第23話 弟 3

弟は私と同じ学校に通う事になった。


ぼっちゃん学校と呼ばれていた程である為、


バス停にいたら、よくからかう奴らもいた。


ある日、いつも通り、私は友人とバス停にいた。


少しすると、全く別方向の高校の男が2人現れた。


そして、恐らくは同級生であったのか、からかわれていた。


少しして、一人の男が真顔になり、もう一人の男に耳打ちした。


そして私のほうを見た。


私は中学生時代は、それまでの溜まりにたまった怒りを吐き出した。


私は知らないが相手が、知っている事はよくあった。


その二人組もそうだったのか、すぐに場から立ち去った。


そして弟に友人が出来たと聞き、どんな奴か見に行った。


私はそいつを知っていた訳では無いが、同じバスだった為、


少しは気づいていた。ろくでなしだと。


弟にアイツはやめとけと私は言った。


全く聞く耳を持たなかったが、そいつがそいつの友達を連れて


うちに泊まると聞いた。


その時点で、盗みをやる気だと思った。


私の部屋はたまり場でいつも誰かがいた。友達の友達が


泊まる事はあっても、トラブルは些細な程度の事しか無かった。


弟をからかってボコボコにされる程度の事だけで、


他には何も無かった。


そして私の予想通りの展開になった。


母の宝石から、父の財布の小銭まで盗んで行った。


私は忠告した。しかし弟はそれを無視した。


だから私は言った。


「情けねぇな。だから言っただろ? このまま泣き寝入りか?」


弟は独りで奴らの溜まり場に行って、喧嘩して金のネックレスを


ひとつだけ握りしめて帰ってきた。


弟が完全に変わった人間になったのは、この件からである。


私の父母ともに何もせず、相手が直接誤りにも来ず、盗んだ物も


返さずに、三人の相手のうちの一人の母親だけが謝りにきた。


母は体裁だけを考え、父は面倒事嫌いである為、


助けなければいけない時に、助けなかった。


何も無かった事にした。


私はこのままでは、弟は完全に精神が壊れると思った。


やってはいけない事はする癖に、やらなければならない事をしない


親に対して、私は親にも忠告した。


そして、俺なら裏で手を打てると言い、これは決着をつけなければ


一生残る傷になると私は言った。しかし体裁を母は選んだ。


私なら全員連れて来れるし、恐怖を植え付ける事も出来た。


トランクに三人を入れて、素っ裸にして山に捨てる程度なら簡単に出来た。


それからだ。弟が鏡を殴り割ったりしだし、人格が分裂したのは。


私は東京から帰ってきた時、トイレに行こうと思い三階の廊下を


歩いていた。階下から微かに声が聞こえた。私は途中まで階段を下りて


台所で話している内容を聞いていた。


最初は携帯でしゃべっているのかと思ったが、違った。


自分で怒り、そして謝るのも自分だった。それも演技では無い、


完全に二人で話すように、一人で会話をしていた。


正直言って怖かった。精神破綻者は色々見てきたが、


逃げ場を作る為、人格成型をしている弟に対して


この弟の件や、二郎の件やまだ話していない事などを


私は体験したから、私の精神は一度破綻したが


再び無意識に、出来るだけ昔の自分のままに生きている。


弟は一生もう変わらない。


それに対して私は何の感情も無い。基本的には嫌いだからだ。

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