【完結】乙女ゲームの悪役令嬢に異世界転生って……、私、ただのギャルなんですけど!このゲームの事、全く知らないんですけどー!? ~正義の悪役令嬢、世界を救う~

白刀妃

第1章「悪役令嬢ロザリアのお家立て直し」

第1話 「悪役令嬢ロザリア・ローゼンフェルドの目覚め」

そんなに悪い人生ではない、と自分では思ってた、わりと胸をはって楽しく生きてきた、と思うんだよね。


幼い頃両親を事故で無くしたウチは施設に預けられたんだけど、たまたまなのか、その施設が変わっていたのか、

良く言えば放任主義的な所だったので、暖かく伸び伸びと育ててもらって、

ちょっと…いや割とギャルっぽく育ってしまったけど、いわゆる不良ではなかったと思うよ? いやわりとガチのガチで。


ウチ自身も、施設の職員の人のお手伝いのつもりで、小さい子の面倒をわりとよく見ていたので、

まだ18才なのに子供達に囲まれて「のばらママー」とか呼ばれてしまってたり、

日曜朝の子供番組で子供達といっしょになって歓声を上げたり、その勢いのまま子供達の正義の味方ごっこにつきあったりしてた。

その子供番組の影響か割と正義感あふれる感じに育ち、「弱きを助け、正義を守る為には力が必要!」とばかりに、

合気道を習っていたのはまぁゴアイキョー? ってやつだ。ゴアイキョーってどういう意味なんだろ? まず漢字で絶対書けないしさー、ウケる。

さて、まだ若いはずのウチが、何故こんなつらつらと人生を振り返っているか、というと、


ウチは今まさにトラックにかれそうになっているのだ。


下校時にトラックの前に飛び出した子どもを目撃してしまい、鍛え続けた身体と反射神経が良い仕事をして、その子を突き飛ばした結果である。


ブレーキ音の後に衝撃を感じたウチは、気づいたら固い地面の上に横たわって、いた、痛みは感じない、が、体から血が、抜けて、いってるのか、どんどん、体が冷たく、寒くなって、いく。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」と謝る子の声が、遠くに、聞こえる、『ああ、助かったんだ、良かった』と安心した瞬間、

ウチの意識は、闇の中に落ちていった。



「な、何なの!? 今の記憶……」


ロザリアは豪奢ごうしゃな寝台で目覚めた瞬間、天蓋てんがいを見上げながら、頭の奥底から沸き上がった全く身に覚えの無い記憶に困惑していた。


あまりに生々しいので夢とも思えず、何故そのような記憶を思い出したのか、考えても答えは出ない。

強いてあげるなら先程階段から転落した時の感覚が「トラック」なる巨大な金属の馬無し馬車に与えられた衝撃と、程度は違えど似ていたせいだろうか。


ゆっくりと寝台から体を起こす、が、目覚めたばかりでまだ軽く痛む頭と体のためか、意識がはっきりしていない、痛みを振り払うかのように頭を軽く振って考えてみる。


『私は……ロザリア・ローゼンフェルド、15歳の侯爵令嬢……。いや違うって、ウチの名前は木下のばら、18歳のジョシコーセー……? えっと……え? 誰? のばら? 女子高校?』


と思ったその瞬間、『別の人生の記憶』が怒涛どとうのようにロザリアに押し寄せてきた、そして今の自分の人生の記憶と思い比べた結果、徐々に状況を理解し始める。


どうやら私は異世界転生というものを果たしていたらしい、とロザリアが思い至った時、「お嬢様!」と部屋に控えていた侍女が悲鳴のような声をかけてきた。


見ると自分より年下っぽい少女が、表情の乏しい顔で呆然と立っていた。

やや濃い肌でブルネットの短い髪、侍女のお仕着せを着たその子はロザリアの目から見ても可愛らしい子だった。


『うわちっちゃ! おまけにガチのメイド服着てるのマジ良き! ヤバ❤ ガチのマジでバチクソ可愛い❤』

などとどうでもいい事をロザリアが思っていると、


「お目覚めになられたのですね! ああ、良かった……本当に申しわけありません! 私の為に、このような事になってしまって!」


突然その少女が駆け寄ってきて、枕元にすがりつき泣き出すその言葉で、

ロザリアはつい先ほど自分が目の前の少女、自分付き侍女のアデルを助けようとしたのを思い出した。

アデルが多すぎる荷物を持ったまま階段を降りようとしていて、足元が見えておらず転落しそうになっていたのを見かけ、助けようと突き飛ばして自分が転落したのだった。


そっと自分の体を確認してみるが、転落した階段や転げ落ちた先の床は絨毯じゅうたんが厚く敷き詰められていたのと、自分の身体は上質なドレスやコルセットやらで守られていたためかほぼ無傷だった。

着ていたドレスは脱がされ身軽な部屋着に着替えさせられていたので、むしろ体の締付けもなく楽なぐらいだった。打った所が青くなっている様子も無いのを確認し、ほっと一息つく。


「いいのよアデル、あなたが無事で良かったわ。私は大丈夫、頭を打ったわけではないもの」

「お嬢様……? 本当にごめんな、さい、申し訳ありません」


ロザリアはアデルが何度も繰り返す、涙と感謝にまみれた言葉の既視感に、頭をそっとでて慰めながらふと前世の方の記憶を思い出し、


『あーウチって、生まれ変わっても前世とおんなじ事をやらかしたのかー、そういえば施設のあの子達も、大きな子はこれくらいの年齢だった、なんだか前世でもこんな事してたなぁ、ウケる』

『あの事故からもう15年かー、みんな大人になってるんだろうな。あ、むしろウチは15才に戻ってるから……? 置いていかれたー!ぴえん』

『まーもう今は異世界にいるっぽいしー? 前世のウチも多分あの事故で死んじゃったんだよね……? よし考えても仕方無いな!』


つらつらと現状に対して色々思うが、結局、前世のそういう所は割り切りの良い性格で納得するのであった。


『小くて、かわかわ❤ な子が好きなのは前世と変わんないし! この人生もこういう小さな子に優しくして――――ええ!?』


いなかった事を思い出し、ロザリアは愕然がくぜんとした。


次回 第2話「今までマジごめぇぇぇぇん!!」

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