第6話 魔石
魔石は魔物であれば必ず体のどこかに入っている。日常生活や魔法の威力をあげる媒介になったりなど使い方は様々あるため、魔物の討伐の必要性は単に襲われないようにするため以外にもあった。
そんな魔石をゴブリンから取り出そうとすると出てきたのは俺が知っている魔石ではなかった。
「なんか色が濃いな」
何度も魔物の解体を行っているためゴブリンの魔石がどこにあるのかは分かっていた。しかし、今まで見てきたゴブリンの魔石の中で明らかに色が濃くてどこか黄色がかっていた。
「まるで中級以上の土属性の魔石だな」
魔石には中に入っている魔力の濃度と属性で価値が決まる。属性が含まれた魔石は魔法使いにとっては必需品とも言われている。
俺はとりあえず魔石を袋に入れると街へ戻ることにした。いくら回復魔法をかけたからと言って体に傷はないが疲労は取れないのだ。
「ウォーくんおかえり」
早めに帰ってきたため冒険者ギルドにはあまり人がいなかった。俺は抱えていた袋をリーチェに渡した。
中は薬草と毒消し草をそれぞれ短剣と手で刈り取ったものに分けていた。一般的に種類毎で分けた方がいいが今回は検証も含めている。
「えっ……うそ!? こっちは……あれれ?」
リーチェの反応は俺が思っていた通りだった。初めに短剣の方を鑑定して、その後に手で切り取った方の袋を開けていた。
「ウォーくん残念でしたね。 量が多かったからごちゃ混ぜでしたけど、半分は良い薬草と毒消し草でした」
どうやら袋の中で分けたように鑑定結果も出たようだ。大体同じ数ぐらいで袋に入れたが値段が5倍以上も違った。
「あとこの魔石も売れますか?」
俺は偶然ゴブリンで手に入れた魔石をリーチェに渡した。今はとにかくお金が必要なため売却することにした。
「こっ、これは中級の魔石!? ウォーくん怪我していない?」
リーチェは俺の体を心配していた。確かに急に中級の魔石を出せば驚いてしまう。
「偶然拾って運がよかったのかな?」
俺はとりあえず拾ったことにしておいた。ここで自分が倒したことにすれば実力がないのに冒険者として目立ってしまう。
「じゃあこれも鑑定しておくね」
しばらく待っているとリーチェは重そうにお金を持ってきた。一目見ただけ大金貨があることに気づいた。
「じゃあ、合計の内訳だけど薬草と毒消し草が350Gで魔石が1500Gです」
「そんなにですか!?」
俺はあまりの額に驚いた。魔石の値段が高いことは知っていたが、冒険者が命がけではあるが貴族達のようにお金持ちになる理由がわかった。
「特に魔石の純度が良くて、これぐらいならゴーレムを倒した時に稀に手に入るぐらいだよ」
ゴーレムとは全身が硬い岩でできた中級の魔物だ。分類として下位の魔物になるが、ゴーレムを倒すことが出来たら立派な冒険者として胸を張ることができるだろう。
「本当に運が良かったです」
「これも日頃の行いが良いウォーくんだからだよ」
リーチェはそう言っていたが、俺の運が良いわけではなく単に短剣の効果が想像できないほど発揮されていただけだ。
俺は大金を受けとると急いで証券口座に入れた。誰が見ているかわからないところで見つかったら俺の金はすぐ取られてしまうだろう。
アドルや年下の冒険者といい冒険者ギルドには信じられる人が基本的にいないのだ。
俺はそのまま冒険者ギルドの部屋に戻りベットに横になった。
「今日は死ぬかと思ったよ」
俺は天井を眺めながら今日のことを振り返っていた。
今までは守ってくれる存在がいたが、やはり自分で命を守れるだけの力が必要だと改めて再認識した日だった。
「俺のスキルが戦闘系なら良かったのにな」
俺は証券口座を開くと今まで何も書いてなかった欄に"1"と書いてあった。
「配当が1になってるぞ?」
俺が見ていたのはルドルフの鍛冶屋と書かれた板だった。正確に言えばまだこれだけしか証券口座の中に出現していないのだ。
「そういえば、お前に金を取られた時はびっくりしたよ」
俺のスキルはお金を入れておくと増えたり、減ったりする変わったスキルだ。
その日は偶然"ルドルフの鍛冶屋"という新しい表示が出てきていたため普段と同じようにお金を入れたのがきっかけだった。気づいた時には1000Gが取り出せなくなっていたのだ。
「まぁこれが俺の運命だったのかもしれないな」
俺はそう思っていると次第に体が眠気に襲われていた。
気づけば俺は夢の中に落ちていた。証券口座を閉じることを忘れて、寝相の悪い俺は朝に再び貧乏になっているとはこの時は思いもしなかった。
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