第45話 仲間外れ

 俺の前にはなぜか酒が置いてあった。しかもその量は1つだけではなく大量に置かれているのだ。


 冒険者達の視線が俺に向いていた。どこかお腹が痛く締めつけれられている気がした。


「今日は新しい仲間が来たわよ! みんな仲良くしてあげてー! 乾杯!」


「乾杯!」 

 男の掛け声と共になぜか飲み会が始まった。そんな雰囲気に俺達はついていけないでいると冒険者ギルドの扉が開いた。


「あら、ロビンも帰ってきてたのね」


「おっさんにちゃん付けはないだろう」

 この状況をどうすればいいのかわからない俺はロビンに助けを求めた。ロンとニアは馴染むのが早いのか他の冒険者達に遊んでもらっていた。


「ははは、こいつがお前達と仲良くしたいってさ」


「えっ!?」

 ロビンはこっちを見てニヤッと笑っていた。そんなにお金を払わずに屋敷に泊まっていたのがダメだったのだろうか。


「あら、そうなの? じゃあ、どんどん飲みましょう」

 その後は記憶がなくなる手前まで永遠と酒を飲まされた。





「あー、頭痛いし気持ち悪い」

 俺は外に出て風に当たりながら自分自身に回復魔法をかけていた。


「スキル【回復魔法】を吸収しました」

 脳内に響く声もさらに頭痛を助長していた。


 あれから出される酒は飲み続けて、冒険者達はその場で倒れるように寝ていた。


「ウォーレン……おいおいそんなに睨むなよ。 王都の冒険者ギルドはどうだ?」

 俺に声をかけてきたのは裏切ったロビンだった。


「悪くはないです」


「ははは、そうか」

 確かに他の冒険者ギルドではポーターという理由だけで蔑ろにされることが多かった。しかし、王都の冒険者ギルドではそんな様子は一切なかった。


「あいつはさ……あんな奴だから誰よりも仲間意識が強いんだよ」


「ギルド長のことですか?」

 甲高い声をした屈強な体の男はまさかの王都で冒険者ギルドのギルド長をやっていた。


「そうだ。 ポーターでも人種や地位が違ったとしても分け隔てなく接するのが王都の冒険者ギルドなんだよ」

 王都の冒険者ギルドの話をするロビンの顔はどこかいつもより楽しそうだった。


「あら、ウォーちゃんとロビンちゃんはここにいたのね」

 そんな中やってきたのはギルド長だった。少し変わった性格をしているが話してみると良い人だった。


 ただ、酔っ払うと服を脱いで筋肉をアピールをするというさらに変わった人だった。


「ああ、ローガン──」

 気づいたら隣にはロビンの姿はなくギルド長が隣にいた。


「私のことはローナって言ったのにね?」

 俺を見るギルド長の顔は少し怖かった。俺は問答無用で頭を縦に振った。本能的になぜか逆らってはいけないと知らされていた。


「おい、デカブツ痛いだろうが!」

 ロビンはギルド長に飛ばされていたため、ズボンの砂を落としながら歩いていた。


「あんたが私の名前を……」

「ローガンだろ?」

 またロビンがギルド長の名前を言った瞬間、隣にいたはずのギルド長は姿を消していた。

 実際は瞬間的にロビンの目の前に距離を詰めたのだ。


「おいおい、久しぶりに帰ってきたのに手荒いまねするなよ」


「ははは、何言ってんのよ! 喧嘩を吹っかけてきたのはそっちでしょ」

 そこから2人は冒険者ギルドの前で争っていた。その速さは目で追うのもやっとだった。


「今日はご迷惑をおかけしてすみません」

 声をかけてきたのは冒険者ギルドに働く女性のルーチェだった。どこかリーチェに似ていると思っていたらリーチェの姉らしい。


「あの2人を止めなくても大丈夫なんですか?」


「はい! あの人達はいつもあんな感じでどちらかが動けなくなるまでああやって遊んでるんです」

 目の前の男達からは"殺してやる"とか"死に損ない"と聞こえるがどうやら遊んでいるらしい。今後はなるべく2人でいる時は関わらないようにしようと俺は思った。


「さぁ、時間も遅いですし子供達には悪影響ですから帰りましょうか」

 ロンとニアも冒険者達に混ざって一緒に寝ていた。俺はロンとニアを抱えてロビンの屋敷に帰ることにした。


「楽しかった……」

「にいちゃ……また行こう」

 ロンとニアは余程遊んでもらったのが楽しかったのか俺の胸中で寝言を言っていた。


「王都に来てよかったかもな」


「王都に来てよかった?」

 俺は後ろから良からぬ圧を感じていた。振り返るとそこにはモーリンが立っていた。


「こんな時間まで子供を振り回して何やってるんじゃー!」

 俺はその後モーリンからこっ酷く怒られることとなった。

 

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