どうやら俺は遊ばれたらしい。
「ちょちょ、ちょっと!?いきなりどうしたの!?」
みるくが俺の声に反応して驚きの声を出した。
日曜の夜なのに幸い、待合室に人は居なかったため致命傷は避けられた。
しかし、
何か、この状況を回避する方法は無いのか。
そんな事を考えている隙にみるくにスマホをの画面をみられてしまった。
「ねえ、何か告白されてるじゃん」
「うっ……」
「そうだよね、あんな反応するって事は大体こういう事しかないもんね。ハハハ……」
みるくは口では笑っているが目が完全に笑っていない。
みるくはぶつぶつと何かを言い始めたが既読をつけてしまった以上、心々音に返事はしないといけない。
俺は告白してきた理由を聞くため「どういう風の吹き回しだ?」と心々音にメッセージを送った。
すると秒もせずに返信が返って来た。
「流石に騙されないか、つまんないのー」
やっぱり嘘コクだったか。
驚きはしたものの、俺は薄々感づいていた。
まず、企業に属して配信活動を行っている人間がそんな簡単に企業を裏切って恋人を作ろうとしないだろう。
それにみるくに彼氏疑惑が出た時もかなりイメージが下がっていた、彼氏バレしなければ特に問題は無いが、いつかは絶対バレるものだ。
そんな事も考えずに告白するほど心々音もバカではないと思う。
「なんでこんな事したんだよ」
「うーん、詳しい事は明日話そうではないか」
「なんでだよ」
「そうした方がみるくちゃんが私達の輪の中に入れるじゃないか」
「どうしてそうなる」
「多分話すとしたら、亮くんかあかねちゃんのどちらかは話に参加してくるだろう?」
「ああ」
「それで、私が昨日二人と会った事を話しのネタにする。そしたらみるくちゃんも話に参加できるではないか」
みるくをグループに入れてくれようとしてくれるのは十分にありがたいと思った。
だが、話の論点がズレている。
「それはありがたい。だけど、今はなぜ俺に嘘コクをしたのかを聞いているんだ」
「ああ、そっちね。ごめんごめん」
「付き合ってほしいのはほんとの事」
「分かってるぞそのパターン、用事に付き合ってって言うんだろ?」
「ご名答!涼真くんは物分かりが早いね!」
まぁ、そうだよな。
自分で言うのも
ほんの少しだけ期待していた俺がバカだった。
「その用事の件も明日の放課後、詳しく話すから空けといてね」とメッセージが飛んできたので、俺は「了解!」と書かれた看板を持ったクマのスタンプを送った。
スマホをポケットにしまおうと思ったが、スマホが震えたので確認してみると心々音から「みるくちゃんもちゃんと連れて来てね」と追加のメッセージが来ていた。
既読をつけた俺は今度こそスマホをポケットにしまった。
そして目の前の壁をどうやって破壊しようか考えた。
みるくの目は完全に光を失っていて時間が経つごとにどんどん暗さが増していっている。
それに「もう私は捨てられたんだ……もう私は頼れないんだ……」という事をブツブツと何回も言っている。
「おーい、みるくさーん?」
呼びかけてみるが反応は無い、肩を揺らしてみてもただ念仏のように「私はもう見捨てられたんだ……」と唱えるだけだった。
どうしようと考えていると電車が来たというアナウンスが流れたので、急いで二人分の切符を購入しみるくの手を取り無理矢理電車に乗車した。
「おーい、みるくさーん。あれ告白じゃないから、私のお話聞いてもらえますー?」
みるくは一瞬だけぴくっと反応したが、またブツブツと呪文を唱えてしまった。
仕方がないと思い、スマホを取り出した俺はみるくに心々音との会話をみるくの視界に強引に入れた。
すると、みるくの口から放たれていた呪文は止み、みるくの目がキョロキョロと動き始めた。
どうやら会話に目を通しているようでだんだんと光も戻って来た。
「なんだ、よかった。りょーく……涼真ってほんと紛らわしい事しかしないよね」
「今回、俺は悪くないだろ」
「涼真が悪い、あんな反応されたら普通気になって覗き見しちゃうじゃん!」
「……悪かったよ」
「てかなんで、心々音ちゃんの告白が嘘の告白だって分かったの?」
「ん?理由は簡単だ。それはお前と同じ企業に属するVtuberだからだ」
