒ、作戦はどうする?」
「では、僭越ながら…、
先ず、カズ様の魔銃を使っていただきますが、先ほどの半分の力で放ってください。おそらく半分程度は生き残ると思いますので、それを討伐いたします。
カズ様の魔銃発射後、私は剣撃を使い、カズ様は光輪で遠距離から残った敵の外側から切り崩します。ナズナさんは隠密を使い、敵の背後に回ってください。数が少なくなってきた頃合いを見てナズナさんは魔物のリーダー、今回はアラクネだと思いますが、それの首を切り落とす。後は残った魔物を適当に討伐していく。というのではいかがでしょうか。」
「分かったよ。要は外側から攻め、中央を落とすようにすればいいんだな。」
「そうです。そうすれば私もナズナさんも鍛錬が可能かと思います。」
「じゃぁ、それで行こうか。ナズナも行けるか。」
「はい。大丈夫だと思います。」
俺たちは、少し休憩した後、モンスターボックスに挑むこととした。
この時、俺が話した『余裕』が大惨事を招いてしまった事を誰一人想定してはいなかった…。
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