第48話

 迎えに行く時間になり、カトレアさんの家に向かう。

 少し離れているだけなのに、カトレアさんの家に向かう森は、少し雪が多かった。


 カトレアさんの家に着くとノックをする。


「はーい」


 ドアの先から、カトレアさんの声が聞こえる。

 どうやら近くに居たようだ。

 

 ドアが開き、カトレアさんが顔を出す。


「いらっしゃい。迎えに来てくれての?」

「うん」

「そう。では行きましょ」


 雪道で少し歩きにくそうなカトレアさんを支えながら、お店へと向かった。

 

 お店に着くとカトレアさんが立ち止まり「先に入りなさい」


「うん、分かった」


 言われたとおり、先に店に入ると突然、

 パンッ! パンッ! パンッ! と、クラッカーの音が鳴り響いた。


 ナザリーさんにアカネちゃん。

 それにゲイルさんまでいる。


「お誕生日おめでとう」

 

 ニコニコしながら、ナザリーさんがお祝いしてくれる。


「ミントさん、おめでとうございます」

「おめでとう」


 続いてアカネちゃんとゲイルさんが、お祝いしてくれた。


 後ろからカトレアさんが「おめでとう」

 と、言ってくれた。


「みんな、ありがとう!」


 見ると売り場の真ん中にテーブルと椅子が用意されており、その上に豪華な料理が置いてあった。


 ど真ん中にはフルーツケーキが置いてある。

 どれもこれも美味しそうだ。

 アカネちゃんが近寄ってくる。


「ミントさん、これ受け取ってください」

 と、アカネちゃんが紙の袋に入った何かを差し出した。


「何かな?」


 早速、袋を開けると、そこには薄い水色のマフラーが入っていた。


「この料理と、そのマフラー。皆で出し合って用意したのよ」

「わーい。みんな、ありがとうございます」

 

 みんなニコニコと笑顔で返事をする。

 私は汚れるといけないので、綺麗に畳んで袋に戻した。


「さぁ、食べましょ」

 と、ナザリーさんが言うと、みんなは席に着いた。


 私もカウンターにマフラーを置くと、椅子に座った。


「アカネちゃん、悪いけどお皿を回してくれる」

「はい」

 

 アカネチャンは可愛く返事をすると、目の前に積み重ねてあった陶器の皿を次々と回していった。

 私も受け取り、カトレアさんに渡す。


「ありがとう」

「どう致しまして」

 

 皆にお皿が行き渡ると、ナザリーさんが「大丈夫そうね」


「頂きます」

 

 唐揚げに、ポテトサラダ。

 コーンスープに、ミートパスタ。

 さて、どれから食べようかな。


 とりあえず唐揚げをお皿に取り、一口食べる。

 うん、美味しい!


「これ、ナザリーさんが作ったの?」

「うぅん。カトレアさんが作ってくれたのを保存していたのよ」


「そうなんだ。カトレアさん、美味しいよ」

「それは良かったわ」


「ミントちゃん、お酒飲む?」

 と、ナザリーさんがワインボトルを片手に言った。

 

「ん……やめておく」


「そう、ゲイルさんはいります?」

「すまない、頂く」


「アカネちゃん、注いであげて」

「はい」

 

 ワインボトルがナザリーさんからアカネちゃんに渡り、アカネちゃんがゲイルさんのコップに注いであげている。

 なんだか家族みたいで微笑ましかった。

 

 ゲイルさんはワインを一口飲みコップを置くと、

「すまないな。俺はただ店に寄っただけなのに」

 

「別に気にすることないわよ。ねぇ? ミントちゃん」

 と、ナザリーさんはポテトサラダを皿に移しながら言った。

 

「はい。ゲイルさんにも、お世話になっているので」

「そう言ってもらえると有難い。ところで噂の彼氏は来ないのか?」


「噂の彼氏? 誰、彼氏だなんて言ったの?」

 と、三人の顔を見る。


「私じゃないです」

 と、最初にアカネちゃんが答える。


「私でも無いわ」

 と、カトレアさんも首を振る。


 ナザリーさんと目が合うが、すぐに視線をそらされた。

 犯人みつけた。


「ナザリーさん!」

「てへへ」


「てへへじゃないですよ。まったく」

「何だ、彼氏では無かったのか」


「はい。アラン君ですが、順調にいけば、間に合うかもと言っていましたが、この様子だと来ないかもしれませんね」


「そうか、残念だな」


 私はミートパスタを皿によそいながら、「そうですね。でも仕方ないです」

 

「みんな。美味しいから、沢山食べてしまいそうだけど、ケーキがあるから、お腹少し空けておいてね」

「はーい」

 

 数十分後、それぞれが食べ終えたころ、ナザリーさんがケーキを均等に切ってくれ、お皿に乗せてくれた。


 アカネちゃんは、それを回収し、それぞれに配ってくれた。

 

 私の元にケーキが届き、フォークを手にする。

 サクッとして、柔らかいケーキにフォークを入れ、口元に運ぶ。

 

 パクッ!

 フルーツのほのかな酸味と、生クリームの甘味がマッチして、何個でもいけそうだ。

 

 幸せに浸りながらも次のことを考える。

 これを食べ終えたら、言わなきゃ。

 皆の様子を見ながら、ケーキを食べる早さを調整した。


 最後にカトレアさんが食べ終え、フォークを置く。

 私も最後の一口を口にした。

 口の中が無くなると、ゴクッと唾を飲み込む。


「みんな、聞いてもらいたいことがあるの」

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