1-3 実践と検証
過去を懐かしむだけではいけないので、試しに神様からもらった特典を試してみることにした。
さて、魔法といっても頭の固いおっさんだから、何でもかんでもとはいかず、すぐに思い浮かぶことはない。
固定観念に捉われ、閉鎖的な社会の中で生きてきた人は、自身が考え得る枠の中だけで物事を動かそうとする。
しかし、俺の固定観念は固まっておらず、遠い昔、ヒーローごっこをしていた記憶や、子どもと一緒に読んでいたラノベ、厨二病とでも言う妄想など、今日日の50代よりも少しは柔軟ではないかと思う。
先ずは、火。
あ、あかん。ここで火の魔法とやらを発動させると森林火災が発生する。
森林火災は怖いし、環境破壊は避けたい。俺は、自然をこよなく愛するおっさんだ。
まぁ、チャッ〇マンはさっき出せたから問題ないな。
次に水。
イメージは、ウルト〇マンの「ウルト〇水流」。指先から水を出し怪獣を溶かす。
あの回の怪獣は、宇宙飛行士が怪獣になってしまったという話だったと思う。それをウルト〇マンが彼を倒してしまった事が、子ども心ながらに憤りを感じた。
「どっこいしょういち…」
と掛け声をかけて立ち上がり、指の先から水が出るイメージで念じると、ちょろちょろと水が出てきた。
これは宴会芸の水芸に使える!と思うも、もっと強い水圧をイメージする。
思い浮かんだのはドイツ製の「ケ〇ヒャー」。
指先からバシューとすごい勢いで水が飛んでいく。まぁ、成功だ。
次は、同じくウルト〇マンから、お馴染みの「八つ〇き光輪」。
光輪というだけに光が円形で出るのかと思うが、「考えるより、感じろ!」だ。
円盤状の光がグルグル回るイメージ、グルグル回るためには光の一方向に風を当て飛ばす、いわゆるフ〇スビーを投げるイメージだ。
ウルト〇マンばりに、掌から円盤が出るイメージ、光を回し飛ばす、結構複雑だが、イメージが重要。
これらをイメージしながら念じると…、まぁ、なんという事でしょう!
出たよ。「八つ〇き光輪」が。
それを飛ばすと、20mくらい飛んで消えた。これも成功っと。
徐々に楽しくなり、調子に乗って来た。
お次は、ウルト〇セブンから「アイ〇ラッガー」。
当時、角というか頭についているモヒカン型のモノを投げて相手を切り刻む映像を観て驚愕した。
だって、人間でいう髪の毛が塊になって相手を切り刻むんだ…。なんて固い髪の毛なんだと子どもながら思ったよ。
まぁ、スキンヘッドとなってしまった俺には到底不可能であるが…。
しかし、日本には古来から“かまいたち”といった話もある。
かまいたちは、つむじ風に乗って人の皮膚を切るといった現象で、イタチが鎌を持って切っているという話や、“構え太刀”が由来になっているとの話もあるが、定かではない。
そこで、空気中に真空状態を作り、その真空状態の部分を移動させる…、そんなイメージで切れないか試してみる事とする。
真空を作り、そのエリアを移動させる(投げる)というイメージで念じる。
…効果が分からない。そりゃそうだ。対象物に向けて投げてないから切れたか否かは分からん。
もう一度、草むらに向け、草を刈るよう、地面すれすれに真空ができるようイメージし念じる。
お!草が刈れたよ。それに結構遠くまで刈れる。これは農作業に良いな。
お次は、スペ〇ウム光線だ!
両手を十字に組み、そこから光が出て、相手を倒す技だ。
両手から光が出るイメージで念じる
・
・
・
なんか、おかしい…
光は出る。それも塊として…。でも、線状に出すことができない。
そうだった。ウルト〇マンの光線は怪獣が爆発するまで光線を出しているんだが、光線が止まる映像が無いんだ。つまり、ウルト〇マンはどうやって光線を終わらせるのか分からず、いつも光線を出し続けるイメージしかない。終わりがイメージできなければ線は出ない。
それに、光線系は、途中からカラフルになったけど、4代までは白か黄色の一色だった。
すみません…。調子こいてました。
イメージが無くても無理だし、イメージがあり過ぎてもだめで、具体的にイメージしないと魔法は発生しない。という事だ。
イメージさえ浮かべば良いと分かれば、後は何でもできる。
俺は、持参したビジネスバッグに入っている空間を広げることに挑戦する。
バッグの中身は、おおよそ3間×3間(5.4m×5.4m)の18畳、高さも3間の立方体(キューブ)をイメージ。重さは1,000kgくらい、空間が広がるイメージと入れた物質がそのままの状態となることを念じる。
うぉ、なんか疲れというか倦怠感がドッときたが、バッグの中身が広がったよ。
この疲れってのが、マナを消費するって事か、と思いながら差し当たって、そこらに落ちている枝や小石をバッグに収納できるか試してみる。
小枝に手を置き、バッグに収納と念じると、スッと消える。
バッグの中身を確認すると、ちゃんと表形式に入っている項目と数量、重量がイメージできた。
おぉ、結構使いやすい。
当然、四方が5.4mなので、それ以上の長さは入らない。
後は…なんだろう…、具体的にイメージできない。
なかなか柔軟な考えなんて即興ではできないな、なんて思いつつ、「よっこいしょ」と掛け声をかけて、もう一度腰を下ろす。
やはり、掛け声をかけながら立ったり座ったりしなければ腰に悪いのだ。
俺は19歳の頃から腰痛持ちだ。かれこれ30年以上、腰痛と付き合っている。
腰は、身体の要と書くように、ぎっくり腰でもやろうものなら、たちまち動けなくなってしまう。
腰痛持ちの人はホント毎日苦労していると思うよ。
ん?待てよ。
この腰痛もイメージすれば治るのか?と思い始める。
そりゃ、試してみますよ。
ぎっくり腰なんてのは、朝靴下履いている時、歯磨きをしている時、はたまたくしゃみをした時など、いつ何時起きるか分からない。それに、なってしまえば、少し動いただけでもビリっと電気が走ったような痛みが来るんだが、どのタイミングでやって来るのか分からないから、一つ一つの動きがスローモーションになる。
そんな日々から卒業できるかもしれない。「この世界(腰痛のある世界)からの卒業」だ!
俺は、昔、椎間板ヘルニアになった際に見せてもらったレントゲン写真を思い出し、歪んでしまった腰骨がまっすぐになるようイメージし、「よっこいしょ」に変わる掛け声を発する。
「スーパーヒール!」
何となくではあるが、いつも腰にある違和感が無くなったような気がする。
効いたか効かなかったかは、未検証ではあるが、まぁ、ぎっくり腰になった時にもう一度かけてみようと思い、一応成功としておく。
一連の試行錯誤を終え、何となくコツをつかむことができた。
特に魔法は具体的なイメージが大切だという事。イメージさえつかめば何とかモノになるもんだ。
我ながら優秀だ!なんて悦に浸り、休憩をすべく焚火の傍の朽ちた幹に座る。
「よっこいしょ」
あ、“パブロフの犬”状態で言ってしまった。
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