第10話

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


家に帰ると犬は歓迎された。

……俺が生還したときよりも。


「かわいいわね。」


「ああ、可愛いね。

 勇が生まれた時と同じくらい可愛いね。」


某赤ちゃん社に対抗するための回し者か。

これがペット戦略。


可愛さにより愛情は全てペットに注がれる。


「わふわふ。」

「勇に一番懐いているわね。」

「勇にしかお腹を見せないな。」


でも、俺にだけ懐いてくる。

この愛くるしさに叶うものはない。


「でも、あんた今から学校でしょう。

 世話は私がしてあげるから行ってきな。」


「名前はメルセデスベンツな。」


俺の未来の愛車。

フィアットでも可。


「メルね。」


「わん!」


メルセデスベンツはお気に召さなかったらしい。

カッコいいと思うのにな。

カバンを持って、家を後にした。


「家に出るのも早いのね。」


「普段朝ごはん食べていかないから。」


「朝ごはん食べないと力が出ないわよ。」


「OUTゼリーで済ませているルルさんには言われたくないよ。」


「あなたたちのせいで、いつも四六時中監視と任務でまともな食事ができていないのよ。」


なんか俺のせいにされてる。

大変遺憾でありますな。

自己管理を仕事のせいにするなら辞めればいいのに。

それにまだ学生の身で責任とか、ホント人間よりも人間らしいよ。


「若いのに、年よりじみてるね。

 若さを出せるのは若いうちだけ、若さを取り戻すのは辛いぜ。」


「あなたのそれもずいぶん老け込んだ考えよ。」


「あははは。」


実際異世界に行って数年は経っていたから若者と言えるか怪しいとは言えない。

大きな目標ももう叶えてしまっているから、枯れてるのかも。


「異世界に行っていたとは聞いているけど、どれほどの期間居たのか1年とは言っていたけど怪しいわね。」


「怪しいのなら怪しめばいいよ。

 俺が雄馬と同じ世界に行った期間は1年だ。」


「そう、それと今日から期末テストがあるの知ってた?」


「うそーん。」


「あなたはまだ勉強が足りていないし、ある程度は免除されるかもしれないけど勉強はしておいた方が良いよ。」


「勉強はしたけど……。」


身体強化で全部記憶したけど、一か月休んでいた人がテストで良い点数取れば怪しまれるよね。

生徒からカンニングを疑われる可能性が高いな。


「英語27ページ、18行目の日本語訳は?」


「私は最高だ。」


「最高だ?

 すごく元気だという表現の方が正しいのでは?」


「その前の分がスポーツマンが第二者に対して言うのであればその表現はあっているが、観客、もしくは自分に対してその言葉を発する場合、理想の自分の体現として私は最高だという文章が正しい。」


「以前は一番苦手で赤点ギリギリだって先生に言われていたのに、そこまでできるのっておかしくない。

 ちなみに今のは英語の先生も気づいていない訳しかただから辞めた方が良いよ。」

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