第7話 パーティー結成

「期間は3日しかないから、早くパーティーを申請しないとだな、貴様達は外で待っていてもいいぞ」


「い、いや僕も着いていくよ!」


「……俺とゼルちゃんは外で待っとくわ。三人で頼むぜ」



 ルースの酒場に再度入りなおす。色々と考える事が多すぎる。女神襲撃に参加というのは、戦うのか? 襲撃と呼ばれるくらいだ、ルドベキア丸ごと襲撃されるなら、僕も戦う事になる。それまでに逃げるしかないのか? それに、姉ちゃんはさっき嫌そうな顔をしていた。なのに、何故断らなかったんだ。



「あ、シュウさん。お相手見つかったんですか!……ってまさか貴方は」


「……出来るだけ内緒で頼む」


「はい。分かりました。ではシュウさんとパーティーと言うことで……。少しお待ちくださいね。ここの席で座っていてください」



 そうして最初に来た時と同じ席に案内され、横並びに座った。



「……パーティー名は考えているか……?」



 突然、沈黙に耐えられなくなったのかリチア様が壁と天井の境目を眺めながら呟く。一瞬、誰に話しかけているのか分からずついつい言葉を返そうと迷ったが、ひとまず姉ちゃんの返答を聞いて答えようと思い、黙り続ける。

 しかし、何故かシュウが一言も話さず気まずい空気が流れる。再度リチア様の方を向くと、悲しげに涙目になりながら同じ箇所を眺めていた。



「えっと、リチア様から提案とか、あります? ほら、リチア様もパーティーの一員なんですから! 僕ら良いなって思ったらそれにするんで!」



 なんで僕が彼女の機嫌取りをしなければならないんだ。まああんな哀しそうな顔を見たら、庇いたくなったけどさ……。



「……別にシンプルなネームでいい。あまり興味は無いんだ。但し、大手と被るのは不味い。その場合は伝える」



 面倒くさいなこの人。しかし、こういうの姉ちゃんならスパッといい感じなのを出してくれるだろう。それを待つぞ。



「……、とか」


「……」



 うん。姉ちゃんは凄く感性が独特だったのを思い出したよ。でも、姉ちゃんらしくて僕もいいと思う、と言おうとしたが、不思議と口には出来なかった。



「それは詠唱と被るから辞めたほうがいいな」


「えっ、この名前の詠唱なんて合ったっけ?」


「シュウが、知らないだけだ」



 ……何となく察したが、口には出さないでおこう。



「貴様は、何かあるか? あくまでも候補としてだが」


「中二病の僕に聞く? とりあえず考えてみますけど」



 やっぱりカッコイイのがいいよな。何があるかな……? そうだ、神様に敵対する名前が良さそうだ。趣味で神話を調べてるしそこから引用してみよう。



「フェンリルってのはどうでしょう! 神話では最高神であるオーディンを呑み込んで殺しているし二人の雰囲気にも合うと思います!」


「良い名前だが……被ってしまうから辞めておこう。なんせそこは所属人数が群を抜いて一番多い。圧倒的知名度に加えて圧倒的な戦力相手に一国の皇女が喧嘩を売ったとなると色々と失礼だからな」



 参ったなあ、姉ちゃんのネーミングセンスはちょっと姫様には刺さってないみたいだし、僕の捻り出した渾身の名前も被ってたし……。もうこれ以上良いの出すのは難しいぞ。



「【】がいい」


「ちょ、ヘラル。急に覗き出るなよ、くすぐったいから!」


「テュポーンズ……! ふむ。悪魔、かなり良い発想だな。もうそれで良いんじゃないか?」


「てゅぽーんず、な」



 相変わらず圧が強いなこの悪魔。テュポーン……僕のオタ知識によるとたしか最強の怪物だったか? ゼウスに1度勝っているし名前負けはしなそうだ。

 しかしながら、服の中でモゴモゴと動かれるとむず痒いな。

 これからこんな生活が続くのか……思っていたよりもしんどい生活になりそうだ。



「お三方、お待たせいたしましたー。無事、申請できましたよー。後は、パーティー名をお伝えくださればそれで登録を完成させますね」


「シュウ、貴様、悪魔。【テュポーンズ】で構わないか?」


「【てゅぽーんず】な」


「分かった。【テュポーンズ】で頼む」


「だから【てゅぽーんず】な!」


「あらあら……君、意外とお素敵な趣味をお持ちのようですね〜」


「あっあっこれは」



 ついつい悪魔だと説明しそうになったが、リチア様に『しっー』と右手で形作りながら、余った左手で口を抑えられる。

 服の中に女の子を入れる癖……そんなの存在するのだろうか。それとも悪魔自体が珍しいからルースさんも気が付かなかったのか? 



「【テュポーンズ】で登録しました!」


「キーッ!」




「ふふっ。……やっぱり、この時期に登録となると女神襲撃に備えてでしょうか?」


「ああ、知っていると思うがこの女はかなりの腕をしているからな、国を護るために協力してもらいたくてな」


「……でも、それじゃクローンの彼等は──」



。彼等は生き残れない」


「なっ」


「それ程、女神は強いんだよ……」



 今にも消え入りそうな声で姉はうつむき呟く。あの二人が何となく気を使っていたのも、姉ちゃんが消極的なのも頷ける。だが、もう一つ懸念しなければならない事がある。



「天汰といったか。貴様も彼等の次に死ぬ可能性が高い。私達が側にいようが、貴様も殺されるだろう」

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