第15話 幼馴染 3

 私は30代前半で、二郎を助ける事は不可能だと判断した。


傷口を広げるだけだと。


しかし、もう50歳になる幼馴染は、自分が親族と私の仲介者になろうか?


と言ってきた。


母親はすぐに、助かるわと言ったが、私は現実を言った。


仮に仲介者になったとして何ができる? あっちからすれば全くの無関係者が


話に入ろうとしてきたら、医師会の弁護士が君の所に尋ねてくるだけだ。


そして、何も言えず、何も出来ず、私に対して罪悪感しか生まれず、


それを報告する時、言い難い言葉を口にするだけで終わる。


奴らとの戦いには一切の油断も、躊躇ちゅうちょも許されない。


命懸けの闘いだと分かってない。


大笑いするほど、有り得ないと思っていた事が、真実であった事に対して、


まずはどう思った? 驚いた等のレベルでは無いはずだ。


有り得ない世界の話だと自ら言っておきながら、真実を話しても信じず、


大笑いしたのをもう忘れたのか? 自分が今、如何におかしい事を言っているか


分かってないようだ。年上だからあまり言いたく無いが、その程度の頭では


話にならん。頭も足りず、覚悟も足りず、現実さえも把握できてない。


言うのは簡単だが、何か秘策でもあるのか? ないだろ?


あると言うのなら参考にしたいから聞きたい。


彼は静かに頷いた。そして愚かな母親も静かになった。


そして私は人生で初めて母親と和解する事になるのだが、


それは夢か幻か現実か、分からないほど訳が分からない事に発展した。


ある日、二階に降りると、何もかもが消えていた。


母親と泣きながら、負けてもいいから裁判で闘おうと言った二日後の事だ。


静まり返っていて、爪楊枝さえも消えているほど、何もかもが消えていた。


私は意味が理解できず、母親に電話した。


母親は電話に出たが、今運転中だからかけ直すと言って電話を切った。


そして、数時間がたち、私は電話をかけたが、出なかった。


何が起きているのか、何も分からないまま私は電話を待った。


そして電話してきたのは、年上の彼だった。


おばちゃんに頼まれて、仲介役をしてほしいと言われたと彼は言った。


私は何の仲介役か尋ねた。


私と母親の仲介役だと彼は答えた。


私は意味が分からなかった。多くの予想は出来た。親族に電話をし、


無関係者は下がれと言われた可能性や、元々、信念の弱い人間で、


そう思ったがやはり無理だと逃げたか等。


しかし、それならそれで終わるはずなのに対して、私との仲介役の意味が


理解出来なかった。


私は一度だけだが、母親が薬が切れている時の様子を見た事があった。


完全に中毒者のように震え、目つきも酷く、目を合わせたくない程だった。


この時は何かが裏で動いているが、私には内密なのは確かな事だった。


そして更に後に、この仲介者の意味が解っていく事になる。

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