「あ、言われてみれば確かに。うちの企業、恋愛は絶対ってわけじゃないけどかなり厳しいからね」
「そうなのか、じゃあ俺とみるくは特例なんだな」
「え?」
みるくは口を開け、ポカンとした表情をした。
普通に考えれば、幼馴染だから――という理由で男女がペアになって配信することがほぼ不可能だろう。
どんなに幼馴染なだけで付き合っていません!と言い張っても良いと思わない人間は少なからずいるはずだ。
俺とみるくの掛け合い方が面白い、尊いと思われてペアで配信していくことが視聴者に許されたのなら何も問題はないだろう。
しかし、俺は配信に乱入してしまったただの一般人。
今後の事はどうなるか分からないが、運営にかかっているとしか言いようがない。
正直、俺がstaraliveに所属してこれから一緒に配信していきます!ってのが俺が考える中での最善策だが俺は運営と連絡を取る
ここは運営がどういう手段にでるのかを待ってから行動を移した方が良い。
「まあ、とにかく大丈夫だ。きっと運営さんがなんとかしてくれる」
「そっか……あ、そういえば言い忘れてたんだけど、さっきご飯食べてる時に運営さんから連絡が来てさ、これ見て」
みるくはそう言うと俺にスマホを渡して来た。
画面には運営とのやりとりが表示されていて、肝心の内容については謹慎期間とその後の対応についてだった。
まず初めに謹慎期間は4日間、理由としてはこれから一緒に配信をしていく上で互いにどういう事をするかなどの確認をするためだという。
謹慎の意味を知っているのか不安になったが、運営からの指示ならば従うしかない。
次に俺の事について、運営からはこのままstaraliveにコネ所属になってしまうが入ってくれると今後動きやすいと連絡が来ていた。
凄い迷ったが、これはコネでも良いから所属した方が良いと思ったのでこれに関しては運営側の意見に賛成することにした。
最後に今後についてだが、今後の展開としては謹慎明け初日は二人で今後の説明を行った後雑談かゲーム配信をしてほしいとの事、そして二日目は個人個人で配信するようにと連絡が来ていた。
運営の対応に凄い不安を感じたが、みるくはあまり心配していないようだった。
「おい、みるく」
「ん、何?」
「運営はいつもこんな感じなのか……?」
「え、うーん。私、今回が初めての炎上だったからいまいち分からないけど、運営さんはそのキャラクターにあった復帰のさせ方をしてるんだと思う」
「復帰のさせ方……?」
「前にstaraliveの男性ライバーさんが炎上した時は【これが俺のやり方だ!】とかめちゃくちゃな事言わさせて復帰させてたよ?」
どんな事をしでかしたか分からないが、その行動はもう火に油を注ぐのと一緒ではないのか?
「まあ普通そんな事したら炎上が収まるどころかもっと燃え広がっちゃうと思うんだけど、その人って結構なんでもズカズカ言う人だったからキャラとセリフが異様にマッチしちゃって、なぜか普通に復帰できてたんだよね」
「な、なるほど……?」
そんなんで許されるほど、Vtuberの視聴者は甘いのか?
いやいや、絶対にそんなことは無い。
そんな事今考えても、実際どうなるのかは当日まで分からない。
とりあえず今日は色んな事がありすぎて凄い疲れたな。
「まあ、大体は分かった。とりあえず、俺が運営に所属する
「じゃ、じゃあ……」
「一緒に配信、頑張ろうな」
「……うん!涼真、好き!」
どうしてそこで好きになるのかは分からなかったが、とりあえず一安心と言ったところだろうか。
次の配信は4日後、それまでは体を休めたりするためにいつも通り過ごすことにしよう。
「次は西北野~、西北野~」
駅に着くアナウンスが流れたので俺は立ち上がり、降り口付近まで行った。
やがて電車が停止し、電車から降りるとみるくが袖を引っ張って来た。
「暗いから、送ってって?」
「ああ、分かった」と了承し、みるくの家まで行きみるくを見送った。
「じゃあ、明日迎えにくるから。今日は風呂入って寝ろ」
「うん、じゃあね!また明日!」
「ああ、また明日」
みるくが家に入ったのを確認して俺も家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます