第14話
次の日の朝。
朝食を食べ終え、外に出る。
畑仕事した後だと忘れそうだから、早めに複製しておくか。
キュイン──ポポポンッ!
薬草を8個つくる。
この感じ!
キュイン──ポンッ!
追加でもう一個出来上がった。
私はレベルが上がった!
テレレッテテー
でも不思議ね
熟練するほど、レベルアップまでのスパンが短くなるかと思ったら、逆に長くなるのね。
なかなか複製できる量は増やせないって事か。
さて、収納箱にしまうか。
収納箱の場所に行って、鍵をあけ、1個以外すべてを入れる。
次は畑仕事ね。
農具小屋に向かうと、クワを取り出し、畑に向かう。
畑に着くと、昨日の続きを始めた。
その日の昼過ぎ。
畑を耕すのが終わり、休憩して水を飲んでいると、アラン君が現れた。
手には、なにか袋のようなものを持っている。
成功したのかしら?
「ミント、見てくれよ。成功したぞ」
と、アラン君が屈託のない笑顔で言って、魔物の毒袋を突き出してきた。
「ちょっとー、危ないから突き出さないでくれる?」
「あぁ、悪い」
と、アラン君は言って、引っ込めた。
「成功して良かったね。これで、もっと良い毒消し薬ができる」
「あぁ」
「それ、クレマチスの町の薬剤研究室に届けてくれない? もう帰るんでしょ?」
「あぁ、分かった」
「ちょっと待ってて。お金」
ポケットの中から10Pを取り出し「はい」
と、渡した。
「あ、そうだ。明日は予定ある?」
「予定? 魔物退治以外、特にないけど」
「じゃあ、私と一緒にデートしましょうよ」
「は!?」
「そんなにきつく、言わなくてもいいじゃない」
「いや、驚いて」
「そう? 明後日、カトレアさんの誕生日じゃない。だから何かあげたくて」
「だから俺に付き合えと?」
「そう!」
「俺が居たって、役に立たないぞ?」
「それでもいいの! 買い物一人でしていても、寂しいもの」
「まぁ……いいけどよ」
「やったー、ありがとう」
アラン君の右手を両手でギュッと握る。
「あ……」
「どうした?」
「砂が付いちゃった」
「あぁ、砂ぐらい良いよ」
「そこに水道あるよ?」
「――いや、こうすりゃ大丈夫だ」
と、アラン君は手で砂を払った。
「明日の待ち合わせはクレマチスの町でいいよね?」
「魔物退治した後に、ここに来るから、ここでいいじゃないか?」
「えー……」
「えーって何だよ」
「だって、汚れてるじゃない」
「――わかった、そんな顔するなよ。じゃあ、早めに魔物退治を切り上げて、ここに迎えに来て、それから町に行って、一旦、俺は風呂入って着替えるから、公園で待っていてくれるか?」
「えへへ、ありがとう」
「まったく、面倒くさいな」
「そう言わないの! ねぇ、せっかくだから、お昼も一緒に食べない?」
「じゃあ、10時ぐらいに、ここを出るようにするか」
「うん、そうだね」
「じゃあ俺、毒袋を届けて、そのまま帰るから」
「分かった」
私はアラン君を見送ると、畑仕事を再開した。
その日の夜。
今日の整理をする。
手持ちの薬草【37個】
手持ちのお金【528P】
依頼の期限【6日】
デートか……ふざけていったけど、なんて恥ずかしいこと言ったんだろ私。
やばい、今日、眠れるかしら?
次の日の朝。
9時40分。少し早めに外に出る。
早すぎたかしら?
アラン君が来ないか、裏の森を見据える。
あ、きたきた。
「あれ? もう10時か?」
「いえ、私が少し早すぎたの」
「そうか」
私は財布から10P取り出すと、アラン君に差し出し、
「これ、忘れないうちに渡しておく」
「あー、今日の分は大して仕事していないから、半分でいいよ」
「そう? じゃあ5P」
「確かに」
と、アラン君は言って、サイドポケットに入れ、
「あぁ、そうそう。薬草くれないか?」
「いいわよ」
キュイン──ポポポンッ!
薬草を9個つくり、5個渡す。
「ありがとう」
「うん。残りの薬草、収納箱に入れてくるね。そうしたら、出かけましょ」
「あぁ」
薬草を収納箱に入れると、アラン君の所に行き、肩を並べて歩き出す。
ガサゴソ……。
茂みの中から、何かが動く音がする。
アラン君が警戒して、鞘か剣を抜く。
「慌てなくていいから、様子を見ながら下がってくれ」
「うん」
言われたとおり、後ろに少しずつ下がる。
太めの木の枝を持ったゴブリンが一匹、茂みの中から出てくる。
その後ろからもう一匹……。
さらに後ろから一匹現れる。
三匹も、どうしよう……。
ゴブリン達は、前を塞ぐかのように横に並び、様子をみている。
「大丈夫、心配するな」
と、アラン君は言って、すばやく駆けていき、ゴブリン達との距離を縮める。
一匹のゴブリンはそのまま、2匹のゴブリンは、
アラン君の横から攻めようと二手に分かれる。
アラン君は何やら呟いている。
呪文?
二手に分かれたゴブリンが、それぞれアラン君を襲おうとしたその時――。
アラン君の右手から炎の塊が出来上がり「フレイム!」
右から左へ払うように放たれる!
ドラゴンのブレスのような広範囲の炎が、2匹に直撃する。
2匹は地面に倒れこみ、ジタバタ動いている。
残りは一匹。
アラン君が先手をきって、飛びかかる。
だが、ゴブリンは後ろにヒラリと、かわした。
ゴブリンが木の枝を振り上げ、攻撃してくる。
アラン君は透かさず木の盾でガードをした。
盾でゴブリンの手を払いのけ、上から下に切り返す。
さらにもう一撃、今度は下から上に斬りつける。
鮮血が吹き出し、倒れこむ。
ゴブリン達はピクリとも動かなくなった。
アラン君は剣を鞘に入れると、こちらへ振り向き「行こう」
「うん」
一人一人分程度の距離があき、歩きだす。
「強くなったね。旅立つ日も近いんじゃない?」
「そうだな」
それはそれで、寂しいな……。
アラン君が、私が立ち止まったのに気付き、
後ろを振り向くと、「どうしたんだ? 立ち止まって」
「うぅん、何でもない」
私はそう言って、駆け寄った。
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