(一)-5
だから、私は短く「私の部屋」とだけ言った。
彼は「今何時?」と言いながら腕時計を見ていた。次の瞬間「ヤバイ!」と立ち上がった。
「ゴメン、一時限目、語学の授業だ! 出席を取る授業だから、もう行かないと遅刻だ」
そう言って彼は周囲を見回していた。
私は床に転がっている見覚えのない肩掛け鞄を拾い上げ、彼の方に差し出した。
彼は「ああ、ありがとう」と言って慌てて玄関から出て行った。
私は玄関のドアが音を立てて閉まるのを見つめていた。一体なぜこんなことになったのか。自分でも迂闊過ぎると思う。同じサークルの友達とかに聞かれたらなんて答えたらいいの?と思いつつも、自分のしでかしたことに自分でも混乱していた。
(続く)
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