3 クロウフィール王国の聖女?
そして私達にお礼を言った赤髪の少女は、私が応急処置をした場所に視線を向けて言う。
「うんうん、完璧。凄い綺麗に補強してある。中々の腕前っすよ!」
「でも使い手が変われば結界の性質も少し変わってくるから、今は良くても安定しない。早く結界を張っている本人が修復した方が良いと思うよ」
と、私は促すように赤髪の少女に言う。
多分、この人がこの国の聖女だろうから。
だから駆け付けたのだろうから。
だとすれば早い所修復作業に入って貰った方が良いと思う。
だけど赤髪の少女は言う。
「なんか勘違いしてるみたいっすけど、ウチじゃこの結界は修復できないっす。ウチも此処には応急処置をしにきただけっすからね」
「え、いや……その、聞いていいのか分からないですけど、此処に急いで来たって事はこの国の聖女さんじゃないんですか?」
そう私が聞くと、一拍空けてから赤髪の少女はスーツの青年に問いかける。
「ライアンさん。ウチこれどこまで話していいんすかね?」
どうやらそう簡単に聞いていい話じゃなかったみたいだ。
だけどそんな確認を態々するって事は、やっぱりこの子がこの国の聖女なんじゃないかなって思う。
「ユイ……ちょっと来い」
「あ、そんな訳なんでちょっと待っててほしいっす」
そう言った赤髪の少女は、ライアンと呼ばれたスーツの青年と共に少し私達から距離を離して、私達に聞こえないように何やら打ち合わせの様な事を始める。
「お嬢の問いに対する反応がアレって事は、完全にもう答えですよね」
「うん、私もそう思うよ」
「完全に丸分かり何ですが……えーっと、あの二人、馬鹿なんですかね」
「……ちょっと失礼だよクロード」
いやまあ確かに、もっと他にやり方あるんじゃないかなって思うけど。
そして一通り打ち合わせが終わったみたいで、再び私達の元へと戻ってきて、そして言う。
「すみません待たせちゃって。えーっと、とりあえずお二人さん。今時間大丈夫っすか?」
「だ、大丈夫です。だよね? クロード」
「ええ。とはいえ俺達は今日この国に入国してきたんで、早い所宿の方を探さなくてはいけませんし、それほど時間は取れませんが」
「ならお礼も兼ねて、宿の手配もウチらがやるっす。だからちょっとゆっくり話しましょう。此処じゃ言えない話もあるっすから場所を変えて……さっきの質問はウチらにとってそういう質問っすからね」
と、半ば答えのような事を口にしてから赤髪の少女は言う。
「それなりに有益な話ができると思うんで。まあ突然現れたウチらについてこいなんて言われても怪しさ満点なのは分かるんすけど……どうっすか? 一緒に来てくれるっすか?」
「うん、私は良いと思うけど……クロードは?」
「確かに初対面の相手にいきなり付いていくリスクはありますが……まあ、この人達がそういう人間の可能性が薄いってのは大体分かりますから」
「じゃあ決まりっすね」
「もし仮に何かあってもその時は俺がどうにかしますから」
少し警戒する意思を見せるようにクロードは言うと、ピクリと赤髪の少女の方が震える。
「あ、あんまり怖い顔向けないで欲しいっす。普通にビビるんで……」
「おいお前、コイツに何かしたらぶっ殺すぞ」
「しませんよ……そちらから何もしなければ」
「しねえよ……まあ警戒するのも分かるが。お前もその子を危ない目に会わせる訳にはいかねえんだろ」
「ええ。理解が早くて助かります」
そして少しだけ警戒を緩めるクロードに赤髪の少女が言う。
「じゃ、じゃあ無事争わず収まった所で……場所、移動しようっす。違いの自己紹介もそこで……此処じゃ言えないような自己紹介をしないと駄目っすからね」
「あの、さっきから半ば答え口にしてるのって気付いてます」
思わず指摘してしまった。
「え、あーうん。気のせい気のせいっすよ。なんの事やら。と、とにかく場所変えるっすよ場所を!」
そう言って赤髪の少女は歩き出す。
動揺の仕方も完全に答えだと思ったけど、少し可哀想だと思ったからそれは言わない事にして、私達はその後ろを追う事にした。
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