第38話 罪滅ぼし

「早く医者を……!」


 国王の指示で医者を待つ間、私とクラウスでシャーロット様の容態を確認しようとした。


「シャーロット様、何を飲まれたのですか? 私の声が聞こえますか?」


 私が近づいて声をかけると、シャーロット様は私の顔を引き寄せた。


「リディア様……。あなたに謝ることは出来ないわ。許してもらおうなんて思っていませんから。でも、もう私たちのことは、この国のことは、忘れてください。そして幸せに……」


 耳元で弱々しく囁くシャーロット様の声は、途中で途切れてしまった。


「シャーロット様!」


「リディア、落ち着いて。どうやら毒ではなさそうだ。身体に異変は見当たらない。深い睡眠状態に近い」


 私が茫然としている間に、クラウスが冷静にシャーロット様の容態を診てくれた。身体に異変がないと聞いて、強張っていた力が少し抜けた。


 まもなく到着した医師が容態を診たところ、クラウスと同意見のようだった。


「飲んだ液体が何かは分かりませんが、シャーロット様はとても深く眠っておられるようです。液体の解析を進めますが、おそらく自然と起きるまで待つしかないでしょう」




 

 それからシャーロット様は医務室へと運ばれていった。


(あのような液体を携帯していたなんて……)


 何も言えずにただ立っていると、国王が口を開いた。


「リディア・クローバー、クラウス・エルナンデス、二人には見苦しい所を見せてしまったな。シャーロットのことは、あまり気にしなくとも良い。彼女が自白したのは間違いないのだから、リディア・クローバーの冤罪は晴れた」


 自分の娘が罪を自白して倒れたにもかかわらず、他国の人間の前では冷静に対応する姿は、流石は国の長だ。


「……シャーロット様のご回復をお祈り申し上げます。私の無実は証明されたということですが、何点か確認したいことがございます。私の両親の件と、聖女になった経緯についてです」


「シャーロットが語ったことが真実だ。……まずはルーファスのことを話さねばならんな。奴は昔、そなたに会ったことがあるのだ。私が奴の異常な執着心に気がついたのは、そなたの両親が亡くなった後だったが……」


 国王の口から語られた真実は、おぞましいものだった。


(本当にルーファス様が私の両親を殺したのね。そして私は聖女にさせられた……)


 国王の淡々とした語り口による説明は、先ほどシャーロット様から発せられた言葉が真実だったという実感をもたらした。


「……さて、私が知る事実は以上だが、どうするかね? ルーファスと話をするか? このまま会わずとも、そなたがルーファスを罪に問いたいのならば、そうしよう」


 ルーファス様には会わないほうが良い。暗に国王はそう言っていた。確かにこれ以上の真実は出てこないだろう。会えばシャーロット様の時と同様、私が傷つくだけかもしれない。


「リディア、彼に会う必要はないよ。彼がしたことは明らかになったし、これ以上無理をしなくたって良い」


 クラウスも心配そうに私を見ている。でも……。


「いいえ、会わせてください。彼には言いたいことがありますので。ただし……」


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