第59話 ニアの実力
俺は回復魔法で治療している間にもニアの様子を見ていた。汗を流しながら必死に命を繋ぎ止めようと頑張っているのだ。
その一方で俺が見ている冒険者は深く刺された傷も元に戻ってきていた。
以前の俺では切り傷程度しか治せなかったが、今では魔力がCになり回復魔法の治癒効果も少しずつ高くなってきている。
「うっ……」
ニアの方も少しずつ傷は塞がっているがまだ穴はぽっかりと空いていた。どれだけ強いやつが刺したらこんな傷になるんだろうか。
「俺も手伝うぞ」
俺はニアの前に来て2人で回復魔法をかけると治癒効果は上がり傷が塞がるスピードが早くなった。
「スキル【回復魔法】を吸収しました」
脳内に聞こえる声に俺は驚いた。今まではスキル玉を使った時にスキル【吸収】が発動していたはずが何かのきっかけで回復魔法を吸収していた。
そんな中扉を開けて入ってきたの白い服に身を包んだ男が入ってきた。
「回復魔法が必要な者は誰──」
男はニアを見ると軽蔑した目でこちらを見ていた。
「はぁ、獣人が神聖なる回復魔法を使うとは怪しからん。 俺は帰らせてもらう。 はよ金を寄越せ」
何を言っているのかわからないが、ローガンが睨みを利かすと教会から来た男は帰って行った。
その後もしばらく回復魔法をかけ続けていると傷が塞がったと同時にニアのスキル玉が弾けた。どうやら回数が無くなったのだろう。
「仲間を助けてくれてありがとう」
冒険者達は頭をぶつける勢いで頭を下げていた。
「そういえば何でここまで──」
「ああ、そういえばあいつらを止めてる奴がいるんだ! 金髪の奴らだよ!」
俺は突然出た金髪という単語にどこか胸騒ぎがした。そもそも黄色に近い髪はの冒険者はいるが、金髪はあまり見かけたことがないからだ。
「それはどこだ?」
「森の奥に──」
俺はすぐに匠の外套を装着して森に急いで向かった。
俺の胸騒ぎが間違いでなければ良いが彼が王都まで戻ってきて治療する時間を入れると金髪の冒険者はその間戦っている可能性があった。
「にいちゃどうしたの?」
俺の後ろをロンとニアがすぐに追いついてきた。
「なんか胸騒ぎがするんだよ」
「やっぱりお兄ちゃんもなんだね」
ニアも俺と同じことを思っていたのだろう。
「こっちから血の臭いがする!」
獣人に嗅覚を使ってロンが目的地まで案内してくれるようだ。俺はそれと同時に鑑定を発動させた。
鑑定を使っていれば人や魔物がいる段階でステータスが表示されるのだ。
俺は目を凝らすと表示されたステータスと胸騒ぎが一致した。
《ステータス》
[名前] エヴァン・アルジャン
[種族] 人間/男
[能力値] 力B/A 魔力C/A 速度C/A
[スキル]
[状態] 過剰出血、刺傷
エヴァンが必死にしなる鞭を捌いていた。その後ろには同じく出血で動けなくなってるプリシラが倒れていた。
「ロンあいつらの相手をお願い!」
「わかった!」
ロンはその場でスキル玉【風属性】を使ってエヴァンと敵の間に入った。
「ニアはプリシラを頼む」
ニアはすぐにスキルホルダーにスキル玉をセットしてプリシラの元に戻った。
「おい、大丈夫か!」
「ははは、やっぱり来ると思ったぜ」
エヴァンは俺の顔を見るとそのまま倒れた。まだ息はしているが体力は無さそうだ。
「おい、これ握れ」
俺はエヴァンにスキル玉【回復魔法】を持たせ、それと同時に俺も回復魔法を発動させた。
それでも俺とエヴァンはお互いに魔力Cのため回復速度はそこまで速くなかった。ただでさえ今のエヴァンの状態は過剰出血なのだ。
「ニアそっちはどうだ?」
「こっちはもうそろそろ塞がりそう」
さっきよりニアの回復魔法の回復効果が高くなっていた。
「じゃあ、ニアこっちと変わってくれ!」
俺はそのままプリシラの元に駆け寄るとエヴァン同様に過剰出血の状態は変わらないが刺傷の表記はなくなっていた。
「お兄ちゃん交代するね」
ニアが移動するタイミングで俺は回復魔法の発動を受け継いだ。その際にニアの顔を見ると魔力がニアの最大値であるAに変化していた。
その後もお互いに回復魔法をかけ続けるとどうにかエヴァンとプリシラの命は繋ぎ止めることができた。
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