6 システム

「どういう事って言われてもな」


「言葉のままって感じなんすけどねえ」


 私の問いに対し、ユイとライアンさんは顔を合わせて首を傾げる。

 それこそ本当に、どうしてそんな事を聞かれているのかが分かっていない感じだ。


「えーっと……」


 流石にそこまで素の反応をされると、変な事を聞いちゃったような気がして不安になってしまう。

 だから半ば助け船を探すようにクロードに視線を向けると、同じくこちらに視線を向けていたクロードが静かに頷いてバトンタッチしてくれる。


「お嬢が……いや、俺達が聞きたいのは、まさにその言葉のままの事です。その言い草だとこの国にユイさん以外にも聖女が居る事になる」


 その言葉に私も頷く。

 基本的に、いや多分基本から外れるような事があっても聖女は一人で結界を展開し維持する存在の筈で。

 だからユイが何気なく言った言葉がどれだけおかしい事なのかを、私は身をもって知っている。


 一人で背負わなければならない事だから、先代の有能な聖女達も皆短命で命を終えて、私一人に負担と罵声と非難の目が圧し掛かっていた筈で。


 だからその言葉をそのまま聞き流したら、色々な前提条件が壊れてしまう。

 聞き返して、言い間違いである事を確認しないと、本当に色々な事が狂ってくる。


 だけどユイ達は言った。


「いやそりゃ居るっすよ。当たり前じゃないっすか」


 本当に、当然の事を言うように。


「領土内で人が住んでる場所だけでどれだけの広さがあると思ってるんすか。そんなの複数人同じ事ができる人間がいてようやくカバーできるって感じっすよ」


「ユイの言う通りだ。それにさっきお前はこの国に、なんて事を言ったが、どこの国にでもそうだろ。勿論国防の要の情報なんてそう流れはしないが、一人で一国の聖女を勤めるなんてのはどんな小国でも無理な話だ」


 そして一拍空けてからライアンさんは言う。


「もしそんなおとぎ話みたいな事が現実の事なら。現実でやっているのなら……イカレてるよ。良くも悪くもな」

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